シスタースマイル ドミニクの歌

b0041912_14323953.jpg  人気実力とも押しも押されぬ美形女優セシル・ド・フランスの熱演が観たくて、猛暑の中を出かけて行った「シスタースマイル」、予想以上に良い作品でした。後半、かなり悲惨な末路をたどる実話に対して、映画は意外に明るさと希望を失わない仕上がりになっている点も救われます。
 60年代に世界を席巻し、日本でも大ヒットしたという「ドミニク」の歌を知っている人なら更に興味深く鑑賞できるのではないでしょうか?

 今から50年前のまだまだ保守的なベルギーで、ボーイッシュで自立心の強いジャニーヌ(セシル・ド・フランス)は、自分探しと母親との葛藤との間でもがいていました。修道女から聞いたアフリカ救援活動に憧れるジャニーヌは、早く結婚し家業のパン屋を継ぐのがあなたの生きる道という高圧的な母親に反発。大好きなギターを片手に修道院の扉を叩きます。
 しかし、修道女になる修行は禁欲的で厳しく、自由を愛し、何かと型破りなジャニーヌは、シスター達との摩擦が絶えません。
 ある時、彼女が即興で歌った聖ドミニクを讃える歌に目を付けた神父の尽力で、ジャニーヌの人生は急展開を始めます。
 ミステリアスな歌う修道女として、顔も名前も隠したまま売り出したドミニクの歌は、あれよという間にミリオンセラーを記録。しかし、レコード会社との契約はこの歌の印税を殆ど修道院へ献金するというものでした。
 やがて、修道院から念願のアフリカ行きの機会を与えられたジャニーヌですが、コンサート活動をしたいという気持ちがまさって、準備のための勉強に身が入りません。旧弊なシスター達の価値観にも嫌気がさした彼女は、ついに修道院を飛び出し、学生時代から自分を慕う女友達アニー(サンドリーヌ・ブランク)の元に転がり込みます。
 けれども、還俗し独立した歌手として再出発を図るジャニーヌを、レコード会社は冷たく拒否します。加えて、超ヒット曲の印税にかかる多額の納税義務が発生し、ジャニーヌは金銭的に追い詰められて行くのでした。  

 26歳で修道院に入ったジャニーヌが大ヒットを飛ばしたのが1963年から。古い価値観への決別と女性の解放を求める5月革命がフランスで起きたのが1968年だから、ジャニーヌの誕生がもうちょっと遅ければ、その人生はかなり違ったものになっていたでしょうに。 
 エネルギッシュで個性的、自我の強いジャニーヌは、修道女としては型破れでも、現代っ子ならば珍しくない女性像ですが、若い時、彼女が心から愛せたのは姉妹同然に育った従姉妹だけ。母親との確執がトラウマになっているせいか、ジャニーヌが誰も愛することができないと苦しむ姿が切ないです。
 同性愛者ではなかったジャニーヌが、紆余曲折を経て、レズビアンのアニーを受け入れて行く辺りも、無理なく描かれています。
 この作品では、あたかも還俗してからの生活がとても短かったように見えますが、実際には33歳で修道院を出たジャニーヌが亡くなるまで20年近くあり、死の当日には著作権協会に彼女の重い借金の6倍近い寄付金が集まっていたというから、何とも皮肉なものですね。
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by cheznono | 2010-07-25 14:37 | 映画