ブロークバック・マウンテン

b0041912_23594295.jpg 公開を楽しみにしていたアン・リー監督の「ブロークバック・マウンテン」、本当に心揺さぶられる愛の物語で、涙が止まらなくなりそうで焦ったほど胸に染み入る作品でした。
 今から43年前の夏、アメリカ西部ワイオミング州のブロークバック・マウンテンで、放牧された羊の群れの面倒を見るために臨時雇いされた20歳の青年イニスとジャック。壮大な山の自然の中で厳しいキャンプ生活を始めた二人は対照的な性格で、イニスがむっつりと無口なカウボーイなのに対して、ジャックは明るくて積極的なロデオ乗り。初対面の二人が助け合いながら過酷な山での労働をするうちに友情を越えた関係に陥ります。二人の関係が始まる辺りはちょっと唐突で、当人達にとっても当惑する成り行きでした。特に婚約者のいるイニスは罪悪感に苛まれながら、それでも二人は楽しい夏を過ごします。数週間後、山での仕事を終えて町に戻った二人は、再会の約束もせずに一見淡々と別れて行きます。
 イニスは牧場に勤めて婚約者のアルマと結婚し二人の娘に恵まれ、ロデオ乗りのジャックは遠く南部のテキサスで金持ちの娘と結婚します。山でのキャンプから4年後、イニスは突然ジャックから会いに行くという知らせを受け取り、二人は再会したとたんにかつての情熱を蘇らせます。しかし、保守的な西部の田舎で同性愛はご法度の時代、しかもそれぞれに家庭のある二人には年に数回の逢瀬しか許されません。不自由な関係を不満に思いながらもジャックはイニスに会いにテキサスから通い続け、二人は思い出のブロークバック・マウンテンで数日のキャンプをしては、つかの間の逢瀬に甘んじます。こうした関係は20年近くに渡って続けられるのですが。。
 イニスには子供の頃、近所で牧場を営んでいた男同士のカップルの一人が強い偏見の元に殴り殺され、道端に捨てられているのを目撃したという暗い記憶があり、そのトラウマが後半の悲劇に繋がって行くかのように語られるシーンがあります。今でこそ同性愛カップルの存在が目立つフランスも80年代位までは差別が強くて、ミシェル・ポルナレフを初め、アメリカへ移住したゲイの人が多いと聞いていましたが、そのアメリカでも西部の山合いではとても認められる関係ではなかったのですね。
 普段から自分の感情を表に表さないイニスが時折見せるジャックへのこらえ切れない想いが切なくて、観ている者の気持ちを根底から揺さぶります。アルマを好きだったイニスがジャックと知り合ったことから道ならぬ情熱に捉えられ、強い愛情と罪悪感との間で苦悩する難しい役をヒース・レジャーが見事に演じ切っていて、感動的でした。恋愛は、一度恋に落ちてしまえば例え許されない関係でも自分たちの力ではどうしようもできないし、その煉獄に陥った者の苦しみと葛藤を、ドラマチックな出来事などを交えずに二人の日常を描く中で、見事に映像化したスタッフとキャストには脱帽するばかり。誰の目も気にしないで思いっきり泣ける所でもう一度観たい映画だと思っています。
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by cheznono | 2006-04-02 01:32 | 映画