マルセイユの決着

b0041912_2242271.jpg  あけまして、おめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。
 さて、ニースで見逃してしまい、日本公開を心待ちしていた「マルセイユの決着」を大晦日に観て来ました。(お陰で、今年も大掃除は正月からというていたらく。)シアターNに入ってまず驚いたのは、観客の殆どが男性だったこと。日本でもフランスでも、これだけ女性の少ないシネマは初めてです。確かに、テーマはつかず離れずの距離を保ってきたギャング同士の義理人情ゆえに、そうそうたる出演メンバーも全て男性。唯一、モニカ・ベルッチだけが紅一点です。とはいえ、女性も充分に楽しめるエンターテイメントでした。この映画は、40年前に公開されたジャン=ピエール・メルヴィル監督の「ギャング」のリメイク作品だそうですが、往年のフィルム・ノワールと違って、とても分かり易い構成になっています。

 舞台は今から50年近く前のフランス。暗黒街の黒幕だったギュスターブが、若い受刑仲間に助けられて脱獄するところから始まります。着の身着のままパリへ逃れたギュ(ギュスターブ)は、亡き相棒の妻だったマヌーシュを訪ねますが、それは彼女の愛人が、理不尽なジョー・リッチに襲撃された夜でした。
 ジョー・リッチはギュの昔なじみヴァンチュールの弟。しかし、兄と違って仁義を欠いたジョーのやり口は、ギュを憤激させます。一方で、警察の切れ者ブロは、脱獄したギュを泳がせて、ギャングの一掃に結びつける機会を狙っていました。
 マヌーシュといい仲になったギュは、彼女の従兄を頼ってマルセイユに向かい、二人してイタリアへの亡命を企てます。けれども、ギュにはお金がない。折りも折り、ヴァンチュールから危険な金塊強盗の仲間入りを誘われたギュは、二つ返事で承知します。この強盗計画の裏には、ギュと旧知の仲の知的黒幕、オルロフの姿がありました。

 ヴァンチュールをリーダーにした4人の金塊輸送車襲撃計画はうまくことが運び、ギュは無事に分け前を手にします。が、彼をマルセイユまで追って来たブロ警視の術中にはまり、うっかりヴァンチュールの名前を出してしまいます。すぐさま捕えられるギュとヴァンチュール。ギュにとって、仲間を売ったと思われることは死よりも辛い屈辱です。囚われの身であっても、ギュは何とか汚名挽回を図るべく、自らのおとしまえをつける覚悟をするのでした。
 そして、ギュが兄を裏切ったと思い込んだジョー・リッチーたちは、ギュを消すようオルロフに迫ります。

 義理人情と仁義の世界を男の美学としているギュが、ヴァンチュールやオルロフという古き良き時代の大物たちとはほぼ同じ価値観を分かち合えるのに対し、私欲を肥やすためには手段を選ばない者や血気盛んな新参者とは対立するという図式は、日本のヤクザ映画にも共通する展開で、これは暗黒街ものの永遠のテーマなのでしょう。
 ギュがギャングとして活躍していた頃は、義理と仁義に厚かった筈の暗黒街ですが、彼が刑務所に入っている間に、しゃばの様子もだいぶ変わってしまい、ギュを失望させます。日本やイタリアのマフィアと違って、フランスは個人主義が染み付いているせいか、やくざものがあまり組織化しないで、一匹狼が多いようですね。その辺がフランスのフィルムノワールの面白さかもと思わせるシナリオです。
 主人公ギュはダニエル・オートイユといの一番に決まっていたらしいですが、その期待に充分応えたオートイユのポーカーフェイスなギャングぶりが決まっていて、2時間半が長く感じられませんでした。とはいえ、同じ一匹狼でも、護衛の警官を無情に狙撃するオートイユよりもやっぱり「あるいは裏切りという名の犬」の一徹な刑事役の方が好きですが。
 切れ者のブロ警視はこれもベテラン、ミシェル・ブランがエスプリの利いた端切れの良いセリフをポンポン飛ばして、楽しませてくれます。このストーリーをブロの立場から警察ものとして描いても、かなり面白いものができそうでは?と思いました。
 髪をブロンドに染め、長いつけまつげで時代を再現しているモニカ・ベルッチのマヌーシュも、極道の女っぷりを余すところなく発揮。堅気でない男から男へ、状況の変化に則して蝶のように相手を変えつつも、その時々の相手には誠意を尽くすいい女は、彼女のお手ものものかも。
 ギュと距離を置きながらも互いに一目置いているオルロフ(ジャック・デュトロン)の冷静なインテリ風ギャングも魅力的でした。自分からは能動的に動かないように見えて、ほしいものはきっちり自分のものにしている、あるいはしつつある所が彼のすごさですね。
  映像はカラフルだけど、時代を醸し出すレトロな雰囲気と携帯電話など想像もつかない頃の金塊強奪や警察の捜査ぶりなども興味深いし、手堅い作品に仕上がっているので、結構人を選ばずに楽しめるサスペンスではないでしょうか?
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by cheznono | 2009-01-05 23:00 | 映画