地上5センチの恋

b0041912_1717246.jpg 昨年観た映画の中で、一番笑わされ、何よりも幸せな気分にしてくれた「地上5センチの恋」。お伽話のようなストーリーですが、監督の実体験から生まれた作品と聞きました。春にふさわしい、一押しのコメディです。
 ベルギー南部の町で、デパートに勤めるオデット(カトリーヌ・フロ)は、夫と死別して、年頃の二人の子供とつましく暮らしています。美容師の息子はゲイで、娘はどうしようもない男と恋仲。夜は家計の足しに内職をするオデットの現実は、それなりに厳しいと言えますが、彼女はお気に入りの作家バルタザール・バルザンの著書を読むことで、現実逃避をはかるのを日々の支えにしています。
 ある時、ブリュッセルでバルザンのサイン会があると知ったオデットは、自分が夢中になれる本の作者である彼にお礼を言いたくて、長距離バスで首都へ向かいます。おめかしして、浮き浮きどきどき。人生の一大イベントのごとく楽しみにしていたサイン会なのに、ハンサムなバルザンといざ面と向かえば、ろれつも回らなくなるほど緊張するオデット。それでも、何とかファンレターを渡すことができました。
 一方、人気作家のバルザン(アルベール・デュポンテル)ですが、著名な評論家には「所詮、ミーハー受けする大衆小説家に過ぎない」と酷評され、愛する妻もなんとその評論家と浮気していると知って、激しく落込み、生きる希望もなくしかけている所でした。
 そんな折に渡されたオデットのファンレター。すっかり自信をなくしていたバルザンにとって、その手紙はどんな書評よりも身にしみる、勇気百倍の内容だったのです。しかも、文章が素晴らしい。
 このファンレターをくれた本人に会うべく、オデットの小さいアパルトマンを訪ねるバルザン。しかし、再会したオデットは、プルーストもゴンクール賞も知らない無教養な女性で、いっぱしの文学小説家であるバルタザール・バルザンは、眼を丸くしてしまいます。
 けれど、オデットには何ごともポジティブに考え、周囲の人々を幸福な気分に導くという類まれな才能が携わっていることに気づいたバルザンは、しばらく彼女のアパルトマンにホームステイすることになるのですが。。
 日々の暮らしに追われながらも、何かあるとジョセフィン・ベイカーの曲を歌いながら踊っては気分転換するオデット。私の大好きなカトリーヌ・フロの才能が存分に生かされている役柄です。そして、何よりセリフが秀逸。脚本の良さはもちろんのこと、細部まですごく計算された会話の面白さには感服しました。
 私は、ニースの名画座で隣り合わせたカトリックのシスターと何度も顔を見合わせて笑いまくり、お陰で観終わった後、何日も楽しい気分に包まれていることができました。加えて、フランスとは似て非なるベルギー庶民の暮らしぶりも新鮮です。
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by cheznono | 2008-03-23 18:11 | 映画