人生、ここにあり!
2011年 08月 05日本国イタリアでは大ヒットしたという2008年作の「人生、ここにあり!」。だのに、なぜかフランスでは劇場公開されなかった作品です。
1983年のミラノ、労組の旗手だったネッロ(クラウディオ・ビジオ)ですが、その熱心さを煙たがられて左遷されてしまいます。ネッロの異動先は、閉鎖された精神病院の元患者達のための協同組合でした。
当時イタリアではその5年前に導入されたバザリア法によって精神病院の廃止に踏み切り、患者達を社会に溶け込ませようという試みが始まっていました。とはいえ、症状の程度や家庭の事情などから、元患者を全員家族の元に戻すわけにも行かず、自立することもできない患者達は、病院付属の協同組合で暮らし、単純な切手はりの仕事を与えられていたのです。
統合失調症や誇大妄想などの精神疾患を抱える個性的なメンバーを前に、ネッロは彼らを特別扱いせず、台頭に向き合おうとします。
「俺たちはイカレているけどバカじゃない」という彼らに生き甲斐を持たせるには、まずやりがいのある仕事を、と尽力したネッロの期待通り、元患者達は寄木細工のフローリングに才能を発揮。紆余曲折を経て、お店や住宅の床リフォームの仕事が舞い込んで来るように。
しかし、ネッロが協同組合付きの精神科医に懇願して、元患者達に処方されている強い薬の量を減らして貰った結果、これまで薬でおさえられていた彼らのリピドーが活発になり、やがて予期せぬ事態へとつながって行くのでした。
コメディが得意なジュリオ・マンフレドニア監督によるタブーの映画化だけあって、重いテーマを扱ってもユーモアがあちこちに。しかも、実話を元にした作品というから、イタリアの懐の深さを感じさせられます。
何より、ネッロの元患者達を尊重して社会復帰を後押しする姿勢が、生来の温かな人間性に裏打ちされていて、とても感心させられました。
今から、28年も前のイタリアが舞台なのに、あまり時代の違いが感じられず、イタリア現代社会を描いているかのよう。でもこの頃は日本のファッション業界も上り調子で、既に日本モード界はイタリアの上客だったのですね。
やればできる!偏見や思い込みに縛られず、前へ踏み出してみよう、というメッセージが心地良く伝わって来る作品です。