別離

b0041912_20224289.jpg ベルリン映画祭で金熊賞、米アカデミー賞で外国語映画賞など数々の映画賞を獲得したイラン映画「別離」。 イランと言えばアッバス・キアロスタミ監督の「友達のうちはどこ?」や「桜桃の味」の世界と思い込んでいたけれど、時代は着実に変わっていたのですね。
 パリ在住というファルハディ監督の話題作は、イランに対する私の先入観を180度変えてくれました。 

 テヘランに住む銀行員ナデル(ペイマン・モアディ)と妻のシミン(レイラ・ハタミ)が離婚調停を申し立てます。
 一人娘テルメーの教育ために海外移住の準備を進める妻に対して、夫はアルツハイマーの老父を置いてイランを出るわけには行かないと反対。夫婦は別れる決心をしたものの調停は却下され、とりあえず二人は別居することに。

 妻が出て行ったため、ナデルは父親の介護のために敬虔なイスラム教徒の女性ラジエー(サレー・バヤト)を雇います。幼い娘を連れてナデルの父親の世話に通うラジエーですが、この仕事を引き受けたことを無職の夫には内緒にしていました。

 ある日、帰宅したナデルと娘テルメーは、意識不明で転がっている父親を見つけます。ラジエーがある用事のため、無断で外出した間に起きた出来事でした。
 父親思いのナデルは激怒してラジエーを追い出そうとします。ともかく仕事の報酬を貰いたいと強く要求して食い下がるラジエーと口論になった末、ナデルが彼女を玄関から押し出すと、はずみで階段に倒れ込むラジエー。

 その夜、彼女は流産してしまいます。 
 ラジエー夫妻は、ナデルを胎児の殺人罪で訴えますが、ナデルはラジエーが妊娠していたことも知らなかったと主張。逆に父親の扱い方についてラジエーを告訴します。

 果たしてラジエーはなぜナデルの父親をベッドに縛りつけて外出したのか?ナデルは本当にラジエーの妊娠を知らずに彼女を手荒く押し出し転倒させたのか?
両者の思惑が絡む中、さまざまな疑問が交差する後半は、スリリングな展開に釘付けになりました。

 宗教の束縛が根強い中、中産階級の進歩的なシミンは、夫と別れてでも外国を目指し、信心深いラジエーは、稼ぎがない上、横暴で保守的な夫に隠れて、家族を養うため慣れない介護の仕事に通う。対照的とも言える二人。
驚嘆したのは彼女達イラン女性の強さです。離婚してまで海外で娘を育てようとするシミンはもちろんのこと、イスラム教の戒律に従順なラジエーも決して泣き寝入りせず、雇い主に対して真っ向から対立する姿に、イスラム女性の強い自己主張を見て圧倒されます。
加えて、格差社会、老人介護、離婚に伴う子供の親権など、社会的背景や宗教観の違いはあるものの、問題の普遍性にも目からうろこ。ブッシュ政権に《悪に枢軸》と名指しされたイランは、決して別世界ではなく、市民は先進国でも持て余している社会問題に直面しながら、より良い毎日を模索しているということがよく伝わって来る映画です。

 それにしても、民主党の某首相経験者はいったい何が目的でイラン訪問を強行したのでしょうね?
別離:公式サイト:http://www.betsuri.com/
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by cheznono | 2012-04-22 20:32 | 映画