フランスと識字率

b0041912_1555949.jpg 「愛を読むひと」は欧州の識字率について考えさせられる映画でした。そして、昔むかし読んだ英国人作家ルース・レンデルの「ローフィールド館の悲劇」を思い出したりしました。
 この春、生地の買い出しに行ったニース郊外で、手の届かない高い位置にある生地のロールを見上げた私が、顔見知りのムッシュウに「あの生地はおいくら?素材はなんと書いてあるの?」と聞いた時、それまでニコニコしてた端正な顔のムッシュウが一瞬ぎょっとした様子でこちらを見たので、ぎくっとした私、「ひどい近視だもので、あんなに上の方のチケットは見えないのよ」と慌てて言い訳しましたが、ムッシュウは半信半疑だったような。。
 以前、トウールーズの生地屋さんで、ごく普通のフランス人マダムが手にした生地の素材を店員さんに尋ねていて、店員さんが「その生地のチケットにちゃんと書いてありますよ」と答えると、顔を赤くしたマダムが小声で「読めないのよ」と再度尋ねたのがとても印象に残っていますが、実は意外に高いフランスの非識字率。移民の多い国だから、という理由だけでは説明がつかないのが現状のようです。
 2005年にフランスの識字率向上機関が行った調査によると、18歳から65歳のフランス本土在住の成人で、国内で教育を受けた人のうち、読み書きに不自由している人は9%。なんと約310万人にあたります。内訳は6割弱が男性で、残りの4割が女性。そのうち、35歳上が75%を占め、45歳以上になると更にパーセンテージが上がります。
 読み書きが不自由だと最悪の場合、道路標識が読めない、案内の看板がわからない、切符販売機や現金支払機などの機械の操作ができない、小切手が書けないなど、かなり不便な日常生活を送ることになりかねません。そのため、教育省を初め、赤十字やNPO団体が読み書き力の向上を支援する機会を設けていますが、まだ目立った改善は見られないようです。
  読み書きが上手く身に付かなかった一番の理由は、学校で落ちこぼれてしまったとか、途中で行かなくなってしまったなどが挙げられるそうですが、調査機関も驚いたのが、310万のうち、57%は何らかの仕事についていること。失業中の人は11%だけ。フランスの失業率が9%近いから、非識字の人の11%は特に高い失業率とは言えないでしょう。残りは家庭の主婦や定年生活者のようです。
 約310万人の中に入院中の人やホームレス、受刑者たちは含まれていないし、18歳以下の若者の非識字率も4.8%。こういう数字を目にすると、外国人である我らの文法の誤用や多少のスペルの間違いは大目に見てねって、言いたくなってしまいます。
 因みに仏語のillettre=非識字の人を手元の仏和辞典で引いてみたら、「読み書きが完全には出来ない人」とありました。ありゃ、《完全》なんて日本語でも怪しい私です。
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by cheznono | 2009-08-01 01:56 | 不思議の国フランス