デザートフラワー

b0041912_1321960.jpg ソマリア出身のスーパーモデル:ワリス・ディリーのベストセラー自伝小説を映画化した「デザートフラワー」。想像を絶するワリスの数奇な半生に関心があって観に行きましたが、むしろ、アフリカで今も行われている恐ろしい因習の廃絶に向け、問題を喚起する作品で、非常に考えさせられました。

 ソマリアの遊牧民の娘ワリスは13歳の時、年配の金持ちの4番目の妻にさせられそうになったため、家出を決意し、一人着の身着のままで砂漠の中を彷徨いながら祖母の住むモガデュシュを目指します。
 殆ど飲まず喰わずのまま、死に物狂いで首都モガディシュに着いたワリスは、祖母の計らいで英国へ出国。ロンドンのソマリア大使館で、ハウスキーパーとして働き始めます。
 6年後、ソマリアの政変でロンドンの大使館は閉鎖となり、職員たちは全員ソマリアへ帰ることに。しかし、帰国を拒否したワリス(リヤ・ケベデ)は、路上生活者となるほかありませんでした。
 未だ英語も話せないワリスは、ある日バレエダンサーを夢見るマリリン(サリー・ホーキンス)と知り合い、彼女の部屋に寄宿して、ファーストフード店で働くことになります。
 その店で、売れっ子カメラマン(ティモシー・スポール)に見出されたワリスは、思いがけず写真のモデルとして成功。そのお陰で、ファッションモデルへの道を歩み出すワリスでしたが、手元にあるのはとっくに有効期限の切れたパスポートだったため、不法滞在に問われてしまいます。

 ワリス・ディリー本人によると、原作に比べて、映画はかなり省かれている部分があるようですが、映画を観る限り、なんて運の強い女性だろうという印象です。
 周囲の支援と強運、美貌を武器に、故郷に戻ることを拒否して、何が何でもロンドンで生きて行く覚悟をするその意志の強さとバイタリティーには目を見張るものがあるし、成功の結果として彼女が抱いた使命感が素晴らしい。
 この作品の何より重要な点は、女性の貞操を守るためにアフリカで現在も続けられているFGM(女性性器切除)というおぞましい因習を、ワリスが自身も経験者として告発、世界中に向けて撤廃運動を繰り広げる過程を映像で我々に示している点でしょう。
 わずか5歳の時にワリスが体験したFGMの野蛮さは目を覆いたくなる残酷さで、ワリスの妹二人もFGMのために命を落としているという事実に身体が震えます。
 ワリスたちの活動が功を奏して、FGMを法律で禁止したアフリカの国々があるにもかかわらず、今も日に約4000人の少女がこの因習の犠牲になっているとは。女性を男の所有物としてのみ価値のある存在と見なし、衛生観念を度外視して幼い少女の心身に決定的な傷をつけることを、母親たちが受け入れるだけでなく、奨励・強要していることに、救いがたい闇を見る思いです。 
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by cheznono | 2011-01-10 01:32 | 映画