ブロッコリー騒動
2008年 01月 29日その時は友人が紹介してくれたマダムが一人で住むアパルトマンに、ホームステイというか貸し部屋のような感じで滞在していて、キッチンはマダムとコロンビア人の女医さんの卵と共同で使っていました。
その日、他の二人が外出していたので、悠々とブロッコリーや赤ピーマンをカットして、スープの用意をしていたところ、運悪くマダムが帰宅して、キッチンに入って来たとたんに、私の手元を見て叫んだのです。
「ちょっと!まさかあなた、私のうちでカリフラワーを料理するんじゃないわよね?」
「カリフラワー?これ、ブロッコリーですけど。」とつぶやいた私の言葉を全く無視して、マダムは騒ぎ立てます。
「イヤだわカリフラワーなんて!うちの家族はね、カリフラワーの匂いが耐えられないのよ。カリフラワーを煮る時ってとんでもない悪臭が出るのを知ってるの?」
目の前の鍋のお湯がもう煮立っているのに、カットしたブロッコリーを見つめ一瞬固まってしまった私ですが、「これ、ブロッコリーで、茹でても別に大した匂いはしないと思いますけど?」と冷めた声で返しました。
しかし、マダムは、ブロッコリーもカリフラワーと同じようなものだと主張し、「子供の頃、カリフラワーを茹でる時はね、家中の窓を開け放して、家族みんながキッチンから逃げ出したくらいなのよ。それをここで料理されるとは、全くねえ。」といかにも嫌そう。因みに彼女のキッチンには海が少し見えるテラスが付いていて、大きなサッシはいつも開け放してありました。
マダムはそれまでも、自分の思い込みや気に入らないことに関して、フランス女性にありがちな大げさな騒ぎ方をする傾向があったのですが、カリフラワーとブロッコリーでは色も食感も味も全然違うし、今ここでブロッコリーを諦めたら、この先3ヶ月の滞在中、私は二度とブロッコリーを調理できなくなってしまいそうです。
沸騰するお湯の中にブロッコリーを入れるべきがどうか迷い、とまどっていた私がふと気がつくと、キッチンの入り口で仁王立ちするマダムの手に、ピンクのルームスプレイが握られているではないですか。それ、もしかして、普段はトイレに置いている甘ったるい香りの消臭スプレイでは?つづく