ボルベール<帰郷>

b0041912_0311346.jpg 去年のカンヌ映画祭で主だった出演女優6人全員が女優賞を獲得したペドロ・アルモドバル監督の「ボルベール」、たくましい女性達によるスペインの情熱が伝わってくる映画ですが、なんとも盛りだくさんなストーリーで、まるでTVのソープオペラのようだったねと友達と笑い合うくらいでした。
 ペネローペ・クルースの演じるライムンダは、娘とぐうたらな夫のために女で一つで家庭を支えていますが、失業中の義父から関係を迫られた娘が義父を殺めてしまい、母ライムンダはその始末に奔走することに。とはいえ、夫の遺体を隠した休業中のレストランで、その場のノリで映画撮影の一行に料理を出して稼ぐたくましさ。亡き母の面影を偲びながらペネローペの熱唱する「ボルベール」は圧巻です。
 若い頃火事で両親を亡くしたライムンダとその姉ですが、火事の犠牲になった筈の母親がどうも生きているらしいと知り、かつて母親に反抗的だったライムンダは動揺します。さまざまなエピソードが折り重なって、昔の火事の原因など隠された過去が浮き彫りにされる過程は面白く、次々に登場する個性的な女性陣の存在感も見ものですが、これでもかこれでもかという事件のてんこ盛りはいかがなものでしょうか。
 昨年のカンヌ映画祭最終選考の際に興味深かったのは、この映画に対するフランス人の期待度です。この時フランスメディアはどこも「ボルベール」のパルムドール受賞を予想していて、最終選考の会場でもアルモドバル監督の顔ばかり映していました。
 ところが、ウォン・カーウァイ審査委員長以下、満場一致で選んだ作品はケン・ローチの「麦の穂をゆらす風」。この時のフランスメディアの落胆ぶりは予想外でしたし、当日のTVも翌日の新聞もパルムドールを獲得した英国のケン・ローチを隅に追いやって、アルモドバル監督と6人の女優賞ばかり特集していました。
 確かに「トーク・トウ・ハー」はフランスでも超ロングランの大ヒットで、私も大好きな作品でしたけど、「バッド・エデュケーション」はその特殊性からか、前評判ほど受けなかったのに、この「ボルベール」への偏りはどういうわけでしょう?やっぱり、イギリスは常にライバルとして意識している存在だけど、昔からピレネー越えをしては流入して来たスペイン人への親近感は、私たち外国人が想像する以上に強いのかも知れません。英国やドイツは常に対等なライバルで、スペインは身近な隣人、だけど、同じ隣国でもイタリアは今ひとつ信用できない、という本音がいつもちらつくフランス社会。大所帯となったEUの中で、この先も本音の部分は変わらずに行くのか、その辺が興味深いところです。 
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by cheznono | 2007-07-04 01:27 | 映画