ウォーロード/男たちの誓い
2009年 06月 05日19世紀後半、アヘン戦争の末に勃発した太平天国の乱は14年も続き、その間2000万人を越す犠牲者を出した大内戦だったそうです。その戦いの中、部隊の中で唯一生き残ったパン(ジェット・リー)は、山間をさまよううちに盗賊の頭アレフ(アンディ・ラウ)とその弟分ウーヤン(金城武)に出会います。
初めは清朝の将軍だったパンを仲間に入れることを拒否するアレフですが、侵略者の襲撃をきっかけに、義兄弟の契りを交わすなら、パンを仲間に迎えようと提案します。
「互いの命は己の命と同じと見なす」という投名状に誓いを立てた3人は晴れて義兄弟となり、パンの主導で盗賊から足を洗い、生き延びるために清朝廷側に従軍することを老中らに申し出ます。
その結果、義兄弟の率いるにわか軍隊は死に物狂いで次々に敵を倒し、彼らを見くびっていた清朝の老中達を認めさせた上に西太后の信頼も得ながら、進軍して行くのですが、難攻不落の蘇州城での戦いを巡って、パンとアレフの間に亀裂が生じます。
太平天国の乱そのものの鎮圧という大きな目標を持って任務を遂行してゆくパンに対して、義と仲間を重んじるアレフ。二人を慕うウーヤンはその純粋さゆえに一途に投名状の誓いに忠実で、状況に柔軟に対応することが出来ません。
しかも、尊敬しているパンが実はアレフの妻リーエン(シュー・ジンレイ)と情を通じていたことを知って、愕然とするウーヤン。蘇州に続いて南京も攻落した三義兄弟でしたが、老中たちとパンという朝廷側おのおのの思惑が義兄弟の不協和音を高め、ウーヤンに不吉な予感をもたらすのでした。
CGを駆使した「レッドクリフ」のハリウッド的なアクションと違って、「ウォーロード」の戦闘シーンはぐっと生々しく、それだけに戦争のもたらす悲惨さが強く伝わって来る作品です。加えて同国人同士が敵味方に分かれて殺し合う内戦のため、より救いようのない虚しさが漂います。
山あいの盗賊を戦士軍団に仕立てて指揮を取り、野望を膨らませて権力に近寄ってゆくパンを横目に、仲間を第一に思うヒューマニストのアレフの心情は最後までぶれず、二人に絶対的な信頼を寄せるウーヤンの一本気さも悲しいくらいです。ただ、彼ら三義兄弟がきちんと描かれているのに、紅一点のリーエンの描き方がちょっと中途半端なのが残念に思えました。
しかし、反戦のメッセージははっきりと伝わって来ますし、活躍目覚ましいパンの軍隊も結局は老獪な老中たちの手のひらの上で踊らされていたに過ぎなく、生まれた時代と祖国の動乱に翻弄された男たちの悲劇がやるせなくて、見終わった後もしばらくは気持ちが沈んだままでした。