インビクタス/負けざる者たち

b0041912_1492895.jpg 27年間も狭い独房に投獄されていたネルソン・マンデラが72歳で解放されてから20年。この映画もお付き合い半分で観に行きましたが、自分の生活からは遠い南アの歩んで来たイバラの道を映像で知ることができて、良かったです。何よりも、マンデラ氏の人柄が素晴らしい。クリント・イーストウッドの監督作品としては珍しく素直で爽やかな仕上がりとなっています。
 
 アパルトヘイトに反対して反逆罪に問われたネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)は27年後に釈放され、1994年に南アの大統領に就任します。アパルトヘイト政策は終わったとはいえ、積年の黒人×白人の対立は国の運営に大きな影を落とし、白人社会は初の黒人大統領の登場に疑心暗鬼でした。
 マンデラ氏はそうした南アの人々の心を一つにまとめるべく、翌年に南アで開催される予定のラグビーのワールドカップに目を付けます。イギリス人が持ち込んだラグビーは、南アでは白人のスポーツ。しかも、当時の南アチーム:スプリングボクスは弱くて、ワールドカップに勝ち残る可能性はないと思われていました。そこで、マンデラはチームの主将のフランソワ・ビナール(マット・デイモン)をお茶に招待し、南アにとってのワールドカップの重要さを静かに語ります。
 マンデラ大統領の人柄に魅了されたビナールは、ワールドカップを機に根強い人種差別から脱皮し、祖国を一つにまとめたいというマンデラの夢をかなえるべく、チームを鼓舞します。次第にメンバーの一人一人の意識も変わって行き、弱かったチームが強い連帯の元にこれまでにない力を発揮。クライマックスのワールドカップでは、ついに当時最強と言われていたニュージーランドチームとの決勝戦を迎えるのでした。

 試合の結果も当然わかっている実話ですが、映画はさりげないエピソードを織り込みながら、当時の南アの緊張や、大統領の人柄、姿勢、そしてビナール率いるラグビーチームの変化を描いて行きます。でも、ワールドカップ開催からは完全にスポーツ映画。ラグビーに興味がないとちょっと入り込めないかも。
 「インビクタス」の意味は多分、負けないということだろうと思いながら辞書を引きましたが、仏語英語とも出ていない。インビクタス(征服されない)はラテン語で、英国の詩人ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの四行詩の題だったのですね。「私が我が運命の支配者、私が我が魂の指揮官」マンデラ氏はこの詩を獄中で支えにし、苦しい時のピナールにも贈っています。
 マンデラ氏解放20年のお祝いを報道したフランスメディアも強調していましたが、27年という長い月日を狭い独房で床に寝るような投獄生活を過ごしたマンデラ氏に全く恨みや屈折した感情が見られず、ひたすら白人との和解と調和に尽くそうとする姿が感動的です。マンデラ大統領に共感したスプリングボクスの奇跡的な活躍も、人間その気になればできるという大きな希望を与えてくれます。
 クリント・イーストウッド監督の幅の広さを感じさせられる気持ちの良い映画でした。
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by cheznono | 2010-02-18 01:51 | 映画