湖のほとりで

b0041912_18135899.jpg フランスのセザール賞に当たるというイタリアのドナッテロ賞で主要10部門を総なめにしたという作品、「湖のほとりで」。連日ほぼ満席と言う人気なので、かなりドラマチックなミステリーかと思いきや、実際にはとても静かでリアリズムに満ちた人間ドラマでした。
 
 北イタリアの静かな村にある湖のほとりで、美しい娘アンナの全裸の死体が発見され、この地方に赴任したばかりの警部サンツィオ(トニ・セルヴィッロ)と助手が捜査を始めます。なぜ、若くスポーツウーマンだったアンナが全く抵抗せずに死を受け入れたのか?なぜ、全裸の遺体に上着がかけられていたのか?
 小さな村では皆んながアンナと顔見知りで、村人達の証言からアンナの日常が浮かび上がってきます。湖の近くに住む知的障害者の息子と車椅子の父親。アンナから秘密書類を預かっていたボーイフレンドのロベルト。次女アンナを溺愛していた父親。アンナが所属していたアイスホッケーチームのコーチ。
 物静かで内向的な警部は、アンナがベビーシッターをしていた幼いアンジェロが急死してから、アンナの様子が変化し、その両親も離婚していたことに注目します。
 サンツィオ自身、思春期の娘フランチェスカとしっくりといかず、その理由がアルツハイマーで入院しているサンツィオの妻が家族の顔も見分けられなくなっていることにあるのですが、苦い胸のうちを打ち明けられる相手もいません。
 娘の顔も忘れてしまった母親にフランチェスカを会わせることができないでいるサンツィオは、アンナも家族に重大な秘密を隠していたことを知って衝撃を受け、家族の関係や親子関係の距離感に思いを馳せるのですが。。

 湖のほとりで見つかった美少女の遺体がまるで絵画のようで幻想的にも見え、それが、ラストの謎解きにどうもイメージがぴったりと結びつかないため、あまりすっきりした気持ちで席を立ち上がることができませんでした。でも、この映画にサスペンスはさして重要ではなく、警部が薄紙をはぐように明らかにしてゆく村人達の深層心理や、とりわけ故アンナの思いが観客に伝わって来る過程が見所と言えるのでしょう。
 私は何よりも北イタリアの美しい自然を初めとした映像の美しさと、非常に抑制された演出に惹かれます。個人的には心打たれる作品ではなかったけれど、ひたすら自分の足で村を歩いて情報を集めるサンツィオと共に、北イタリアの山間の村の日常に入り込んだような1時間半でした。 
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by cheznono | 2009-08-08 18:15 | 映画