エンジェル

b0041912_0222282.jpg「まぼろし」や「8人の女」、「僕を葬る」のフランソワ・オゾン監督による、舞台を100年前の英国に移した大メロドラマ「エンジェル」。夢見る少女時代からの空想を小説にして、大成功した若き作家の生涯を描いた正統派のドラマで、きれいな映像と古き良き時代の大げさな身振りなどが楽しめる作品です。
 でも、オゾン監督が惚れ込んだというヒロイン、エンジェルのキャラクターや生き方に共感できないと、どっぷりこの作品の中につかるのは難いかも知れません。
 つましい労働者階級に生まれたエンジェルは、近所のマナーハウス:パラダイスに憧れ、上流者階級の華やかな生活を夢想しては、いずれは自分もと夢を膨らませる文学少女でした。ある時、実体験なしに自分の空想だけで書き上げたロマン小説が、ロンドンの編集者に認められ、彼女は一躍若き美人作家として脚光を浴びます。
 あっという間に流行作家として大成功を収めたエンジェル。破産して売りに出されたパラダイス邸を買い取って母親と移り住み、早くも子供の頃の夢を実現させます。その頃出会った、上流階級出身の売れない画家エスメに強く惹かれた彼女は、ハンサムなエスメに積極的にアプローチし、自信を持って彼にプロポーズ、二人はパラダイス邸で新婚生活を始めます。
 作家としての成功と憧れのお屋敷で愛する人との暮らし。若くして夢を全てかなえたように見えたエンジェルですが、それは砂上の楼閣であることに気づきませんでした。
 若い女性独特の根拠のない自信をみなぎらせたエンジェルのすごい所は、想像力のみで20そこそこで女流作家として一斉を風靡し、憧れのマナーハウスと愛する夫を手に入れて、自分の理想を実現して見せたことでしょう。しかし、経験と人間観察に欠けるエンジェルは、自分の描いた夢の世界に逃避して、現実を見据えることができませんでした。
 オゾン監督は、ロマン小説家として時流に乗り、ちやほやされるエンジェルと、なかなか大衆には理解されない絵を描き続けるエスメとの芸術の質の違いも対比させています。
 エンジェルのように大衆受けして売れ、成功を見て、やがて時代と共に忘れられてゆくのと、存命中は認められず暮らしに困るほどでも、後世にその芸術性の高さを評価されて歴史に残るのと、アーティストとしては、どちらが幸せか?凡人の私は、後で忘れられても、やっぱり生きているうちに光を浴びたいと思ってしまいますが、せっかく成功して全てを手にしても、自分の実生活を幸福に保つのは意外に難しいものなのでしょうね。
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by cheznono | 2007-12-22 00:30 | 映画