あるスキャンダルの覚え書き

b0041912_0225071.jpg フランスでも評価の高かった「あるスキャンダルの覚え書き」ですが、個人的にはブッカー賞の最終候補にまでなったというゾイ・ヘラーの原作を先に読みたかったです。イギリス人お得意の心理スリラーは、映像で見るよりも小説を読む方が、展開を楽しめる方なんですね。
 とはいえ、迫力あるジョディ・デンチと、ケイト・ブランシェットの攻防は、見る者をうならせるうまさでした。特にケイト・ブランシェットは、「バブル」での役柄と日常生活に満足していない二児の母という点では共通しているのに、いつもの強気な女性役とは打って変わり、40歳を過ぎているとは思えない美貌のお嬢さん教師が合わせ持つ二面性を演じきっていたので、見とれてしまいました。
 定年間際の独身教師バーバラは、愛猫だけが友達の孤独な生活を送っていて、厳格で嫌味のある言動のため、職場でもうとまれています。そこへ繊細なお嬢さん主婦タイプのシーバが転任して来て、自分の意にかなう若い女性を密かに捜し求めていたバーバラの関心を引き付けます。
 20歳年上の夫と二人の子供に恵まれた中産階級のシーバは、人を疑うことを知らないようなナイーブな面を持ち、でも一方で温和な生活と自分自身に不満を抱いていて、ベテランの同僚のバーバラに信頼を抱き始めます。
 バーバラはシーバを観察しては、妄想も含めて毎日日記にシーバのことを綴りますが、ある時、校内でシーバと彼女の15歳の教え子との情事を目撃し、その事実を盾にシーバを自分の支配下に置こうと決心するのですが。。
 原作者がヒントにしたという実際にアメリカで裁判沙汰になった既婚の女性教師と中学生との交際は、二人の間に子供までもうけたため、より複雑な様相を呈していたそうですが、一見、何不自由なく幸せに見えるシーバの心の隙間にストンと入り込んだ15歳の熱情や、定年を迎えたら更に孤独な老後が待っているバーバラの偏執的な感情は、今の欧米社会では決して人ごとではないところが、この作品のテーマでもあり、怖いところだと思います。
 想像を超えたスチュエーションのようで、実は誰もが巻き込まれ得る事件だから、原作も映画もヒットしたのでしょうし、主演の二人は身近にいそうな人物の、互いに自己中心的な心の動きをみごとに表現していましたが、観終わった後味は良くありませんでした。 
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by cheznono | 2007-06-11 01:40 | 映画