幸せはシャンソニア劇場から

b0041912_1401313.jpg 小さな劇場の再生に奮闘する裏方たちを描いた、心温まる半ミュージカル映画「幸せはシャンソニア劇場から」。「コーラス」の制作チームによるこのヒット作がフランスで公開されたのは、リーマンショックの真っただ中。不況、閉鎖、失業、ストライキなど、身につまされるような時代状況の中で、仲間との連帯と再生を描いたこの作品に元気を貰って、見終わった後は思い切り歌いたくなったり、踊りたくなったりしたフランス人も少なくなかったようです。

 1936年、パリの下町のミュージックホール:シャンソニア劇場が、おりからの世界不況のあおりで閉鎖に追い込まれます。劇場は地域を仕切るボスに差し押さえられ、ベテラン裏方のピゴワル(ジェラール・ジュノ)と組合活動家気取りのミルー、そして芸人のジャッキー(カド・メラッド)は失業。特にピゴワルは浮気な妻にも逃げられ、失業者に養育の資格なしと愛する息子ジョジョも取り上げられて、途方に暮れてしまいます。
 息子を取り戻したいピゴワルは、失業状態から抜け出そうと一念発起して、劇場を差し押さえた地元のボス:ギャラピアに掛け合い、劇場仲間のミルーとジャッキーとも力を合わせて、ミュージックホールの再建へと奔走。
 そんな時、亡き母の縁故を頼って現れた田舎娘ドゥース(ノラ・アルネゼデール)の若い魅力に、ギャラピアとミルーはぞっこんです。
 美人で歌えるドゥースの登場で、劇場はかつてのにぎわいを取り戻せるかのように思いきや、またもや劇場は危急存亡の危機に直面してしまいます。歌手として自信をつけたドゥースが更なるステップを求めて、あっさり劇場を出て行ったからでした。
 しかし、劇場脇で20年も引きこもり、ジョジョにアコーディオンの手ほどきをしたくらいで、世間からは遠ざかっていたラジオ男と呼ばれる紳士が、雷に打たれたかのように突然立ち上がり、歌姫ドゥースを探しに旅立ちます。なぜ、何のために?その昔、劇場の指揮者で才能ある作曲家でもあったラジオ男の恋の記憶が、ドゥースを再び下町の劇場へと向かわせるのですが。。

 仲間との連帯に下町の人情、そして、いかにも往年のシャンソン風のメロディや「海に行こう」などの楽しいミュージカル場面に浮き浮きさせられますが、その合間には常に暗い社会状況が重要な要素として織り込まれます。
 当時のフランスは、大不況下で左派の新政権が生まれ、労働者が結集して組合的な活動に目覚めたという変換の時期。でも一方で、隣国ドイツのヒットラー政権やイタリアのファシズムの影響で、右翼の台頭も目立ち出し、第二次大戦が目前でした。そんな不穏な空気の中、こうした小劇場の存在は、パリの庶民につかの間のエンターテイメントと希望を与えてくれたに違いありません。
 映画ではどこまでも人のよいピゴワルやジャッキーにこれでもかと辛い体験や運命を強いますが、ラストは救いを用意してくれているので、ハッピーな気持ちで映画館を出ることができます。
 しかし、こそばゆい邦題はいかがなものか?降りかかる苦難を乗り越え、皆で力を合わせて、下町の小劇場を生まれ変わらせたのだから、やっぱり原題の「フォーブール36」(新劇場名)を生かしてほしかったのに。因みに、ここでのfaubourgは下町、場末などの意味で、モンマルトルを彷彿とさせますが、エッフェル塔まで見える設定から、架空の場所とわかります。かのブランド地区サントノレ通り(フォーブール・サントノレ)の場合はサントノレ街通りという感じでしょうか。
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by cheznono | 2009-10-06 01:41 | 映画