ルパン

b0041912_121895.jpg 中学生の頃、夢中になって読み、どっぷり空想の世界に浸りこんだ程、19世紀のフランスの怪盗紳士アルセーヌ・ルパンは私のヒーローでした。だから、ロマン・デュリスが主演と聞いた時にはえ?ルパンのイメージが、、って思ったけどこの映画はすごく楽しみにしていました。
 幼い頃、尊敬する父親から盗賊の手ほどきを受けたルパンが、本格的な泥棒として成長し、幼なじみの従妹クラリスに慕われながら、悪女カリオストロ伯爵夫人の怪しい魅力にのめりこんで、フランス王家の財宝が眠る場所を探すことになるというストーリー。「カリオストロ伯爵夫人」をベースに「奇岩城」や「813」のエピソードを織り込んだ新解釈のルパンということらしいですが、もう我が尊敬するモーリス・ルブランの原作とは全然別物という感じ。
 大ヒットした「ジョボーダンの獣」のように、ハリウッド手法をふんだんに取り入れた時代劇だけどフランス映画らしさを失っていない作品ではあるので、原作のイメージと完全に切り離せばそれなりに楽しめる映画でした。ベルエポックの時代のパリやノルマンディの壮大な自然が素晴らしいし、フランス在住の英国女優クリスティン=スコット・トーマスが演じる妖艶な毒婦カリオストロ夫人も見ものです。でも、物語はかなり支離滅裂。何よりもルパンが血を流すことなく、貴族や金持ちだけから命をかけて盗みを働く意義が薄まってしまった点が不満です。
 サッチャー元首相が大いに褒め称えた英国のヴィクトリア時代同様、ベルエポックは一部の恵まれた人達にとっては確かに麗しき時代だったけれど、その陰で貧富の差は激しく、富の偏りがさまざまな社会的矛盾や問題を生み出していた時代であり、アルセーヌ・ルパンはそういう風潮に反発し、命をかけ情熱を持って抵抗した盗賊だったのに、この映画はそうした側面を全く描いていません。エンターテイメントだけで終わらせてほしくなかったのに、、残念です。
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by cheznono | 2005-09-21 01:45 | 映画