リンカーン

b0041912_2320962.jpg 泥沼化した南北戦争の中で再選されたリンカーン大統領の最後の数ヶ月間を公私共に描いたスピルバーグ監督の「リンカーン」。ダニエル・デイ=ルイスがまるでリンカーンの生まれ変わりのように難役を自分の物にしているので、例え歴史的背景がおぼろげでも充分見応えがありました。

 貧しい農民の息子がほぼ独学で弁護士資格を取り、やがて国政に身を投じて、ついには大統領に選ばれて、人々の信望を集めたエイブラハム・リンカーン。やや美化されているのは否めないものの、当時から合衆国にはこれだけの人物を排出する土壌があったのかと感心させられます。
 大変な犠牲を払って移民達が大国を作り上げる過程でこういう人物が傑出することが、アメリカ民主主義を築き上げて行ったのですね。フランスはナポレオン3世による第二帝政の時代。日本では新撰組が活躍し、幕府が長州征伐に乗り出した時代です。

 リンカーンが奴隷解放宣言をしたものの、南部では奴隷制が続き、南北戦争も4年目に突入した1865年。北軍の勝利が近い中、大統領は戦争終結の前にまず連邦議会で奴隷制度の廃止を定めた憲法修正法案13条の可決を目指します。
 しかし、民主党を初めお膝元の共和党内にも反対派が大勢いて、修正案成立はいばらの道。

 一方、家庭内では子煩悩なリンカーンですが、彼の良き理解者ながら、息子を病死で失った傷から情緒不安定となった妻メアリ(サリー・フィールド)からヒステリックに攻撃されることもしばしばです。
 反対派の懐柔策に疲れ、家でも孤独な大統領は、常に自分の感情を抑制しているかのようですが、修正案を通すためには独裁者のような一面をのぞかせることも。。
 そして、いよいよ連邦議会の朝が来ます。

 奴隷制の理不尽さを「ジャンゴ」(映画としては悪夢のようでした) で、「声をかくす人」(すごく見応えがあってお勧めです)でリンカーン暗殺事件とその後の裁判を観てから間もなかったので、「リンカーン」にも入り込み易かったですが、やはり南北戦争について予習かおさらいしておくとより楽しめることでしょう。

「息子を亡くした時、悲しみで胸が張り裂けそうだったのに、あなたは私と同じようには悲しまなかった」と責める妻メアリに「自分も全く同じ思いだった、君があんまり泣いて騒ぐから、僕まで一緒に泣き叫べなかっただけだ」とつぶやくリンカーン。
「君が悲しみに押しつぶされるか、悲しみを乗り越えて前に進むかはあくまでも君次第だよ」と一見突き放すかのような助言がこだまのように今も耳に響きます。
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by cheznono | 2013-05-20 23:32 | 映画