シチリア!シチリア!

b0041912_1174866.jpg 新年あけまして、おめでとうございます。
 今年もどうぞよろしくお願い致します。

 さて、2010年最後を締めくくった映画は、ジョゼッペ・トルナトーレ監督の自伝的作品「シチリア!シチリア!」。地中海に照りつける日差しのまぶしさに、大晦日の東京にいることを忘れるようなひと時で、映像の美しさと音楽、そしてイタリア史の一端を堪能できる作品です。 
 題名の通り、シチリア島バーリアを舞台にした、3代に渡る一家族の大河ロマンですが、どちらかというと、家族物語というよりも20世紀初頭から後半までのシチリア風俗史のようでしたが。

 1930年代、首都パレルモに近い小さな町バーリアに生まれた牛飼いの息子ペッピーノは、気骨のある父親チッコと兄ニーノと共に貧しいながら、まずまずの子供時代を送っていました。
 とはいえ、ペッピーノは学校そっちのけで、幼い時から家計を助けるために、農作業や牧童として労働に駆り出されます。
 子供の頃から横暴な雇い主と搾取される農民たちの中で、嫌というほど不公平さを目の当たりにして来たペッピーノは、やがて世直しの理想に燃えた青年に成長。第二次大戦後はイタリア共産党に傾倒して行きます。
 ムッソリーニによるファシズム下においても、牛飼いながら文化的な教養を身につけた父親チッコの影響もあって、政治運動に関わり始めたペッピーノは、町で見初めたマンニーナと情熱的な恋に落ち、彼女の両親の大反対を押し切って結婚。次々に子供に恵まれます。
 家族を養うため、パリに出稼ぎに行ったペッピーノは、かつての同士から、シチリアに戻って政治家の道を歩むように説得されて、議員に立候補する決心をするのですが、、
 
 土地はやせているものの、アフリカとヨーロッパの間に位置し、地中海の交差点とも言えるシチリア島は、ギリシャローマ時代からさまざまな民族に入れ替わり立ち替わり征服・支配されて来たため、住民たちは独特の気質を持っていると言われます。
 ドイツ、フランス、スペイン王による相次ぐ統治と圧政に耐え、疫病や飢饉、動乱にもまれて来たシチリアは、第二次大戦後の産業化にも遅れ、農民は貧困に喘ぎ、マフィアによる不正義がはびこっていました。
 そうした歴史と風土の中で培われた、逆境に強く頑固なシチリア気質が、ペッピーノの一族の行動にも色濃く感じられます。

 全編を通してバーリアの魅力を余すことなく捉えた映像は美しく、ジョゼッペ・トルナトーレのシチリア讃歌とそこに住む家族の絆の強さは、はっきりと伝わって来ます。
 ただ、2時間半という長さの特に後半は、人生の一幕の羅列が続いたせいでしょうか?バーリアの町がくぐって来た激動の20世紀を、ノスタルジックな絵はがきにしたような映画で、前作「題名のない子守唄」で引き込まれたドラマ性や盛り上がりが、ここでは散逸してしまった感じが否めません。ペッピーノを初め、登場人物の心の動きがもう少し描かれていたのなら、もっと作品に入り込めたと思うのに。

 ペッピーノを熱演した新星フランチェスコ・シャンナは、どこかリチャード・ギアを彷彿とさせる面持ちで、イタリア美人らしい大作りな顔立ちのマルガレット・マレ(妻マンニーナ)は、巨大な瞳が印象的。二人ともこれから多いに期待できそうです。
 ところで、モニカ・ベルッチはいったいどこにいたのでしょう?しかも 「青春の輝き」で私をすっかり魅了したルイジ・ロ・カーショが、なんとあの物乞い女性の息子だったとは!こんな大物たちを惜しげなく端役に使うなんて、何とも贅沢。これもきっとトルナトーレ監督の人徳ゆえなのでしょうね。  
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by cheznono | 2011-01-01 01:18 | 映画