4ヶ月、3週と2日

b0041912_1404467.jpg 1987年、チャウシェスク政権崩壊の2年前のルーマニアを舞台に、ルームメイトの二人の女性の過酷な一日の体験を描いた「4ヶ月、3週と2日」。去年のカンヌでパルムドールを受賞した作品なので観ておきたかったのですが、何とも後味の悪い気持ちの沈む映画でした。
 同じ違法な中絶補助をテーマにしたイギリス映画「ヴェラ・ドレイク」を頭において観たら、全然違う切り口だったから、面食らったのも確かです。
 鑑賞後、重苦しい気持ちを掃うべくワインを飲みながら、映画の暗さがそのまま独裁政権下の当時の東欧の陰鬱さだったことに気づき、同時期をバブルで浮かれていた国で過ごした私たちが、今この重苦しさをたった2時間弱でも共有したことに意義があるという思いに至りました。
 ドキュメンタリーのようなカメラの手法で、あまり知られていなかった共産主義時代の東欧の生活を描いた、圧倒的リアリティのあるドラマであることは間違いありません。
 大学寮で部屋をシェアするオティリアとガビッツァ。物不足の中で学生達がいろいろ工夫しながら、闇で物資をやり取りしている様子などが描かれ、やがて、しっかり者のオティリアが、望まない妊娠をしたガビッツァのために中絶の手はずを整える手助けをしていることがわかって来ます。
 当時、ルーマニア政府は労働力の確保のために出産を奨励し、中絶は違法でした。そうした政策と物不足のせいで、避妊具やピルも闇市でしか手に入らず、高価な品の部類だったようです。
 苦労して確保したホテルの部屋で、胡散臭い中年の医者がガビッツァに堕胎の方法と胎児の始末の仕方を説明しますが、彼が二人に、人工中絶が重い罪に問われ、いかに自分が危険を犯さなければいけないかを強調する辺りから、事態はとんでもない方向に向かい始めます。
 ルームメイトを助けたいオティリアの緊張や苛立ちに対して、肝心のガビッツァはノンシャランとしていて嘘を連発したりと、ことの重大さを甘く見ている様子が腹立たしい程です。でも、ガビッツァのようでないと独裁主義国家の重い重圧の下では、かなり生きにくいのかも知れません。
 それにしても、大学寮の様子などは、今のフランスの地方都市の大学寮と大差ないし、オティリアが顔を出す恋人の家のパーティでの来客たちの会話も、フランスの家庭の夕食会で交わされるものと変わりないのが、興味深かったです。個人の自由が制限され、物資も乏しい独裁政権下であっても、人々はたくましく毎日を楽しむすべを心得ていたという側面が、この映画の救いでした。
[PR]
by cheznono | 2008-03-12 01:49 | 映画