わたしを離さないで

b0041912_0484251.jpg  カズオ・イシグロ原作「わたしを離さないで」。原作、映画とも感動した「日の名残り」がから早くも18年、この作品も結構なベストセラーになったと聞くし、原発事故不安を紛らわせたらと観て来ました。
 でも、地震以来初めて観る映画にこれを選んだのは失敗だったようかも。気が晴れるどころか、更にずしりと重い気持ちで帰宅することに。限りある青春の痛いような恋愛ストーリーよりも、臓器提供ドナーたちの惨い宿命が何とも衝撃的で、節電中の銀座がよりいっそう暗く見えた帰り道でした。
 とはいえ、生きとし生けるものとして、一日一日をもっと大切に生きて行かなくては、という思いを新たにさせられる作品です。

 イギリスの美しいカントリーサイドにある寄宿学校で、少年少女達が厳しく管理されながらもスポーツや絵の創作を楽しみ、健やかに成長しています。キャシー、ルース,トミーの3人は特に仲良し。優しく理知的な少女キャシーは、草食系少年のトミーに惹かれ、互いに淡い恋心を抱いている様子なのをちょっとおませなルースは気づいています。
 厳格な校長(シャーロット・ランプリング)のもと、正統派の教育を施されているように見える生徒達ですが、実は臓器提供を運命づけられていて、長くは生きられないらしいことがわかって来ます。
 18歳を迎え、寄宿学校を卒業した3人は、農場のコテージをシェアして暮らし始めますが、いつの間にかルースがトミーの恋人となっていて、キャシーは一人淋しい思いを味わいます。
 学校を出た《卒業生》たちは、その日が来るまで、旅行や恋愛が許されていました。そして「恋人同士が心から愛し合っていることを証明できるなら、ドナーとなる日が数年間猶予される」という噂が伝わり、《卒業生》の間に同様が広がるのですが。。。

 SFなのに、未来でなく今より少し過去に設定しているためか、妙な現実感があり、それだけに《卒業生》たちを待ち受けている運命の残酷さが際立ちます。
 何より印象的なのは、主人公達がドナーとしての宿命を従順に受け止め、未来につなぐかすかな希望は持っても、生まれながらに自らに課せられた任務への抵抗や脱走はいっさい試みない点でした。
 寄宿学校で《情操教育》を受けていることもあってか、3人は繊細で傷つき易い心を持っているためいっそう従順さと諦観が胸を打ちます。しかも、情操教育に見えたものの真の目的がわかった時の衝撃は痛いくらいです。
 
 私は、クローンを生み出した現代文明への警鐘と受け止めましたが、カズオ・イシグロやマーク・ロマネスク監督は、ドナーの限りある青春における恋愛に重きを置いたようですね。
 主要人物には「17歳の肖像」のキャリー・マリガン、「ソーシャルネットワーク」のアンドリュー・ガーフィールド、そしてお馴染みキーラ・ナイトレイを起用。それぞれが、待ち受ける運命の恐怖と戦いながら、内省的なキャシーとトミー、限られた青春を必死で楽しもうとするルースを熱演しています。
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by cheznono | 2011-04-08 00:49 | 映画