魔のカンヌ行きバス

b0041912_0435944.jpg
 今年からニース‐カンヌ間がバスだとわずか1.30ユーロで行けるようになったので、5月の映画祭の後も、この安い路線バスに乗って何度かカンヌまで往復しました。路線バスは基本的に乗り降りする人がいればどのバス停にも停まるため、カンヌまでえらく時間がかかるのが難点ですが、海岸沿いのドライブは心地よいし、何しろ運賃が安いので背に腹は変えられないという感じでよく利用したものです。
 ある夕方、「イタリア式恋愛方法」という映画を観た後に友達と別れ、郊外まで帰ろうとした時、ギャラリーラファイエットの前のバス停に停まっていたカンヌ行きバスに飛び乗ったことがあります。ニースの市内バスに乗るべきだったのですが、滞在先に帰るにはどのバスに乗ってもどうせ途中で乗り換えなくてはいけないので、長距離バスでも別にかまわないやって思って何気に乗ってしまったんです。
 カンヌ行きバスはいつものようにバス停ごとに停まってはお客を乗せ、プロムナード・デザングレに出て地中海沿いを走りだしたので、そろそろ降りなくてはと降車用ボタンを押しました。ところが、バス停に停車したもののバスは、前方の乗車用ドアを開けてお客を乗せたとたんにまた発進してしまい、降車用のドアの前でさあ降りるぞと待っていた私はアレ!?っていう感じ。最後部のお客さんが降りそこなった私のために「運転手さん、ドア開けてあげて。」って叫んでくれましたが、ドライバーは、「だめだめ、ドアは開けられないよ。」と言って、海岸通りを突っ走っています。
 驚いた私はツツっと前の運転席まで行って、「すみませんが、その辺のバス停で降ろしてもらえますか?」と頼みました。ところが、ドライバーはブスっとした表情で、「あ、俺にはニース市内でお客を降ろす権利はないよ。」と冷たく言い放つではありませんか。「ええっ、じゃあどこでなら降ろしてもらえるんですか?」既に夜の8時だから今からカンヌに行ったら、もう今日中に帰って来れないじゃないと青くなった私を尻目に、バスはどんどん走り続けます。その時点でかなり頭に来てたけど、とにかくバスを降りたかった私は、「お願いです、うちに帰らなくちゃいけないので、降ろしてください。」と自分としては丁重に頼んでいるのに、ドライバーは無表情のまま、「まあ、隣町で降りるんだな。」と言うばかり。冗談じゃない、隣町と言ってもニース・コートダジュール空港のずっと先なので、夜の9時近くに着いたら、帰りのバスがあるとは思えない。タクシー代はいくらになるか計り知れないし、誰かに迎えに来てもらうのも申し訳ないし。ぐるぐるとイヤな想像が頭に浮び始めたので、もう恥も外聞もなく、ほぼ満員のバスの乗客が注目している中で、「お願い、とにかく降ろして!降ろして!降ろして!」とドライバーの肩越しで呪文のように唱え始めました。それでも彼は「これはカンヌのバスだから、ニースで客を降ろす権利はないの。俺が決めたルールじゃなくて、会社が決めた規則だから仕方ないね。」だって。何言ってるのよ。普段、規則なんて全然守らない民族の癖に、人が困っている時に限ってなんて意地悪なヤツ。もう怒り心頭に達していましたが、このままずっと空港の向こうまで乗り続けるわけにはいかないので、「降ろして下さい!」と言い続けました。つづく 
[PR]
by cheznono | 2006-12-16 01:41 | 不思議の国フランス