クリスマスストーリー

b0041912_0202089.jpg やっと観ましたアルノー・デプレシャン監督の「クリスマスストーリー」。贅沢なキャストで織りなすヴェイヤール家の辛口なクリスマス物語は、フランスでメディア評が高く、観客評はまあまあだった作品ですが、私にはとても面白かったです。
 2時間半、実際にフランスのある一家の生々しいやり取りの中に放り込まれたような気分が味わえます。

 ベルギー国境近くの小さな町ルーベで、工場を経営するアベル・ヴェイヤールと妻ジュノン(カトリーヌ・ドヌーヴ)には、初め2人の子供がいましたが、長男は幼い時に白血病を発症、6歳で亡くなっています。
 長女エリザベート(アンヌ・コンシニ)は、今や脚本家として成功。夫クロードも高名な数学者ですが、高校生の息子ポールは精神を病んでいます。
 白血病の長男のために骨髄移植の希望を託されて生まれた次男アンリ(マチュー・アマルリック)は、骨髄が適合しなかったせいで、生まれた時から母親に距離をおかれ、しっかり者の姉とはそりが合わず、一家の問題児として成長。
 末っ子のイヴァン(メルヴィル・プポー)は、内気で内向的でしたが、兄アンリや従兄弟シモン(ローラン・カペリュート)とも親しかったシルヴィア(キアラ・マストロヤンニ)と結婚して、今は二児の父に。

 ある日、母ジュノンが夭逝した長男と同じ血液のがんに冒されていることが判明。治療に有効なのは家族からの骨髄移植のみと言われた夫アベルは、クリスマスに子供たちを呼び寄せ、骨髄の適合テストを受けるよう頼みます。
 5年前、詐欺まがいの事業計画して失敗し、その借金を姉エリザベートが支払う代わりに絶交を言い渡されて以来、家族とは疎遠となっていたアンリは、新婚時代に妻を事故で失い、今やアル中寸前。でも、今回は甥ポールの誘いに応じて、久しぶりに実家に戻って来ます。

 雪景色の中、一見典型的なフランス中産階級のクリスマスの集いが始まったものの、白血病を宣告されながらも尚、次男アンリを愛せないジュノン、早速アンリと衝突するエリザベート夫婦、妻の病気に落ち込む父アベルと、それぞれが緊張感を抱えて、複雑な感情がぶつかったり、和んだり。
 両親の死後、ジュノンに育てられたシモンと末っ子イヴァン、どこか線が細く消極的な二人が家族の緩衝帯のような役割を果たします。
 一方、シルヴィアはレズビアンだったアベルの亡き母親(子供達の祖母)の恋人ロゼメから、イヴァンとの結婚を巡って思いがけない事実を聞かされ、ひどく動揺するのでした。

 白血病で長男を失ったトラウマが今も見え隠れするヴュイヤール家で、男性陣は誰もがデリケートで壊れ易い心を抱えています。両親に愛され、社会的にも成功している長女まで鬱病ぎみの中、白血病を宣告された母ジュノンだけが一人超然とし、家族に死への恐怖を見せないようにしながら、自分のエゴは貫くという姿はドヌーヴならではという感じ。「しあわせの雨傘」のシュザンヌ役も良いけれど、ジュノンのような役をやらせたらドヌーヴの右に出る者はいないのでは?
 そして、母ジュノンの愛に飢え、憎まれっ子の問題児のまま大人となってしまい、酒の力を借りて家族を挑発するアンリを演じたマチュー・アマルリックもさすがです。
 そのアンリが連れて来たユダヤ人の恋人フォニア(エマニュエル・ドゥヴォス)は腹が据わっていて、どこかジュノンに共通するクールさと安定感が見られます。だからこそ、アンリが惹かれたのかも。

 家族ならではのむき出しのエゴイズム、感情のぶつかり合い、それでいながら切っても切れない家族の絆。根底にはやはり暖かいぬくもりが流れているのですね。
 親子姉弟の確執や近親憎悪、そして血液のがんという重いテーマを扱いながら、悲壮感が漂っていないし、安易な結論も出していない点が魅力的です。観終わって帰宅した後も、不思議な余韻の残る作品でした。
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by cheznono | 2011-01-19 00:21 | 映画