あの夏の子供たち

b0041912_0483816.jpg  家族が腰椎圧迫骨折で入院していたため、すっかりブログから遠ざかってしまいました。遅ればせながら、去年のカンヌ映画祭のある視点部門で審査員特別賞を受賞した「あの夏の子供たち」をUPします。フランス映画界の憂鬱と主人公の自殺という重いテーマを提示しつつも後味のさわやかな作品でした。

 主人公グレゴワール(ルイドー・ド・ランクザン)は、ミニシアター系の映画を手がける映画プロデューサーで、これと見込んだ作品は海外の難しい企画でも何とか完成させ、上映にこぎつけるべく、骨身を削って努力しています。
 しかし、独立系映画プロデューサーのご多分に洩れず:グレゴワールの経営する会社の経済状況は苦しく、アシスタントは再三グレゴワールに資金繰りの悪化を訴えますが、グレゴワールは問題を先送りするばかり。
 一方、私生活ではイタリア人の妻シルヴィア(キアラ・カゼッリ)と三人の娘達に恵まれ、家族を心から愛する良き父親でした。多忙な中で家族と過ごす幸福な時間が丁寧に描かれます。
 折からの資金難にも関わらず、いろいろな企画を進めるグレゴワールですが、会社の負債は膨らむばかり。採算性を度外視して来たツケが周り、次々に問題が発生して、前向きで常に明るいグレゴワールも追い詰められて行きます。
 そして、唐突に拳銃の引き金を引くグレゴワール。
 優しく頼もしく教養のある父親の突然の自死に呆然とする娘達。でも、妻シルヴィアは、残された破綻寸前の夫の会社の再建と彼がこだわっていた製作中の映画の完成に奔走します。その過程で改めてグレゴワールの人間的な魅力と、しかし問題には向き合わずに逃げ腰だったという弱さが浮かび上がって来るのでした。

 実在したプロデューサーの自殺をベースにしたこの作品には、独自の映画文化を誇って来たフランス映画界の抱える問題が色濃く反映されています。企画制作と配給と同時に映画プロデューサーの大きな仕事として予算の確保がありますが、《フランス映画》でないと助成金は出ないため、グレゴワールのように質の良い外国映画の紹介にこだわるプロデューサーは、資金繰りに四苦八苦するのが必然とか。
 嵩む製作費と採算性の帳尻を合わせるには、テレビ局が共同出資した大作か、低予算の作品と二極化してしまい、さほど興行成績を見込めない芸術系や独立系のプロデューサーは、常に資金集めに頭を悩まさなければいけない状態です。
 
 そんな中で、膨らむ負債に押しつぶされてしまうグレゴワールですが、人を失望させたく無いあまり、陽気に振る舞いながら無理を重ねる姿勢と、家族想いで存在感のある父親像が融合して、独特の魅力的を放つ人物として描かれています。
 そのグレゴワールが突然いなくなってしまった後の家族と仲間達の対応が、この映画の見所でしょう。映画製作に問題多しだけど、全編を通じて映画への愛情と情熱が感じられるのが嬉しい作品です。
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by cheznono | 2010-06-30 00:49 | 映画