ジェイン・オースティン:秘められた恋

b0041912_1112568.jpg 20世紀の終盤から改めて再燃したイギリスのジェイン・オースティンブーム。その締めとも言えるようなジェイン自身の運命の出会いを描いた映画「ジェイン・オースティン 秘められた恋」がこの秋、欧州より2年以上遅れて公開されましたが、あまり話題にならなくて淋しいです。
 それまであまり注目されていなかった若きジェイン・オースティンと法学生トム・レフロイとの交流が、実はジェインの人生は変えるような激しい恋だった可能性があるという分析をした米国人伝記作家ジョン・スペンスの著書「Becoming Jane Austen」を映画化したこの作品は、ジェインの生きた時代(1775〜1817)の南イングランドの田園生活や彼女の作品の背景がわかるという点で、なかなか興味深い映画と思うのですが。

 ハンプシャーのつましい牧師の一家に生まれ、6人の兄弟と一人の姉の間で育ったジェイン(アン・ハサウェイ)は、才気煥発、言葉の感覚が鋭く、自立心に富んでいました。母親(ジュリー・ウォルターズ)は娘を貧しい生活から解放するため、ジェインに裕福な侯爵夫人の甥ウィズリーとの縁談を勧めます。けれどもウィズリーに魅力を感じないジェインは、ロンドンから叔父の元に遊びに来たアイルランド人の好青年トム・レフロイ(ジェームス・マカヴォイ)と知り合い、親しくなっていきます。
 初めは自信家で理詰めのトムの言動にいらだったり、反発を感じたジェインも、ハンサムで頭脳明晰なトムに惹かれていることに気づいて、とまどうばかり。ウィズリーに求婚されてもつれない態度で、母親をやきもきさせます。牧師と恋愛結婚した母の信条は、生活に必要なのは愛よりもまずお金。でも、20歳のジェーンには当然愛情が優先されるのでした。
 そんな折り、海外派遣された婚約者の帰りを待ちわびる姉カサンドラ(アナ・マックスウェル・マーティン)に、愛する婚約者の訃報がもたらされ、カサンドラは泣きくれます。
 一方、ジェインと恋に落ちたトム・レフロイですが、優秀さを買われ、判事である叔父の援助で学業を積む身。自分のお金はなく、アイルランドの両親も彼の出世を当てにしているため、貧しい牧師の末娘との結婚など許される状況ではありません。
 悩んだ末に、ついにトムはジェインと駆け落ちする決心をするのですが。。

 「いつか晴れた日に」や「エマ」、そして「プライドと偏見」と小説や映画で現代に生きる私たちを楽しませてくれるジェイン・オースティン。姉カサンドラに当てた手紙から人柄や私生活が推測されていますが、20代前半の手紙はカサンドラが焼却してしまったためにわかっていない点が多いとか。そのせいか、この映画は「プライドと偏見」と重なる部分が目立ちます。トムは「プライドと偏見」のダーシー卿のモデルと言われているにせよ、果たしてジェインが小説にそこまで実体験を反映させたかどうかは議論の分かれる所でしょう。妹が小説に書いているくらいであれば、カサンドラはあえて手紙を焼かなかったのでは?と思えます。
 女性が結婚するのが当然の時代にカサンドラとジェインは生涯独身で過ごしたのは、二人がそれぞれに初恋の相手と悲痛な別れを余儀なくされたから、だったのかどうかは謎ですが、この映画を若く美しく利発なジェインの青春の光と陰の一つの解釈として楽しめることは確か。イギリス英語を上手に身につけたアン・ハサウェイの瑞々しい美しさと、ジェームス・マカヴォイの知的な演技も心地良かったです。
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by cheznono | 2009-12-08 01:12 | 映画