ドン・ジョヴァンニ 〜天才劇作家とモーツァルトの出会い

b0041912_23141152.jpg ずっと気になっていた「ドン・ジョヴァンニ」をやっと観て来ました。監督はスペインの美の巨匠カルロス・サウラ。オペラ「ドン・ ジョヴァンニ」誕生までを脚本家ダ・ポンテの半生と共に描いた作品で、その映像美には圧倒されます。
  あの名作「アマデウス」と重なる部分も多く、歴史絵巻とモーツァルトのオペラが同時にたっぷりと楽しめる作品でした。

 映画は、1863年のヴェネチアで、ユダヤ系一家の少年が、半ば強制的にカトリックに改宗させられ、名前もロレンツォ・ダ・ポンテと改名する所から始まります。
 成長してカトリックの神父となったものの、女性を誘惑したり、体制に批判的な詩を書いたりしたために宗教裁判にかけられ、教会への謀反の罪で ヴェネチア共和国から15年間追放されることに。 
 同じユダヤ系として何かと世話になったカサノヴァの助言でウィーンに渡ったロレンツォ(ロレンツォ・バルドゥッチ)は、ウィーンの革命児と言われていたモーツァルト(リノ・グアンチャーレ)と出会い、皇帝ヨーゼフ2世とサリエリの提案でモーツァルトの新作オペラの台本を書く仕事を得ます。
 その結果、ロレンツォの台本による「フィガロの結婚」は大成功。ソプラノ歌手を愛人にして絶好調のロレンツォは、恩人カサノヴァから「ドン・ジョヴァンニ」の台本を書くことを要望されます。
 古くから伝わるドン・ジョヴァンニに、自由奔放なドン・ファンを地で行くカサノヴァと自分自身の生き方を投影させるべく、台本作りに情熱を傾けたロレンツォ。ドン・ジョヴァンニの作曲にあまり乗り気でないモーツァルトを口説いて、その気にさせたものの、既にモーツァルトは健康を損ねていました。
 そんな折り、ロレンツォは かつてヴェネチアで出会った忘れ得ぬ美女アンネッタ(エミリア・ヴェルジネッリ)と再会。彼女に夢中になるあまり、愛人であるソプラノ歌手の嫉妬をかって窮地に立たされます。

 前半は、教会から追放を言い渡されるまでのロレンツォが暮らしたヴェネチアがそれは美しく神秘的に描かれていて、画面に釘付けでした。 既に衰退していたとはいえ、独自の文化を誇っていた18世紀のヴェネチア共和国に迷い込んだよう。当時のカーニヴァルのシーンも興味深かったです。
 舞台がウィーンに移ってからは、ロレンツォとモーツァルトによるオペラ製作とオペラ「ドン・ジョヴァンニ」が同時進行して行く構成。ちょっと中だるみはあるものの、天才モーツァルトの人間味あぶれる姿が良かったです。

 ロレンツォが「ドン・ジョヴァンニ」の初演を迎えるのは1787年。フランス革命の2年前ですね。退廃したヴェネチアで革新的な詩を書いて追放され、サリエリを頼ってウィーンにやって来たロレンツォを保護したヨーゼフ2世は、マリー・アントワネットのお兄さんで、文化芸術には理解のある皇帝でした 。
 ヨーゼフ2世亡き後、オーストリア宮廷に居ずらくなったロレンツォは、英国へ脱出。その後、アメリカに渡って89歳の生涯をまっとうしたというからすごい。波瀾万丈の充実した一生だったようです。
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by cheznono | 2010-05-05 23:35 | 映画