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戦火のナージャ

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 ニキータ・ミハルコフ監督が親子で出演している「戦火のナージャ」。16年前にカンヌ映画祭で絶賛されたという「太陽に灼かれて」の続編ですが、あいにく私は肝心の「太陽に灼かれて」を観ていないため、省略や暗示の多いこの続編を完全には理解できませんでした。
 これも大震災の後に観る映画としては、いかがなものか。ドイツ-ソビエト戦の圧倒的な破壊力や悲惨さ、無力さは、大地震・津波の悲劇に通ずるものがありますが、戦争は究極の人災。その虚しさをこれでもかと突きつける映像にはぐったり。結構しんどい2時間半でした。

 スターリンによる大粛清で、革命の英雄だったコトフ大佐(ミハルコフ)は、反逆者の汚名を着て逮捕・処刑され、妻子も行方知れずに、、なった筈でした。
 7年後の1943年、当時コトフ大佐をスターリンに引き渡したKGB幹部のアーセンティエフ大佐(オレグ・メンシコフ)は、スターリンに呼ばれ、コトフ大佐が生きているのでは?という疑問を突きつけられます。
 アーセンティエフ大佐は、コトフの妻マルーシャの元恋人で、実はマルーシャとその娘ナージャ(ナージャ・ミハルコフ)をかくまっている張本人でした。
 実はコトフ大佐は1941年、第二次大戦の勃発時に奇跡的に強制収容所を脱出。妻子は既に死亡したと聴かされていたためか、今は懲罰部隊の一員となり、雪原の中、要塞作りに従事しています。そこに背後からドイツ軍の戦車が迫って来て。。
 一方、ナージャはアーセンティエフ大佐の言葉からまだ父親が生きていると確信。父コトフ大佐を捜すべく従軍看護婦に志願して戦場に赴きます。
 しかし、傷痍兵と共に赤十字の船に乗って海原を航行中、あろうことかドイツ軍の爆撃機に攻撃され、あえなく船は沈没。ナージャは海に投げ出されてしまいます。
 果たして、対ドイツ戦の真っただ中で翻弄されるコトフ親娘はどこかで再会できるのでしょうか?

 ミハルコフ監督は、若い世代にナチスドイツを前にした無力さと、今のロシアの生活がこれだけの犠牲の上に成り立っていることを伝えたかったと言われますが、ともかく戦争の熾烈さは生々しく、強烈なリアリズムが感じられます。
 一人、二人の仲間が犠牲になった仕返しに、やっきになって赤十字の船を沈めたり、静かな田舎の村人を皆殺しにしたりと、抵抗できない者を根こそぎ絶やそうとするドイツ軍の残虐さと執念が浮き彫りにされ、やり切れない気持ちに。
 この映画は三部作で、ミハルコフ監督は既に終章となる第三部に取りかかっているとか。観ているのが辛い第二部だったけど、やっぱり終章が気になります。でも、その前にまず名作の誉れ高い「太陽に灼かれて」を観るべきかも知れません。
by cheznono | 2011-04-23 23:32 | 映画