やわらかい手

b0041912_0591287.jpg 年末から気になっていた映画「やわらかい手」を先日やっと観て来ました。かつてローリング・ストーンズのミューズだったというマリアンヌ・フェイスフルの圧倒的にリアルな演技が素晴らしい作品でした。若い頃の写真とは全く別人に見えるマリアンヌ・フェイスフルですが、「マリー・アントワネット」の母親役や「パリ、ジュテーム」にも出ていたんですね。
 ロンドン郊外の小さな町に暮らす主婦マギー。愛する一人息子の幼い子供が難病に苦しんでいるため、亡夫と暮らした家も売り払い、今は小さいテラスハウスでつましい毎日を送っています。
 マギーも息子夫婦も持ち金を全て孫の治療費に使って来たけれど、かわいい孫の容態は悪化するばかり。1ヶ月以内にオーストラリアへ渡れば、手術で救われる可能性が高いと医者に勧められたものの、多額の渡行滞在費用を工面できません。
 50代後半の専業主婦マギーは、職探しをしても断られるばかり。ふと見かけたホステス募集に興味を持つのですが、そこはソーホーの風俗店でした。同世代のオーナーに仕事内容の説明を受けて絶句するマギー。でも、この話を受ければ高給が貰え、孫一家を治療のためにオーストラリアに送り出すことができるかも知れません。
 日に日に衰えてゆく孫の様子に焦りつつ、覚悟を決めたマギーが、壁にあいた穴のこちら側で、男性客たちの顔を見ずに手だけで奉仕する仕事を始めると、意外にも瞬く間に彼女は売れっ子となってしまいます。この分なら、孫に必要な費用を捻出できる。自信を持ったマギーは列をなす客を次々にこなして行くのですが、不器用な彼女は、近所の主婦仲間や息子にロンドンで見つけた仕事についてテキトーにごまかして説明することができません。
 前借した大金を渡航費用にと渡され、喜んだ息子夫婦でしたが、金の出所を怪しんだ息子に風俗店で働いていることがばれてしまい、マギーは窮地に陥ります。
 ラッキーホールといわれるこの手の風俗は、日本が発祥の地だそうで、ソーホーのオーナーも日本からヒントを得たと言ってましたが、今は欧州で人気で、日本ではすたれているらしいですね。
 愛するものの命がお金次第で助かると宣告された時、低所得者には選択の余地が殆どないわけで、マギーの逡巡と潔さをマリアンヌ・フェイスフルがすごく自然に表現しています。マギーが親しくしていた主婦仲間たちが、彼女の仕事について知った時の反応も、対面を重んじるイギリス社会の典型的な一面をリアリティいっぱいに描いていて、面白かったです。
 全体に現実感のある描写の中で、ラストの展開はやっぱり映画的な感じがしましたが、でも地味に生きてきたマギーが見つけた思いも寄らない勇気と自信と、そして新たなスタートに応援の拍手を送りたくなるような作品でした。 
[PR]
by cheznono | 2008-01-18 02:03 | 映画