去り行くイギリス人

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 ここ10年余り、好調な経済とポンド高を背景にフランスを初め、地中海沿岸の国に引っ越したり、別荘を買ったりしていたイギリス人たちが、金融危機のあおりを受けて、今やすっかりバブルがはじけた本国に続々引き上げているそうです。
 フランスで物件を探す英国人の姿が特に目立って来たのは、21世紀に入った頃から。もともと何度もフランス領になって来た大西洋側のペリゴール地方にはイギリス人社会があり、ボルドーからほど近い地の利や、独特の景観が人気で、この地方に家を買う英国人は多かったのですが、ここ10数年はトウールーズからモンペリエ、ピーター・メイルの影響を強く受けたプロヴァンス地方に別荘を求める人が倍増していました。ロンドンを初め本国の地価が日本のバブル期を越えて上昇したため、フランスやスペイン、イタリアなど温暖な国に住まいを求める人が増えた結果です。
 もしろん、19世紀からイギリス人の避寒地として注目されていたニースなど、気候の穏やかなコート・ダジュールで退職後の生活を送る人も多く、彼らの落とすお金で地元は潤ったのですが、お陰で地価はうなぎ上りに上昇。「2000万円で買った古家を更に2000万円かけてリフォームする英国人」が物件を買いまくったゆえ、南仏も住宅バブルに湧いて、気がつけばフランス庶民の手が出ない値段に跳ね上がったアパルトマンも多くなっていました。
 私も一昨年まではニースの町中で、不動産やさんに案内されてアパルトマンを探す熟年イギリス人カップルを何度も見かけたものです。そこへ金融危機が発生。250円近かったポンドは今やその半分に迫る急降下で、半年ちょっと前までの地下鉄初乗り1000円してたロンドンもぐっと暮らし易くなっているでしょう。
 しかし、年金で悠々自適のフランス生活を送っていたイギリス人には晴天に霹靂の経済変化に違いありません。1年前まで週に2回はレストランで外食し、お買い物に旅行にとフランス生活を謳歌していた彼らにとって、ポンドの急下落は超インフレと同じ。せっかく買った住宅のローンも重くのしかかっている場合はなおさらで、フランス暮らしに見切りをつけ、イギリスに戻る大脱出がちょっとした社会現象になっています。
 仏語を全然話そうとしない英国人たちが、せっせとお金を使ってくれるのはいいけれど、彼らが物件を買い占めたために地価が急上昇するのはありがた迷惑とぼやいていた地元の人は、去り行く彼らの後ろ姿を見ながら、今どんな気持ちでいるのしょう?
 ここ数年、耐え難きを耐えてポンド高やユーロ高を凌いで来た日本人滞在者は、去り行くイギリス人の気持ちがわかるような気がするのですが。
 写真はバレンタインデイの迫るロンドン。
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by cheznono | 2009-01-17 02:04 | 不思議の国フランス