星の旅人たち

b0041912_1285457.jpg ブログに書けないうちに終わってしまうかと思ったら、意外にロングランしている「星の旅人たち」。エミリオ・エステヴェスが実父マーティン・シーンのために制作したというこの作品、映画としての面白さは「サンジャックへの道」にかなわないけれど、リアリティ度は断然こちらに軍パイが。
 いつかサンチャゴ・デ・コンポステーラへ巡礼の旅に出てみたい人にはもちろん、聖地巡礼に参加した気分になりたいだけの人にもお勧めです。

カリフォルニアの眼科医トム(マーティン・シーン)は、40歳間近の一人息子ダニエル(エミリオ・エステヴェス)がピレネー山中で急死したという報せを受け、急いで渡仏します。
 ダニエルが南仏に旅立ったことも秘書から聞くまで知らなかったトムですが、息子がなぜサンチャゴ・デ・コンポステーラを目指したかったのか、自ら巡礼の道を辿ることで少しでもダニエルに近づこうと決心します。
思えば最後まで何を考えているのか理解できなかった息子。しかし、自分は彼に自身の価値観を押しつけていなかったか?父子の距離を縮める機会もないまま、あっけなく息子は逝ってしまった。

トムはダニエルのリュックを背負い、道すがらダニエルの遺灰を要所要所に置きながら、自戒の思いも込めて息子が歩こうとしていた800kmの道程を進みます。
 途中、人の良いオランダ人(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)、ヘビースモーカーでシニカルなカナダ女性(デボラ・カーラ・アンガー)、アイルランド人の旅行ライター(ジェームズ・ネスビット)に出会い、互いに共感したり、反発し合ったり、うんざりしたりしながらもやはり旅は道連れ、4人は共に聖地を目指すことに。
 昔も今も800kmを一月余りかけて徒歩で打破するのは過酷な旅。トムは所々で、亡き息子の穏やかな視線を感じながら、一歩一歩巡礼路を歩んで行くのでした。

 いつかわかり合えると思っていたダニエルのまさかの事故死に動揺し、胸の中で亡き息子と対話しながら一人静かに巡礼するつもりだったトムが、思わぬ旅の同伴者たちをうっとうしく感じながらも次第に彼らと固い連帯感を紡いで行く過程が自然で、無理がありません。
 取り立ててドラマチックなことは何も起こらず、巡礼途中のエピソードも実際にありそうなことばかりで、自分がそこにいても違和感なく溶け込めそうな現実感が心地良いです。
 4人がついに大聖堂にたどり着いた時の達成感も実に爽やか。長い巡礼で、身体も心も浄化されたような気分を観客にもお裾分けしてもらえる感じで、気持ち良く家路に着くことができました。

 「アーティスト」でハリウッドを湧かしたジャン・デュジャルダンが企画して、ジル・ルルーシュと主演した浮気者の映画「プレイヤー(les infideles)」。はて、日本で受けるかなあ?と思ってたら、やっぱりあっさり終わってしまいましたね。確かにフランスではヒットしたし、面白い映画ではあるけれど、ちょっとやり過ぎのような。
 ともあれ、この10年ノリに乗ってるジャン・デュジャルダン、才能あふれる彼の次回作に期待したいです。 
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by cheznono | 2012-07-15 01:39 | 映画