ミルク Milk

b0041912_2193539.jpg  この作品には映画の魅力が全て詰まっている、と殆どのフランスメディアが絶賛した「ミルク」。やっぱり観ておいた方が良いかなくらいの軽い気持ちでしたが、ショーン・ペンがオスカーを獲得したのもむべなるかなで、ハーヴェイ・ミルクの人柄にすっかり魅了されてしまいました。

 1972年、ニューヨークでサラリーマンをしていたミルク(ショーン・ペン)は、20歳下のスコット(ジェームス・フランコ)をナンパして、同棲を始めます。サンフランシスコのホモセクシャル街に引っ越してカメラ店を営み、仲間達からも慕われた二人ですが、ストレートの隣人たちから露骨な差別を受けたのをきっかけに独自の商工会を結成します。
 同性愛者だけでなく、黒人や工員、老人達など当時のアメリカにおける社会的弱者を支援するミルクは、共感した多くの仲間たちから支持されて、政治的活動へと入って行きます。勢いに乗ってサンフランシスコ市の公職に立候補したミルクは、落選しても諦めず、何度も選挙に挑戦します。しかし、ミルクの最大の理解者だった筈の愛するスコットは、政治活動と選挙にのめり込むミルクに別れを告げるのでした。
 4度目の挑戦でついに市政執行委員に当選したミルク。史上初のカミングアウトした執行委員であるミルクは、地域のカリスマ的存在になっていましたが、同僚で保守派のD・ホワイトは、そんな彼の人気と活躍を屈折した目で見ていました。

 表情や手の動き、声音など細部にわたってミルクになりきったショーン・ペンが素晴らしく、観客にミルクの人間性を強く印象づけてくれます。ともかく、ミルクの人柄がとても人間臭く、内面の葛藤は外に出さずに、いつもにこやかで暖かいのが素敵です。スコットに「40歳になるのに、人に誇れることは何もして来なかった」と耳に痛いようなセリフを呟くミルクですが、それから48歳で射殺されるまでの活躍には目を見張るものがあります。
 ニューヨーク時代は家族にもゲイであることを隠していた彼が、差別や偏見を是正するためには誰かが代表となって立ち上がらなくてはいけない、という強い責任感で突き進む活動家に変わって行く姿が丁寧に描かれています。
 ミルクの交際相手が何人も自殺しているのは、当時のアメリカ社会がいかに保守的だったかという証で、「ブロークバック・マウンテン」の二人が一目を避けて逢瀬を交わした頃から10年後、同性愛に対する人々の価値観が多様性を受け入れる方向へと変化して行くには、ミルクのような存在が不可欠だったことがわかります。ホモセクシャルの人々に限らず、ミルクは時代や社会が必要としていた人物に違いありません。
 主題にあまり興味が持てないという人にもお勧めの秀作です。
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by cheznono | 2009-04-14 21:26 | 映画