Paris パリ

b0041912_1622292.jpg パリに生きる普通の人々の群像劇「Paris 」がいよいよ日本公開です。お馴染みローマン・デュリスを初め豪華キャストを使って、さまざまな立場のパリ庶民の日常をムリなくつないだ手腕は、さすが「スパニッシュ・アパートメント」やその続編「ロシアン・ドールズ」のクラピッシュ監督。フランス社会の多様性をパリの風景の中に浮かび上がらせ、リアリズムに満ちた作品に仕上がっています。
 ダンサーのピエール(ローマン・デュリス)は重い心臓病のため、心臓移植をしても助かる可能性は低いらしいと姉エリーズ(ジュリエット・ビノシュ)に打ち明けます。驚いたエリーズは、3人の子供を連れて弟のアパルトマンへ引っ越し、ピエールの世話ができるように準備。入院まで安静を強いられるピエールは、アパルトマンのベランダから街を見下ろしては、人々の生活を観察するのでした。
 エリーズの通う朝市では、野菜を販売するジャン(アルベール・デュポンテル)が彼女が来るのを楽しみにしています。ジャンと腐れ縁の元妻カロリーヌは、彼の仲間といい仲に。ソーシャルワーカーとして働くエリーズは、恵まれない立場の人に住宅手当や仕事のアドヴァイスをしながら子育てにも奮闘中で、最近は恋人を見つけるチャンスもありません。
 一方、兄の働くパリに憧れ、故郷カメルーンからフランスに不法入国を試みるブノワは、カメルーンでヴァカンスを過ごした若いモデルのマージョレーヌとパリでの再会を夢見ています。
 お客には極めて愛想の良いパン屋のマダム(カリン・ヴィアール)は、ピエールにも親切で、満面に笑みを浮かべてパリの魅力を讃えますが、普段は気分屋で文句の多い典型的なフランス人気質です。
 ソルボンヌの歴史学者ローラン(ファブリス・ルキー二)は、際立って美しい学生レティシア(メラニー・ローラン)に心を奪われ、そのときめきを建築家の弟(フランソワ・クリュゼ)に報告して励まされます。この人の良い兄弟の関係や、ローランの恋の行方が縦線となって、この作品をより魅力的にしています。
 ローランがテレビの歴史講座の講師として、所々でパリの歴史や名所を紹介してくれるのも気の利いた演出と思いました。

 一生懸命日常をこなすのに精一杯の人や、祖国の生活から抜け出したい移民、お気楽極楽に青春を謳歌する若い女性達、功なり成し遂げてもどこか虚しい中年学者など、それぞれが織りなすパリの普通の暮らしが、死を意識したピエールの目にはどれも愛おしく新鮮に映り、そのピエールの視線を観客も共有するような気持ちにさせられるのが、この映画のすごい所でしょう。
 重病を抱えアパルトマンにこもるピエールとムーランルージュのダンサーとして華やかに踊る元気な頃のピエールとの対比や別のエピソードでも、この作品は平和に見える日常生活が、意外に死と隣り合わせであることを意識させてくれます。私もつい最近、昔一緒に働いていた元同僚が病気で亡くなるという悲しい報せを聞いて、強いショックを受けたばかりなので、何気ない普通の暮らしが送れることの大切さが身に沁みます。
 パリでも東京でも、都会で営む生活自体に大した違いはないけれど、パリの多様性と人種や格差の目立つ人々の共存は、摩擦を生む原因にもなっています。そういった背景ゆえに、各自が抱える悩みや問題もより多岐に渡っているのでしょう。折しも世界的にめっきり景気が冷え込んだこの年末。ピエールが「不満を連ねたり、もう歳だからなどと諦めずに自分の人生を楽しまなければ」と背中を押してくれるこの作品が、観る人の心を和ませてくれるのを期待したいです。 
[PR]
by cheznono | 2008-12-20 16:03 | 映画