ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

b0041912_183423.jpg  フランスでも絶賛された「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」。ダニエル・デイ・ルイスを観るのは「ギャングズ・オブ・ニューヨーク」以来ですが、石油亡者になり切った会心の演技は、鬼気迫るものがありました。これだけの俳優がイタリアで靴職人の修行をしていたというのも、デイ・ルイスらしい離れ業なのでしょうね。
 19世紀末、ゴールドラッシュ後のカリフォルニアで、黙々と一人、粗末な設備で採掘するプレインビュー。事故死した炭鉱仲間の赤ん坊H・Wを養子にしたプレインビューは、地下に石油が眠っているという情報を得て、周囲の荒れた土地を地上げしては買占め、本格的に石油を掘り始めます。
 人間不信の塊のようなプレインビューの拠り所は、石油と金。人を好きになったことがないという彼ですが、自分の右腕になりそうな人物を必要としていて、不器用ながら人間的な感情を滲ませる面も無きにしも非ず。
 一方、土地の持ち主の息子であるイーライ(ポール・ダノ)は、若く情熱的な聖職者で、荒涼とした町に教会を建て、地元住民への布教に力を注ぎます。
 プレインビューの掘り出した石油のお陰で、町には活気が戻りますが、イーライは当初プレインビューが約束した寄付を反故にされたため、だんだんと本性を表して来ます。村人の前では、狂信的なまでに神を崇拝する牧師に見えるイーライも、実は金と名誉欲にとり付かれていたのでした。
 キリスト教離れが進む欧州に対して、先進国の中で随一の信心深さを誇るアメリカ。国会すら大統領が聖書に手を置いて開会されるというピューリタニズムが、今も厳然と政治や社会に息づいています。その建前のピューリタニズムの裏側で、石油の利権を獲得するためには手段を選ばず、よその血がいくら流れても平気といった米国政府の姿勢が、この作品に投影されているようで、アンダーソン監督の力量を感じずにはいられません。
 人嫌いのプレインビューが、それでも相手に抱いた信頼や期待を裏切られた時に見せる残酷さ。神への忠誠を熱狂的に説きながら、自らの欲望に破滅する聖職者。一見、対照的に見えて、本質は同じ穴のムジナのような二人の確執が不気味な後味を残す作品です。
[PR]
by cheznono | 2008-05-04 18:06 | 映画