宮廷画家ゴヤは見た

b0041912_1232691.jpg「ゴヤは見た」という邦題の通り、時代の大きなうねりに揺れるスペインを背景に、薄幸の美少女イネスと野心家の神父ロレンソの数奇な運命を、カルロス4世のお抱え画家に上りつめたフランシスコ・デ・ゴヤの目を通して描いた歴史ドラマ。
 宗教や時代の流れに翻弄された女性と、その両方をうまく利用した神父の姿に、見終わった後は暗く重い空気に包まれましたが、当時を忠実に再現した映像は美しく、見応えのある時代劇に仕上がっています。

  18世紀末、フランス革命の時代のマドリードで、ゴヤ(ステラン・スカルスガルド)が親しくしている豪商の令嬢イネスは恵まれた家庭で幸せいっぱいの娘盛りを迎えていました。ところが突然、異端審問所から呼び出しを受け、ユダヤ教徒ではないかと疑われて、拷問にかけられてしまいます。
 娘の身を案じた豪商は、ゴヤを通じてロレンソ神父(ハビエル・バルデム)の力でイネスを釈放するように頼みますが、奇しくもカトリック教会の威信回復のために異端審問を厳しくするよう提案したのはロレンソでした。
 ゴヤの頼みで、イネスを慰めるべく異端審問所の牢獄を訪ねるロレンソ神父ですが、拷問のため全裸で震えるイネスを見て、思わず抱き寄せてしまいます。
 娘を何とか釈放させたい豪商は、ロレンソ神父を自宅に招待、その席で神父にある罠を仕掛けます。それでも、娘の解放はかなわず、切羽詰まったロレンソは、スペインから亡命し、行方知らずに。
 そして15年が過ぎ、ナポレオン軍がスペインに侵攻。既に聴力を失ったゴヤは、今やナポレオンの側近となったロレンソの変身ぶりに驚きますが、さらに意外な真実が明らかになって。。。

 「ブーリン家の姉妹」でも悲劇の王妃アン・ブリーンを熱演しているナタリー・ポートマン。この作品でもゴヤのミューズとも言えるイネスとその娘を見事に演じ分けています。「ノーカントリー」で不気味な殺し屋を演じたハビエル・バルデムは、今回も癖のある役柄を完全に自分の物にしているし、ゴヤのステラン・スカルスガルドもぴったりはまり役。 

 悪名高いカトリックの異端審問裁判ですが、特にスペインの異端審問は密告やでっち上げも多かったようですね。この映画でも若く美しいイネスが、ほんの誤解から過酷な運命に陥ってしまう展開に、ものすごく暗い気持ちになりました。
 もう10年近く前にトレドの旧市街を歩いた時、中世からイスラム教徒らと共生していたユダヤ人が、やがて迫害によって町を追われた歴史を知りましたが、ゴヤはそうした時代の暗い部分を絵ににじませることで、静かに体制を告発していたのでしょう。トレドでは、ゴヤの絵の暗さに気が滅入ったものですが、晩年のゴヤが描いた作品の陰鬱さは、こうした時代から生まれたのかと、この作品で納得できた気がします。
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by cheznono | 2008-10-12 01:28 | 映画