フランスのホームレス事情
2009年 05月 29日この10万近いホームレスの20%近くは未成年だし、「ベルサイユの子」のニーナのようにシングルマザーや別離の末に路上生活者となる若い女性も少なくありません。しかも、この春フランスの失業者は220万人を超えたため、家を追われる人の更なる増加が予想されますが、昨秋の金融危機後のアンケートで、フランス人の半数が「将来、自分もホームレスになる可能性が否めない」と答えたのにはさすがに驚きました。フランス人の二人に一人が、ホームレス問題は人ごとではないと意識しているわけですね。
ただ、ホームレス=路上生活者というわけではなく、住宅補助を受けて安ホテルに長期滞在している人や簡易施設滞在者も含まれるので、実際に路上で生活する人は全体の1割程度にとどまります。
その背景には、失業に加えて、パリ周辺や人気都市の慢性的な住宅不足と賃貸契約の条件の厳しさがあります。政府は断続的に低家賃住宅の建設に着手していますが、それでも全然足りなくて、住宅難は改善の兆しが見えません。
何せ定収入があってもアパルトマンを見つけるのに何ヶ月もかかる人が多い程、住宅不足が深刻なパリで、いったん路上に出ることを余儀なくされた人たちが、新たにアパルトマンを借りるのは至難の業。パリを初め大都市にテントを設置して路上生活体験運動を展開した市民団体《ドンキホーテの子供たち》や空き家になっているアパルトマンの部屋などを占拠して住居のない人々を住まわせるという援助団体が、政府や市民にホームレス問題の深刻さを訴えていますが、経済危機が追い打ちをかけていることもあって、本格的に改善する日はまだ遠そうです。
因みにニースのホームレス人口は約600人。パリやリヨンのホームレスは、一匹狼的に単独行動する人が殆どだそうですが、南仏はシェパードのような大きな犬を連れた人やグループで行動する人たちが目立ちます。
欧州内からはもちろんのこと、アフリカやアジアなどから仕事を求めてフランスに渡る人が多い結果、路上生活者の約10%は外国人。ある時、日系の新聞に載った尋ね人広告に目が止まったことがあります。若い時に渡仏したまま、音信不通になってしまった中年の日本人男性を探す日本の家族が出した広告には、「最後の足取りは2年前で、リヨンのホームレスシェルターにしばらく滞在、その後、不明」とあって、とても切なくなったものでした。未だボヘミアンへの憧れが消えない私には身につまされた3行広告。この男性が今は無事に帰国して、ご家族と再会していることを祈るばかりです。