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ピカソの陶芸の町

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 私が青くて堅いオリーブの実を買ったヴァロリス・ゴルフ・ジュアンは、アンティーブとカンヌの間にある小さな町で、2000年もの伝統がある陶芸の町としてパブロ・ピカソやジャン・マレを惹き付けたことで知られています。
 第2次大戦後、愛人のフランソワ・ジローと共にアンティーブのグリマルディ城からヴァロリスにやって来たピカソは、ヴァロリス焼きに魅せられ、陶芸への興味が湧いて、写真のヴァロリス城にアトリエを構えます。アンティーブには半年しか滞在しなかったのに、この町では60歳半ばからの7年間を過ごし、陶芸作品はもちろん、数々の絵や彫刻を制作しました。ヴァロリス城は中世にレランス諸島の修道士によって修道院として建てられたもので、今はピカソ美術館と陶芸美術館、アルベルト・マニェリ美術館と各階が3つの美術館として使われ、隣のロマネスク様式の礼拝堂にはピカソの「戦争」と「平和」が壁いっぱいに描かれています。
 ヴァロリス焼きは素朴な感じの焼き物で、温かみのある色使いと艶のある釉薬に特長があります。今はたくさんの陶芸のお土産ものやさんが軒を並べる一見なんてことない町ですが、19世紀にはジョルジュ・サンドなどの文化人が次々にヴァロリスに立ち寄り、戦後は陶芸を始めたピカソに影響を受けて、この町に引っ越して来た陶芸家やアーティストも多いとか。
 ヴァロリスのもう一つの特産は蒸留水を採るオレンジの花やダイダイの花。特にダイダイの栽培は南仏でもここだけだそうです。オレンジの木やオリーブに囲まれ、目の前は地中海というこの町を離れた後も、ピカソはヴァロリスで最後の夫人ジャクリーンと極秘で結婚式を挙げています。当時、ピカソは80歳。その後、20世紀の後半にはコクトーに愛された俳優で画家、彫刻家でもあったジャン・マレもこの町で晩年を過ごし、ここの古い墓地に眠っています。
by cheznono | 2006-01-26 15:21 | コート・ダジュール散歩