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北イタリアの国際芸術家村

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 「湖のほとりで」と「セントアンナの奇跡」と、イタリアの山あいの村を舞台にした映画を続けて観たので、何だか北イタリアの鷲ノ巣村の夏が恋しくなりました。特に「セントアンナの奇跡」では、ニースにいる時は何気に訪れているイタリアの平和な村々が、第二次大戦中にとても悲惨な占領経験を強いられて来たことを全く知らなかったので、次回はもっと心して出かけてみたいと思います。
 ここ数年、日本人旅行客がめっきり減っているというイタリアですが、ニースからひとまたぎのイタリアン・リヴィエラには魅力的な鷲ノ巣村が点在しているのに、なぜか殆ど日本のガイドブックには載っていないのが残念です。今日ご紹介する芸術家村は、サンレモからインペリアに向かって海沿いの道を山側にぐるぐる上って行くと現れるブサーナ・ヴェッキア。
 この村はドイツ軍占領の影響を全く受けていません。なぜなら、19世紀にこの地方を襲った3度の地震で村の一部が損壊し、更に4度目の1887年の大地震では教会の丸天井が落ちて50人余りの犠牲者を出したため、住民が逃げ出して、便利な海側に新しい町を作ったので、古いブサーナ・ヴェッキアは見捨てられてしまったのです。
 以来60年、廃村になっていた村にぼちぼちと人が戻って来たのは、戦後の混乱期でした。1960年代になって、画家を初めとしたアーティスト達が、中世のまま取り残されたような村に注目して、理想の芸術家村を作るべく続々と集まって来たため、ようやく村に電気やガス等のインフラが復活。地震の爪痕が痛々しく残る家並みを、イタリアやフランスはもちろん、オランダや英国、ドイツなどからやって来た画家や彫刻家、陶芸家、ミュージシャン達が力を合わせて修復し、住み着いたのでした。
 村の細い石畳を歩くと、古い家々の窓からそれぞれのアーティスト達の作品を見ることができます。とはいえ、サンポール・ド・ヴァンスのような商業目的のギャラリーが所狭しと立ち並んでいるわけではなく、村のたたずまいはいたって素朴。殆ど中せから変わっていないかのようです。地震で半壊した教会は今もそのままですが、2つある教会の塔が鷲ノ巣村を際立たせています。
 アーティストの集まる村だけあって、ブサーナ・ヴェッキアにある数件のレストランはいつも活気に満ちているから、そこにいるだけで陽気な気分がこちらにも伝染して来るようです。写真は、村の入口にある串焼きがおいしいレストラン。遥か眼下には地中海が見下ろせます。
 この店で友人達が初めて食事をした夜、たらふく食べて飲んで、いざお会計となった時、店のスタッフがすまなそうに「今夜はクレジットカードの読み取り機が故障しちゃって、あいにくカードではお支払いできません」と言うので、慌てて手持ちの現金をさぐったけど、15ユーロ程度しか持ち合わせがなくて全然足りません。これは山を降りて海沿いの道にある銀行のキャッシュ・ディスペンサーまで行かないとダメかと思ったとたん、今度は店の主人が現れて、「15ユーロでいいよ、差額は店のおごりだよ!」とにっこり。足りない30ユーロ分はお負けしてくれたのだとか。
 ぼる店も多いと言われるイタリアだけど、太っ腹なレストランもあるものです。車とはいえ、カーブだらけの暗い山道をぐるぐる降りて、現金を降ろして、支払いのためまた山を上って行く手間を考えたら、オーナーのおごりは本当にありがたかったことでしょう。
by cheznono | 2009-09-09 01:55 | イタリア絵日誌