レボリューショナリー・ロード

b0041912_2343256.jpg 大嵐に雪、大雨と次から次に悪天候に見舞われているフランスに戻って来ました。だいぶ長く東京にいたような気がするけれど、ニースは5ヶ月ぶり。経済危機中の冬真っただ中とはいえ、さすがコート・ダジュール、意外に活気がある感じです。
 とりあえず今日は出発前に観た「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」のレビュー、フランスでも現在公開中で評価は高いようです。
 1955年、30歳のフランク(レオナルド・デュカプリオ)とエイプリル(ケイト・ウィンスレット)夫妻は、郊外に買った瀟洒な家に二人の子供と暮らしています。はたから見たら幸せなニューファミリーの二人ですが、女優志願だったエイプリルは、主婦としての日常に飽き足りません。
 7年前に出会った時、しがないサラリーマンの父のようにはならないと怖いもの知らずで輝いて見えたフランクは、今や父親のいた会社でルーティーンをこなす毎日。くだらない仕事さと会社のぐちをこぼす夫に失望したエイプリルは突然、一家でパリに引っ越すことを思いつきます。
  第二次大戦中、軍人としてパリに寄ったフランクの話から憧れていたパリ。「今の生活には生きている実感が得られないけど、パリに行けば全てが一新されて幸福になれるわ」と主張するエイプリルに押されて、何となくその気になるフランク。会社の同僚に非現実的な計画だとちゃかされても平気です。
 渡仏の準備を着々と進めるエイプリルが、しかし、3人目の子供を宿しているとわかった時から、彼らの計画に狂いが生じて来ます。パリでの具体的な計画もないまま、パリ行きを焦ってますますジタバタするエイプリルは、何かに取り憑かれたようになって。。
 初めはエイプリルの熱に押されて、パリでの新生活に同意するフランクですが、思い直した上に「パリにあって、ここにないものは何もないよ」と妻に諭すシーンが印象的です。確かに文化面を除けば、50年代とはいえ既に充分豊かだったコネチカット州の革命通りに住む彼らの生活を超えるものをよそで見つけられるかどうかは極めて疑問です。仏語を学ぶ様子もなく、仕事のオファーがあるわけでもないアメリカ人夫婦が、いきなりパリに移住しても、エイプリルがパリ症候群に陥るのは目に見えている筈。
 しかし、思い込んだら命がけのエイプリルは突っ走ります。今や愛情も彼女にブレーキをかけられません。ここまで彼女を突き動かすくらい、革命通りでの主婦としての彼女の暮らしは虚しいものなのでしょうか?
 二人にこの瀟洒な家を斡旋した不動産屋のヘレンが、数学博士でありながら精神病院で治療を受ける息子ジョンを伴って、この夫婦を訪ねると、ジョンは一見感じの良い美男美女夫婦の抱えている問題を言い当てます。
 ここから逃げ出しても、幸せの青い鳥が外国で見つかるわけではないと言われても、やっぱり外に出たい、このままでは終わりたくないともがくエイプリルの気持ちは、現代人にはある意味理解しやすい乾きかも知れません。しかし、私が一番すごいと思ったのは、二人が団塊の世代の両親に当たる年代ということでした。
 戦後10年、日本では多分皆んなが生きるのに精一杯で、エイプリル夫妻が当たり前のように使っている電化製品や家具、今と変わらないキッチンキャビネットなど、一つ一つを手に入れるのに必死で汗を流していた時代だったと思うのに、アメリカの若い夫婦は既に物質的には満ち足りた日常から抜け出したいということばかりを考えていたとは。
 折しも、金融経済中心の米国式物質主義が崩れ出した今、何とも皮肉な作品のような気もするのと同時に、アメリカがいかに先を走っていたかを思い知らされる映画でもあるのでした。
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by cheznono | 2009-02-04 23:46 | 映画