ある愛へと続く旅

b0041912_23572057.jpg ずっと気になっていた映画「ある愛へと続く旅」。ボスニア・ヘルツェゴビア戦争に翻弄されることになったイタリア人とアメリカ人夫婦のドラマは、《愛の深さ》よりもむしろ人間のエゴイズムとその結果がもたらした罪悪感の物語に感じられました。

 原作はセルジオ・カステリット監督の妻で脚本も担当したマルガレート・マッツアンティーニ。イタリアはもちろん、世界的に売れた本だそうです。恐らく小説の方は映画が描き切れなかった心理描写などが細やかで、もっと感動的なのではないでしょうか?

 ローマで16歳の息子ピエトロ(ピエトロ・カステリット)と3人目の夫と暮らすジェンマ(ペネロペ・クルース)は、サラエボ留学時代の友人ゴイコ(アドナン・ハスコビッチ)に呼ばれ、息子を連れて16年ぶりにサラエボを再訪。謎の死を遂げた前夫ディエゴの写真展に向かいます。

 80年代後半、イタリアのブルジョワ娘ジェンマはサラエボでゴイコの友達でアメリカ人のディエゴ(エミール・ハーシュ)と出会い、恋に落ちます。
 その後、ローマで再会した二人はめでたく結婚。カメラマンとして活躍するディエゴと幸せな日々を送るジェンマでしたが、不妊症であることがわかり苦悩します。
是が非でも愛するディエゴの子供がほしいジェンマは代理母を探すことに。
 不妊治療を受けるため政情不安なサラエボに戻った二人は、ゴイコに代理母志望の女性アスカを紹介されます。内戦で人工授精が難しくなったため、夫とアスカがベッドを共にするようお膳立てするジェンマでしたが、運命のその日からディエゴの様子に変化が。。
 イタリア人以上に陽気でお気楽極楽な若者だったディエゴが、妻の子づくりへの執念に付き合う過程で変貌して行く様子は印象的でした。

 アンジェリーナ・ジョリーの「最愛の大地」を観ていたお陰で、背景がよくわかって助かりました。ローマに戻ったディエゴが、パーティを楽しむイタリア人仲間と内戦に苦しむサラエボ市民との落差に後ろめたさを感じて、再びサラエボに旅立ったけれど、実はもっと重い罪悪感に苦しんでいた、というポイントが今ひとつぼやけて見えるのが惜しいです。
一方でジェンマの抱える後ろめたさは、はっきりくっきり描かれます。
 
 内戦という民族のエゴに、お金で子供を得ようとする個人のエゴが重なった結果であっても、この世に生を得て大切に育くまれた命のまぶしさが、全てを水に流さんばかりの力を持つのだと、ピエトロ少年の澄んだ眼が力強く語っているよう。
 それでも、私は複雑な思いでエンドロールを見送りました。

ある愛へと続く旅:公式サイト:http://www.aru-ai.com
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by cheznono | 2013-12-09 23:51 | 映画