譜めくりの女

b0041912_0585768.jpg  おととい銀座で会った友達に「とてもフランス的な映画だから是非観て」と勧められたので、その帰りに「譜めくりの女」を滑り込み鑑賞して来ました。意外にもドウニ・デルクール監督は、京都滞在中に脚本を書き上げたため、かなり日本的な作品に仕上がったと語ってますね。果たして、どの辺がフランス的で、どこが日本的なのかを考えながら観ると、さらに面白い作品かも知れません。
 地方都市の肉屋の娘、メラニーはピアノの才能に恵まれ、音楽学校への入学試験に挑戦します。「もしも失敗したら、お金のかかるピアノの個人教授は諦めるから」と父親の負担を思いやり、子供ながら退路を断って強い意志で臨んだ実技試験の日、審査委員長である著名なピアニスト、アリアーヌ(地上5cmの恋のカトリーヌ・フロ)が見せた無造作な振る舞いに動揺したメラニーは、自信のあった演奏を中断してしまうのでした。
 ピアニストの夢を諦めたメラニーは、美しい娘に成長。売れっ子弁護士ジャンの法律事務所に研修生として採用されます。真面目な仕事ぶりで信頼を得たメラニーは、ジャンの出張中、その息子トリスタンの世話係として、一家の暮らすシャトーに住み込むことに。
 実は、弁護士ジャンの妻はメラニーの夢を破るきっかけを作ったあの人気ピアニスト、アリアーヌでした。ジャンは、交通事故の後遺症で精神的に不安定な妻を気遣い、自分の出張中、家族の世話役を引き受けてくれる人を捜していたのです。
 若く美しくクールなメラニーの登場は、優しい夫と裕福な生活を送って来たアリアーヌとその演奏仲間たちに微妙な影響と変化をもたらします。
 アリアーヌはピアノの譜面が読めるメラニーが気に入って、演奏時の譜めくりを頼むようになり、メラニーの音楽的センスの良さから加速度的に彼女への信頼を深めて行きます。一方でメラニーは、幼いトリスタンとも独特の方法で距離を縮め、二人だけの秘密を守らせるのに成功します。
 おとなしく清楚な外見の陰に気性の激しさを秘めるメラニーは、アリアーヌへの敬慕をその視線と動作だけでほのめかし、夫の庇護のもとにピアノの才能を培って来た世間知らずマダムのアリアーヌは、いつの間にか妙な気持ちに捕われてしまいます。
 口数こそ少ないけれど思わせぶりなメラニーに、アリアーヌの心はどんどん揺さぶられ、まるで思春期の少女のごとく、ますます敏感に不安定になって行くアリアーヌ。やがて、真綿でくるむように自分の計画を進めて来たメラニーがいよいよシャトーを去る日が来て。。。
 穏やかな田舎のシャトーの贅沢な暮らしに、一見違和感なく溶け込んで行く肉屋の娘メラニーが、わずかなセリフだけで、アリアーヌとトリスタンに見えない罠を仕掛けてゆくサスペンス的緊張感が魅力の映画です。
 一緒に生活している相手が自分を気に入ってくれても、情に流されることもなく、感情を抑制して、少しの動作とセリフで、相手を追い込んで行くメラニーの戦略は、とかく直情的、直接的なフランス女性が多い中で異質に見えます。日本びいきの監督が 、能など日本の伝統芸術から得たヒントは、もしかして、この遠回し的復讐方法だったとか?という思いが頭をかすめたのですが、監督が取り入れた日本的要素は間の取り方などにあるみたいですね。トリスタンが可愛がっている鶏の名前が《嫉妬》というのが、メラニーの気持ちを言い当てているようで、思わず苦笑いでした。
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by cheznono | 2008-05-19 01:02 | 映画