オーケストラ!

b0041912_126155.jpg 昨年秋にフランス公開されてからこの春までロングランした「オーケストラ!」。今年の初めにニースで観た映画第一弾でした。
 確かに面白い切り口のコメディだけど、そこまでヒットする内容かな?と思いながら観ていたのは中盤まで。いよいよコンサートが始まったラスト十数分にこの作品の真骨頂が発揮されます。チャイコフスキーのバイオリン協奏曲がこれほど魅力的な曲だったとは!おすぎの言う通り、最後の12分のためだけにでも充分に見る価値のある秀作です。

 ロシアのボリショイ交響楽団で劇場の清掃員をしているアンドレイ(アレクセイ・グシュコブ)は、偶然目にしたパリのシャトレ座からの出演依頼FAXを見て、ボリショイ交響楽団になりすまし出演することを思いつきます。
 実は、アンドレイは30年前、前途洋々の天才指揮者として活躍していたのに、ブレジネフ書記長の命令で当時のボリショイ交響楽団からユダヤ人演奏家達が追放されることに抵抗したため、自らも指揮者の座を追われ、今や清掃員として何とか劇場に関わっている身でした。
 千載一遇のチャンスと、なりすまし楽団を結成してパリの晴れ舞台を踏むべく、親友の元チェロ奏者が運転する救急車に乗って往年の楽団員を訪ねるアンドレイ。かつての仲間達は、蚤の市業者やポルノ効果音担当、ジプシー等、それぞれ全く違った世界で細々と暮らしている連中ばかりです。
 突然降って湧いたシャトレ座での演奏計画に張り切る元楽団員を引き連れて、パリに乗り込んだアンドレイですが、フランスに着いたとたん、リハーサルもそこそこにてんでんバラバラ、パリの街に散ってしまった演奏者達に手を焼くはめに。 
 アンドレイは、パリでの演奏曲をチャイコフスキーと決め、バイオリン協奏曲のソリストはフランスの新星アンヌ=マリー(メラニー・ローラン)と指名しますが、アンヌ=マリーのマネージャー(ミュウミュウ)がホテルに現れて、彼女に過去の話をしないようにとアンドレイに釘を刺すのでした。
 
 30年間も演奏とはかけ離れた職業についている元楽団員達をまとめ、人数分の偽造旅券まで調達してパリに向かうアンドレイのもう一度オーケストラを指揮したいという情熱とそれを超える何かへのこだわり。こんなことあり得ないよねという感じのハチャメチャなパリ行きと、コンサートが始まってからのシリアスなクライマックスとのコントラストが実に鮮やかです。
 共産主義下で、才能がありながら自分の力ではどうしようもできない不遇に見舞われた登場人物たちが、辛い過去をユーモアの奥に隠して、つましく、でも逞しく生きている様子が生き生きと描かれているので、中盤過ぎまでのストーリーの寓話調を薄めているように思えます。
 バイオリン協奏曲が始まって、アンドレイを包んでいた謎が解けて来ると、それまでのコメディタッチがいっきに吹っ飛んで、情感あふれる演奏にいつまでも浸っていたい気持ちになりました。
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by cheznono | 2010-05-17 01:28 | 映画