BIUTIFUL ビューティフル

b0041912_2228375.jpg「21グラム」や「バベル」等、群像劇の名手アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が、黒澤明監督の「生きる」にヒントを得て製作したという「Biutiful:ビューティフル」。欧州の厳しい現実の中で、余命宣告を受けながら子供たちのためにできる限りのことをする父親に扮したハビエル・バルデムの鬼気迫る演技が強烈な印象を残す作品です。

 バルセロナの片隅で、二人の子供との生活を維持するため、複数の仕事を掛け持ちしているウスバル(ハビエル・バルダム)。薬中毒でエキセントリックな別れた妻の面倒も見るウスバルは、少しでも多くの金を稼ぐために裏社会の怪しい仕事にも手を染めています。
 不法移民の労働を仲介し、彼らからも頼りにされているのに、親切心が裏目に出て痛ましい事故が起きてしまい、落込むウスバル。
 そんな折り、体調の不良を訴えたウスバルは、こともあろうに末期がんであることが判明、奈落の底に突き落とされるような気持ちに陥ります。子供はまだ小さく、成人するまでの費用をどうにかしなくては。ドラッグから足を洗えず情緒不安定な母親に任せるわけにはいかないし。
 ウスバルに残された時間はわずか2ヶ月。さまざまな思いが交差する中、子供たちに残すべくなるべく多くのお金を稼ぎ、彼らの記憶に中に父の思い出が生き続けることを願って、懸命に生きる努力を続けるウスバルに、幼い時に死に別れて記憶にない筈の父親が黙したまま語りかけるのでした。

 若者の失業率が30%に迫りつつあるスペイン。もっとも豊かな地域として知られるバルセロナも経済危機のあおりで生活苦が目立つという現実の中、さまざまな隙間仕事をつなぎながら、子供たちのために現金を稼ぐウスバルに、次から次に降り掛かる難題。そして、極めつけの余命宣告。
 いったい希望はどこにあるのか?と首を傾げる私をよそに、ウスバルは孤独と絶望を自身の中に封じ込めて、淡々と運命に対して行きます。
 子供に事実を悟られないように、平常を装いながら身を削って仕事に奔走するウスバルのしていることは不法でも、家族を守りたい一心のその姿がとてもストイック。特に子供を前に「自分のことを覚えておいてほしい」と囁くシーンには泣かされます。
 イニャリトゥ監督らしい痛切なリアリズムに圧倒され、ラストにわずかな希望を見て、シネマを後にしました。

 公式に夏入りしたフランスでは、この週末から恒例の映画祭りが始まり、最初の1本を定価で観れば、その後は各映画が3ユーロで観られるという嬉しいイベント中。以前は3日間だけだった期間も今や1週間になって、まさにシネマの大盤振る舞い。
 この春は、「アバター」のような大作がなかったこともあり、去年に比べて客足が11%も減ったというフランスの映画館、この1週間でいっきに挽回できると良いのですが。
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by cheznono | 2011-06-26 22:41 | 映画