クリーン

b0041912_030247.jpg 「夏時間の庭」「パリ・ジュテーム」のオリビエ・アサイヤス監督の最高傑作とも言われる「クリーン」を観て来ました。監督の元妻マギー・チャンがカンヌ映画祭女優賞を受賞し、フランスメディアも諸手を挙げて絶賛した作品です。
 確かに、どん底の状態から這い上がろうともがくヒロイン:エミリーを、殆どすっぴんで熱演しているマギー・チャンが素晴らしく、再生へともがくエミリーの姿は観ている者に勇気を与えてくれます。しかし、2004年の作品を今になって日本公開するのは、もしかして芸能人の麻薬が問題になっているから?なんて、ちょっと穿った見方が頭をかすめてしまいました。

 かつては人気のロックスターだったリーと恋に落ちて、パリからロンドンを経てカナダに渡って5年、エミリーは何とか内縁の夫リーをまた第一線に戻したいと奔走しますが、音楽関係者は彼女をリーの疫病神のように見なして冷ややかです。
 それに、二人の間の息子ジェイは、もうずっとバンクーバーの夫の両親の元に預けられたままでした。
 売れないリーはヘロインに溺れ、エミリーの留守に急死してしまい、同じく麻薬中毒のエミリーも警察に捕まって、半年の服役を被ります。
 出所しても、住む所もないエミリーは息子の養育権を主張できず、一人パリに戻ってやり直す決心をしますが、またクスリに手を出したりして、親戚に紹介された中華レストランでの仕事にも力が入りません。
 本当は自分も歌手として出直したいのに、そうは簡単に認められないし、パートナーを失った悲しみと孤独感に押しつぶされそうになることもしばしば。そんなエミリーは、バンクーバーで義父母が育てている息子ジェイを引き取ろうと決意を固め、今度こそクスリを断って、まっとうな仕事を見つけるべく努力を始めます。
 一方、ジェイを預かっている義父(ニック・ノルティ)は、孫の母親であるエミリーと真剣に向き合うべく、ジェイを連れてパリを訪れるのでした。

 5,6年前まではパリで結構華やかな生活を送っていたエミリーが、落ち目のロックスターの再生に尽力するものも挫折し、愛する人を失った上に、自分も麻薬中毒者のため息子も預けっぱなしで、パリに戻っても思うようにことは運ばず、思い出すのは彼のことばかり。という中で、それでも、歌手としての再起と息子と一緒に暮らしたいという希望を胸に、逆境を乗り越えて行こうとあがくエミリーが身近な存在に感じられるところが、この映画の魅力でしょう。
 なぜなら、四面楚歌のどん詰まりのような状況でも、子供のために自分は変われると信じ、わずかなつてを頼って職を探し、住む場所を見つけ、かつ、歌手への夢も諦めないエミリーの姿が観客にもパワーを分けてくれるから。何もかも無くして、孤独に苦しむエミリーが、安易に次の相手を見つけて頼ろうとしなかったのも好感が持てました。
 一人の女性の中にある強さと弱さの両面を体当たりで演じたマギー・チャンに加えて、ジェイの祖父役のニック・ノルティが何とも良い味を出しています。ジェームズ・アイボリー監督の「金色の嘘」や「ホテル・ルワンダ」でも存在感がありましたが、今回も人間味あふれる人柄を好演していて、エミリーを見捨てず、亡き息子のパートナーで孫の母親として、彼女と正面から向き合う姿勢が とても印象的でした。
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by cheznono | 2009-09-15 00:39 | 映画