題名のない子守唄

b0041912_0242926.jpg ジョゼッペ・トルナトーレ監督の久々の新作、「題名のない子守唄(原題は見知らぬ女)」は、思わずブラボー!イタリア映画、と言いたくなるような人間ドラマでした。でも、その裏には西欧社会の恐ろしい闇が隠されていて、なんともやるせない気持ちになる作品でもあります。
 北イタリアの端、トリエステにやって来た謎めいた女性イレーナ。部屋を借りて、その向かいの高級アパルトマンに仕事を探しに出かけます。何か明確な目的がある様子で、彼女は策を講じて、狙いを定めたアダケル家の家政婦に何とか納まります。
 ビジネスマンの夫に、金細工のアーティストの妻という裕福なアダケル家で、忙しい両親に代わって、難病を抱える幼いテアの子守に没頭するイレーナ。でも、なぜか彼女はマフィアのような男に追われていて、ある時、瀕死の重傷を負ってしまいます。
 実はイレーナは、かつてウクライナの売春組織で働いていた経験があって、その過去がフラッシュバックのように、細かいカットで挿入されながら、サスペンス風にドラマが進んで行くので、冒頭からぐんぐん引き込まれて行きました。
 イレーナがなぜはるばるトリエステにやって来たか、なぜアダケル家の仕事につきたかったかはだんだんにわかって来ますが、イレーナが断ち切りたかった辛い過去、そして、当時の悲惨な生活の中で彼女が見つけた唯一のきらめきとその顛末が、ドラマに厚みを出しています。 
 「ニューシネマ・パラダイス」や「マレーナ」など今までのトルナトーレ監督の作品とは全く違うタッチの映画なので意外性もあるし、ヨーロッパの裏社会で行われている震撼とするような取引きが大きな伏線となっている所がミソではないでしょうか。事実を元にした書いた脚本かどうかは不明ですが、充分にありえそうな退廃的な背景と、その中でわが身を犠牲にしながら、つかの間の真実の愛を見つけたヒロインに胸が熱くなる作品です。 
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by cheznono | 2007-10-09 01:12 | 映画