ぜんぶ、フィデルのせい

b0041912_025522.jpg 時は1970年。9歳のアンナは、スペインの貴族出身で弁護士のパパと雑誌マリ・クレールの記者のママと弟のフランソワと共に、パリで恵まれた少女時代を送っていました。
 ところが、フランコ政権に反対して、夫婦で反政府活動をしていた伯父さんが亡くなり、その妻子がアンナのパパを頼ってフランスに亡命して来たから大変。今まで自分達子供に注がれていたパパの愛情と関心が恵まれない他者、つまり社会的な活動に向き始め、何だかアンナは釈然としません。
 おまけに両親は、アンナと弟の面倒をキューバ人のメイドに任せ、民主主義への道を歩みだそうとしていた南米チリに旅立ってしまいます。やっと帰国したパパとママでしたが、すっかりチリの政治活動に影響されて、今や共産主義に傾倒。フィデル・カストロに批判的なメイドを解雇して、一家は庭付き一戸建ての家からつましいアパルトマンに越してしまいます。
 ボルドーのブルジョワ出身のママが選んだ名門のカトリック女子小学校に通うアンナは、今度はママから一般校に転校を迫られますが、キリスト教教理の授業を欠席するという条件で、何とか転校せずに済むありさま。
 今までのように豊かな生活に甘んじることを恥とし、民主化にもがくチリへの援助や、恵まれない女性たちの支援をすることに熱中するパパとママ。でも、利発なアンナには、何不自由なかった以前の暮らしと比べて、家族の幸せよりも社会活動に重きを置く今の生活に疑問を禁じえません。突然の両親の価値観の変化と、生活の激変が納得できず、反発を感じるアンナ。
 大人たちは充分な説明をしてくれないまま勝手な活動に走って、なぜ子供たちまで振り回されなきゃいけないの?そんなアンナに、パパのチリ民主化運動仲間が、富を皆んなで分けることの大切さを説明すると、アンナにも何となく両親の活動の趣旨がわかりかけて来るのですが。。
 フランコ政権下にピレネー山脈を越えて、南仏に逃げ込んだスペイン人は数知れず、彼らの影響で、軍事政権の台頭に苦しむ南米に関心を向けたフランス人も多かったのでしょう。フランス社会を大きく変えた1968年の5月革命の後、75年の中絶が合法になるまでの新しい価値観に揺さぶられるフランスを背景に、この作品は、でも終始幼いアンナの目線で描かれます。
 そのため、大人たちの民主化運動や弱者支援への目覚めが、結構理不尽な思いつきで周囲を振り回している様子がコミカルで、人々の価値観がいっきに変わったと言われる激動の70年代を、裏から見るような視点が面白い作品です。
 ただ、両親の変化に戸惑い反発するアンナの心境に重点が置かれ過ぎていて、大人たちの心の動きやそれぞれのエピソードが抜けている分、ちょっと食いたりなさが残りました。もう少し、話に深みがあればさらに良かったのに、とその点がちょっと残念です。 
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by cheznono | 2008-02-09 01:50 | 映画