メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

b0041912_23184150.jpg フランスのシネマは毎週プログラムが変わるので、うかうかしていると佳作でもあっという間に終わってしまいます。ハリウッド映画の大作や日本で公開予定の「戦場のアリア」のような大ヒット作は1ヶ月以上上映されるけれど、地味な作品だと一週間で消えてしまうこともしばしば。だから、水曜日ごとに発行される各映画館のプログラムを載せたパンフは、映画ファンには必需品です。
 去年の秋、カンヌ映画祭で好評だった「フリーゾーン」という映画もすぐに終りそうというので、ニースでお気に入りの映画館に駆けつけました。何とか間に合ったと思ったら、切符売り場のマダムが「あら、もう30分も前に始まってるわよ。《3度の埋葬》にしたら?」と言うではありませんか。「えっそんな筈ない、お宅のプログラムに今からって出てるから走って来たのに!?」と唖然とする私。マダムはあっさりと、「あ、そのプログラム間違ってるのよ。《フリーゾーン》は時間変わったの。《3度の埋葬》にしなさいよ。」そんなあ、なんで間違った上映プログラムを平気で配るのよ?今を逃したらもう《フリーゾーン》は観られそうにないのに。
 でもせっかく来たんだからまあその《3度の埋葬》とやらを観るかと気を取り直し、それって面白いの?と聞くと、マダムは顔を輝かして「すごく良い作品よ!」と自信たっぷり。それでも半信半疑で観た「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」はとても新鮮で確かな見応えのあるに内容でした。後から知りましたがカンヌでは「フリーゾーン」よりもこちらの方が評価が高かったんですね。
 メキシコからの不法移民が絶えないテキサス国境で、トミー・リー・ジョーンズ演じるベテランカウボーイ:ピートが親しかったメキシコ人メルキアデスの不慮の死後、「もしも自分が死んだら、故郷のヒメネスに葬ると約束してくれ」という生前の彼の願いをかなえるため、馬に遺体を乗せて険しい国境を越える遥かな旅に出ます。カウボーイだったメルキアデスを間違えて射殺してしまった若い国境警備員のマイクを無理やりお供に従えて、2頭の馬と共に砂漠や山の中をひたすらヒメネスを目指す過酷な旅。不法移民の射殺を秘密裏に片付けたい国境警備隊の追っ手が迫る中、奇妙な一行は何とかメキシコ側に抜けるのですが。。
 メルキアデスの射殺は不幸な事故だったと言い訳に終始するマイクが、無茶苦茶に近い国境越えの旅でぼろぼろになった挙句、犯した罪の重さを認識し、贖罪の意味でこの過酷な旅につき合わせたピートとの間に不思議な友情が芽生えて行く過程が感動的です。
 ニースで知り合ったフレンチメキシカンの男の子が、ある日青い顔をしてお腹を押さえ気分が悪そうなので心配していると、「僕がもし死んだら、遺体は絶対メキシコに戻してね。」って言うので驚いたことがあります。フランスは彼のお父さんの国ですが、決してフランスには眠りたくない、必ず育った国メキシコに戻りたいからお願いだよって言う彼はまだ20歳。そんなことを意識してるなんて何だか不思議でしたが、この映画を観て、あの時の彼の気持ちが少しわかったような気になりました。
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by cheznono | 2006-03-18 01:26 | 映画