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ミラノ、愛に生きる

b0041912_0504275.jpg 確かに映像美が楽しめる作品でした。50歳を超えているとは思えないイギリス人女優ティルダ・スウィントンのクールな美貌とイタリアの資産家の暮らしぶり、ミラノからサンレモにかけての自然美、そして腕によりをかけた料理の数々。
しかし、かくもあっさりと性愛が母性愛を凌駕するものでしょうか?説得力に欠ける展開には今も首をかしげています。

ロシア出身のエンマ(ティルダ・スウィントン)は若い頃、ミラノの実業家レッキ家の御曹司タンクレディに見初められて結婚。三人の子供を育て上げ、今は大きな屋敷を取り仕切り、ディナーの采配を振るうような毎日です。
ある日、息子エドアルド(フラヴィオ・バレンティ)から親友の料理人アントニオ(エドアルド・ガブリエリーニ)を紹介され、彼の作る料理に魅了されます。
以来、アントニオのことが頭から離れなくなったエンマは、娘の展覧会を見にニースに向かう途中、サンレモで偶然アントニオと再会、動揺します。
アントニオがエドアルドの出資でレストラン経営を予定しているサンレモ郊外の山荘に案内されるエンマ。
その日から、二人は急速に親しくなって、逢引きを重ねるのですが、エドアルドが母親と親友の関係に疑問を持ったことから、思いがけない悲劇が一家を見舞うのでした。

 結婚のためロシアからイタリアに渡って以来、自分の感情を抑えて、裕福なレッキ家にふさわしいイタリア人になり切ろうと努力をして来たエンマ。洗練された服に包まれ、メイドやお手伝いさんにかしずかれるような前時代的なゆとりのある暮らしを送りながら、どこか表面的な上流社会に違和感を感じていたのでしょう。
子供が独立し、レッキ家の事業も先代から夫と息子に譲られた今、エンマに突然訪れた出会いは、彼女をこれまでの抑制的な生活から開放し、性への新たな目覚めへと導きます。

 これはひょっとしてかの名作「レディ・チャタレー」に描かれた世界を意識しているのかも?しかし、完成度は雲泥の差。官能度は「レディ・チャタレー」を凌ぐにせよ、ヒロインの心の動きの描写が物足りず、アントニオの心理にいたっては殆ど描かれてないのが残念。
とはいえ、繊維業で名を成した一家の優雅な暮らしぶりと、イタリアらしい風景など、美しい映像と音楽がたっぷり楽しめる作品です。
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by cheznono | 2012-01-24 00:53 | 映画

善き人

b0041912_0435236.jpg ひっそりとスバル座で公開されている「善き人」。どうしようかなって迷いましたが、観に行って正解でした。
 ナチス政権下で翻弄される人間の姿をフランス側から描いた「黄色い星の子供たち」や「サラの鍵」に対して、当時のドイツに暮らす普通の人びとがどのように行動したかを知る格好の作品、現代にも通じる普遍性があります。
 あの名作「善き人のためのソナタ」とはまた違った角度で、危険な独裁政権下に身を置いた人間の心理と行動を考えさせられました。
 原作は英国の劇作家C・P・テイラーの戯曲で、世界的に知られた舞台劇とか。監督は新鋭ヴィセンテ・アモリン。BBC製作で英語版なのも嬉しいです。

 1937年のベルリン。文学部の教授で小説も書くジョン・ハルダー(ヴィゴ・モーテンセン)ですが、家では家事をしないピアニストの妻に代わって、幼い子供たちの面倒を見る善きパパ、同居する老母の介護もしなければいけません。
 ある日、総統官邸に呼び出されたハルダーは、ヒトラーが《人道的な死》をテーマにした彼の小説を気に入ったので、ナチスのために論文を書いてほしいと依頼され、とまどいます。
 それまで、ナチス政権を覚めた眼で見ていたハルダーでしたが、これがきっかけでナチスに取り込まれて行きます。しかし、ハルダーにはユダヤ人精神科医のモーリス(ジェイソン・アイザックス)という親友かつ戦友がいたのです。
 大学では教え子のアン(ジョディ・ウィテッカー)が積極的にハルダーに近づき、家事と介護に追われる家庭生活に疲れていたハルダーの心の隙間に入り込んで来ます。

 今やすっかりナチスのお気に入りとなってしまったハルダーは、幹部から入党を迫られて困惑します。迷いながらも勢いに流されてナチス党員となったハルダーは、大学でもいっきに学部長に昇進。裏切られた思いのモーリスに非難されても、時代の趨勢だからと気弱に言い訳するだけでした。
 私生活でも、アンの情熱に押され、妻子と別れてアンと同棲を始めるハルダー。一方、ナチスがユダヤ人への迫害を強化させたことに身の危険を感じたモーリスは、パリへの亡命を模索して、ハルダーにパリ行きの切符を買って来てほしいと頼みますが、ハルダーには外国行き切符の購入に必要な出国許可証がありません。
 モーリスと共に第一次大戦を戦ったハルダーは、ドイツのために従軍したユダヤ人は安全だと親友の不安を打ち消すのでした。

 しかし、フランス駐在のドイツ人書記官がユダヤ人によって暗殺される事件が発生。これに憤慨したナチスがユダヤ人一斉検挙を始めた夜、モーリスの身を案じたハルダーは何とかパリ行きの切符を手に入れるのですが。。

 ナチス政権下で、身を挺してユダヤ人を助けた人のドラマは多いけれど、この作品は、ヒトラーに抵抗を感じながら時代に流され、意に反して取り返しのつかない呵責を背負うことになった一介の善人を描いている点がポイント。
 善き友、善き家庭人だったインテリのハルダー、小説家でもある彼の洞察力にはしかし限界があり、人間の弱さも充分に持ち合わせていたわけで、その彼の優しさと良心をあてにしていた妻子も老母も親友も、それぞれが予期せぬ形で裏切られます。
 
 ヒトラー独裁体制下だったゆえにことは悲劇性を高めますが、自分も含めて恐らく多くの一般人が、こうした状況において無意識のうちに似たような選択してしまうのでは、と思うと深く考えさせられます。
 「君しか頼れる人がいない」とプライドを捨ててハルダーに懇願するモーリスの涙が、映画館を出た後も脳裏から離れませんでした。
公式サイト:http://yokihito-movie.com/
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by cheznono | 2012-01-16 00:48 | 映画

灼熱の魂

b0041912_044359.jpg 新年明けましておめでとうございます。2012年が穏やかな良い一年となることを心から祈っております。

 2011年の観納めは、ケベックとフランス合作映画「灼熱の魂」。ニースの大のシネマ好きの友達が、「これまで観てきた中で、一番とも云える映画」と絶賛していた作品なので、気合を入れて観に行きました。
 原題は「炎上」。ひりひりするような激情の意味もあるこのタイトル、冒頭でなくラストに作品タイトルが現れる映画を観たのは初めてかも知れません。

 2010年カナダ。双子の姉弟ジャンヌとシモンの母親ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)が、急逝に近い形で世を去ります。中東出身のナワルは、双子に奇妙な遺言と2通の手紙を遺していました。
 手紙は、内戦で死んだと聞かされていた父親と、存在さえも知らなかった兄宛て。二人を探し出して手紙を届けるようにという母親の遺志を尊重するジャンヌは、若き日の母ナワルの過去をたどるべく中東へと旅立ちます。

 1970年、中東の田舎。キリスト教徒のナワルは、異教徒の青年と恋に落ち、密かに赤ん坊を産み落とします。しかし、青年はナワルの家族に殺され、赤ん坊は孤児院に。村の面汚しだと糾弾されたナワルは、都会に逃れて大学に進学。仏語を習得します。
 やがて、キリスト教vsイスラム教の対立激化から内戦が勃発。大学も封鎖されたため、今こそ愛児を取り戻すチャンスと思い込んだナワルは、軍の包囲網をくぐって、ひたすら山あいの孤児院を目指します。
 けれど、やっとの思いでたどり着いた孤児院は、キリスト教徒によって焼き払われた後でした。子供たちはどこへ?

 孤児たちが連れ去られたという難民キャンプに向かうため、イスラム教徒に紛れて長距離バスに乗ったナワルですが、バスはキリスト教徒たちに襲われて炎上、ナワルも危うく焼き殺されそうになります。
 この強烈な体験が平和主義のナワルを大きく転向させ、クリスチャンだったはずがイスラム勢力に手を貸すことに。しかし、彼女のこの決断はとてつもない代償と犠牲を伴うものでした。

 20代の双子の姉弟が、想像もしなかった母親の若き日を、わずかな手がかりを頼りに少しずつたぐり寄せて行きます。
 まるで十字軍を思わせるような宗教対立の根深さと女性蔑視の中、はがねのような強い意思で運命に立ち向かった母親の壮絶な過去をたどる双子の気持ちの揺れが、観ている者にも痛いように感じられました。

 国内事情や歴史的背景などの説明を極力排除しているため、ややわかりにくい部分があるのは否めませんが、宗教対立による激しい憎しみの連鎖による悲劇を経験したナワルが、恩讐を越えて綴った最後の手紙には衝撃と感動が凝縮されています。
 ラストに現れる映画タイトルが、ずしりとそれはそれは重く迫って来る作品です。

 監督はドゥニ・ビルヌーブ、原作はレバノン系カナダ人の劇作家による舞台戯曲だそうで、ギリシャ悲劇を彷彿とさせるショッキングなプロットも舞台劇ならまた少し違った印象を受けるのかも。とはいえ,この作品がもたらすメッセージはいささかも変わらないでしょうが。 
 公式サイト:http://shakunetsu-movie.com/
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by cheznono | 2012-01-02 01:04 | 映画

サラの鍵

b0041912_23175294.jpg 昨年フランスで公開が続いたヴィシー政権下のパリでのユダヤ人一斉検挙の悲劇を扱った映画の一つ「サラの鍵」。検挙され収容所送りとなった少女と、60年の歳月を経て現代に生きるジャーナリストの人生を交差させつつ、さまざまな疑問にぶつかりながら、過去の発掘を通して自らの人生をも大きく変えて行く女性の姿を描いた秀作です。
 「黄色い星の子供たち」を観た方なら、当時の様子がよりリアルに迫ってくるでしょう。
 
 1942年早朝のパリ。フランス政府によるユダヤ人検挙の命令に従って、少女サラのアパルトマンにも警官が押しかけ、一家は冬季競輪場に収容されます。
 その直前、10歳のサラは弟を納戸に匿い、鍵をかけました。サラはまたすぐに家に帰れると思っていたから。

 60年後、フランス人の夫と娘とパリ在住のアメリカ人記者ジュリア(クリスチャン・スコット・トーマス)は、ナチのユダヤ人迫害に協力したヴィシー政権によるユダヤ人迫害について取材をする中で、夫(フレデリック・ピセロ)が祖父母から相続したマレ地区のアパルトマンが、1942年の一斉検挙でアウシュヴィッツに送られたユダヤ人一家の住まいだったことを知り、愕然とします。

 すし詰め状態の冬季競輪場から収容所送りとなったサラは、弟を閉じ込めた納戸の鍵を握り締め、なんとしてもパリのアパルトマンに戻るべく命がけで脱走を図ります。

 夫と暮らすアパルトマンがユダヤ人検挙のお陰で手に入ったのではと疑うジュリアに夫の家族は口を閉ざし、夫も過去を蒸し返すなと不快さを隠しません。
 加えて、45歳にして妊娠したジュリアに、夫は今さら子供に振り回されたくないと生むことを歓迎していない様子。妊娠を喜ぶジュリアは多いに失望させられます。
 
 果たして、サラはホロコーストを生き延びたのでしょうか?サラが納戸に隠した弟の運命は?
 周囲の戸惑いをひしひしと感じながら、少女サラの存在を知ってしまった以上、彼女のその後を突き止めずにはいられないジュリアは、真実を求めてパリから出身地ニューヨークへ、そしてイタリアのトスカーナ地方へと取材を続けるのですが。。

 前半は幼い弟を助けたい一心で納戸の鍵を閉めたまま収容所送りとなってしまったサラの苦悩が痛いほど伝わって来て、サラの行方を心配するジュリアと心を1つにする思いでした。
 今になって忌まわしい過去を掘り返してほしくない周囲との摩擦を感じながら、真実を明らかにしたいという欲求に正直なジャーナリストの宿命をベテランのクリスチャン・スコット・トーマスがおさえた演技で体現しています。
 ジュリアの探究心が、埋もれていたサラの人生にはっきりとした輪郭を与え、やがてそれがジュリア自身の人生にも大きな意味を持って来る過程が、この作品の醍醐味。歴史の波にもまれ悲惨な体験を経ながらも、命の輪が連綿とつながっていることが、静かな喜びとして伝わって来る映画です。

 原作は世界的に大ヒットしたタチアナ・ド・ロネの「サラの鍵」(新潮クレスト・ブックス)。
公式サイト:http://www.sara.gaga.ne.jp/  
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by cheznono | 2011-12-18 23:18 | 映画

b0041912_17291862.jpg やっと観ました、ソフィー・マルソー主演の「マーガレットと素敵な何か」。マザー・グースから採った甘ったるいキャッチコピーにはひるみましたが、さすが「世界で一番不運で幸せな私」のヤン・サミュエル監督、ひねりの利いた不思議な魅力のある映画で、男性にもお勧めです。
 しかし、この邦題は何とかならなかったのでしょうか?こんな題をつけられたら、ソフィー・マルソーファンの男性陣は観に行きにくいでしょうし、そもそもクールでかっこよい自分になりたくて、英語名マーガレットを使って来たヒロインが、本名のマルグリットに戻って行く過程を描いているのだから、原題の「物心つく頃」の方が平凡でも良かったと思うのに。
 
 マーガレットは、アレバを思わせる原子力産業でトップの座を狙うほどの切れ者キャリアウーマン。お金と出世が優先の人生ですが、プライベートでは英国人の同僚マルコム(マートン・コーカス)と結婚目前。
 40歳の誕生日、原子力プラントを中国に売る交渉に没頭するマーガレットの元に、生まれ故郷のプロヴァンスから公証人(ミシェル・デュショーソワ)が訪ねて来ます。
 既に引退した公証人が携えたのは、マーガレットが7歳の時に未来の自分に宛てた手紙でした。
 少女マルグリットが、幼いながらあらゆる工夫を凝らして綴った手紙と同封の古い写真に、手紙も公証人の存在も忘れていたマーガレットはひどく動揺します。
 物心つく頃、家が破産し、父親が出て行ったため、残された母と弟と共に食べ物にも困るような貧しい生活を余儀なくされたという辛い記憶がいっきに蘇る一方で、女の子らしい将来を夢見たり、幼なじみと過ごした甘酸っぱい思い出がマーガレットの胸を去来し、肝心な商談さえもうわの空に。
 遠い昔、いつの間にか少女マルグリットの目標は、勉強を頑張って、仕事で成功することとなり、そのために過去を封印し、名前も英語名に変えて突っ走ってきた筈だったのですが。。

 自分が本当にしたかったことは、鉄の意志で原子力発電プラントを世界中に売りまくることだったのか?次々に届く7歳の自分からの手紙に、仕事と出世レースに追われ、心の潤いをなくしていたマーガレットは、今の自分を否定したくない反面、その胸中に現状に対する強い疑問が生じ始めます。
 この辺りの心の葛藤と変化を、幼なじみとの初恋のエピソードを交えながら、テンポ良くユニークに描きつつ、ほろりとさせられる演出がにくいです。

 マーガレットからひどい言葉をぶつけられ、何度拒否されても、子供の頃の彼女の純粋な気持ちを知っているから平気と言わんばかりに余裕の包容力で、マーガレットの存在を肯定し、その生き方の修正を暗に促す元公証人役のミシェル・デュショーソワが秀逸。
 因みにマーガレットの故郷で、隠居の公証人がペタンクを楽しむプロヴァンスのソー村は、ラベンダー畑で知られ、8月にはラベンダー騎士団によるお祭りで賑わいます。
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by cheznono | 2011-12-06 17:39 | 映画

ハートブレイカー

b0041912_22555076.jpg ロマン・デュリスとヴァネッサ・パラディ主演で、フランスでは大ヒットしたコメディ「ハートブレイカー」が、有楽町でひっそりと公開されています。70人ちょっとしか入らない部屋での公開されているため、サービスデイは毎回満席。驚いたのは同時上映されている「エンディングノート」の人気ぶりです。ヒューマントラストシネマは珍しく老若男女さまざまな世代であふれていました。

 策士の姉夫婦と組んで、プロの別れさせ屋を営んでいるアレックス(ロマン・デュリス)。娘がしようもない男に夢中で困りきっているとか、妹が破滅的な恋愛にのめりこんでいて何とかしたい、といった依頼主から仕事を請けては、持ち前のお茶目な魅力でターゲットに近寄り、相手の関心が自分に向いてめでたく彼氏と別れたら、はいさようなら、という生活を送っています。
 アレックスのポリシーでは、別れさせるのは不幸せな恋愛をしている女性だけ。仕事である以上、相手に深入りは禁物。女性が不毛な恋愛に気づいて彼氏と別れれば、彼の役目は終了です。

 モロッコでの仕事を終えて、姉夫婦とパリに戻ったアレックスを待っていたのは金持ちの娘ジュリエット(ヴァネッサ・パラディ)と婚約者の英国人実業家ジョナサン(アンドリュー・リンカーン)との結婚を阻止すること。依頼主であるジュリエットの父親から法外な謝礼を提示されます。
 でも、モナコでの結婚式は10日後に迫っているし、ジュリエットとジョナサンはお似合いのカップル。熱々の二人を何ゆえ別れさせなくてはいけないのか?

 実は多額の借金を抱えているアレックス。お金のために原則を曲げてジュリエットの結婚式を中止させるべく、モナコに向かいます。
 ひとまずボディガードとしてジュリエットに接近したアレックスですが、気が強く、どこか屈折しているジュリエットは、いっこうに隙を見せません。あの手この手で彼女の気を引こうとするアレックスチームの努力は空回りするばかりです。
 しかし、別れさせ成功率100%のアレックスチーム、ここで引き下がるわけには行きません。
 そこへ、予定より早く婚約者ジョナサンがモナコに到着。しかも、急遽予定を変更して、式はラスベカスで挙げると言い出したため、さすがのアレックスはお手上げ状態に。。

 母親の死後、10年間も不仲だったジュリエットと父親。裏の世界にも通じている父親が、なぜ大金持ちでイケメン、理想的に見える娘の婚約者を嫌って、アレックスに肩入れするのかちょっと不思議ですが、不安定な隙間稼業に生きるアレックスに自分と共通する心意気とヤマっけを感じたからかも。
 
 突っ込みどころは満載でも、気の利いた会話とユーロ危機とは別世界のバブリーなシーンがふんだんに楽しめます。そしてもちろんロマン・デュリスの魅力が映画の要と言えましょう。ダンスシーンが圧巻です。
 ただ、モナコを舞台にしたコメディは、どこか似通った雰囲気が漂うのも否めません。オードリ・トトウが金持ちの援助交際相手を探す「プライスレス」もしかり。
 なんかかんか言ってもアメリカ文化が大好きなフランス人。ハリウッド的なロマンチックコメディをフランス風に仕上げた作品は、若い世代を中心にこれからますます増えて行くのでしょうね。  
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by cheznono | 2011-11-26 23:26 | 映画

ウィンターズボーン

b0041912_047138.jpg 今週の1本は久しぶりのアメリカ映画「ウィンターズボーン」。沢木耕太郎氏のレビューを読んで興味を持ちました。フランスメディアもこぞって絶賛、観客評もかなり高い作品です。
 しかし、レアリズムには圧倒されるものの、これが今のアメリカ中西部の山村の現実とはとても信じられません。ウォール街を占拠せよのデモに参加している人たちは、まだ恵まれた米国民なのでしょうか?
 
 舞台はミシシッピー川沿いにあるミズーリ州の山あい。あばら家に暮らす17歳のリー(ジェニファー・ローレンス)は、心を病んで言葉を話さない母親と幼い弟と妹の面倒をみながら、かつかつの暮らしを送っています。
 食べる物にも困るようなある日、保安官がリーの家に立ち寄って、麻薬の密造で捕まった父親が保釈中に失踪したため、もし裁判にも現れなければ保釈金の担保になっている自宅を差し押さえると警告します。
 家を追い出されたら、家族の生活を守ることができなくなってしまう。何が何でも父親を見つけ出す決心をするリーですが、親戚や心当たりを頼っても、相手にされません。
 これといった産業や仕事のない貧しい土地で、どうも住民達は見えない掟の下にまっとうでない方法で日銭を得ている模様。でも、必死で父親を探すリーに協力しようとしないのはなぜなのか?
 初めはリーの父親探しをあきらめさせようとした麻薬中毒の伯父も、覚悟を決めて行動するリーの強い意志に自らの血筋を感じて、彼なりの方法で手を差し伸べるのですが。。

 カンサスシティーやセントルイスといった観光都市を抱えているミズーリ州。所得も全米の中で真ん中辺りで特に貧しい地域ではないようです。が、この映画では、土地も人の心もあまりにすさんでいるため、果たして希望の見出せる展開になるのかどうか、終盤まで不安でした。

 こんな環境で育ち、17歳にして家族の世話が両肩にかかっているリーの強さ、一途さには感嘆させられます。一方で、今の生活を守るためにここまでしなくてはいけないのかという思いと、行政はどうなっているのだという疑問を抱えたまま映画館を出たら、外は冷たい雨。昼間見た天気予報は夜まで晴れマークだったのに。しばらく雨宿りしても小やみにならないので、仕方なく雨の中を濡れながら帰る羽目となりました。 
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by cheznono | 2011-11-18 00:57 | 映画

フェア・ゲーム

b0041912_233856100.jpg ブッシュ政権によるイラク戦争突入に強い疑問を持ったが故に、ホワイトハウスに裏切られた実在の夫婦を描いた政治サスペンス「フェア・ゲーム」。国家による大いなる嘘の恐ろしさに震撼とさせられます。

 CIA勤務のヴァレリー(ナオミ・ワッツ)は一度に幾つものプロジェクトを抱え、世界中を飛び回る活躍ぶりで一目置かれるタフで優秀な諜報部員。家庭的には元大使の夫ジョー(ショーン・ペン)と双子に恵まれ、表向きには金融キャリアウーマンとして充実した日々を過ごしていました。
 2001年9月の同時多発テロ後、米国務省は、イラクが核兵器製造に使用するためにニジェールから大量の濃縮ウランを買い込んでいるふしがあると疑います 。
 イラクへのウラン輸出を調査すべく、元ニジェール大使のジョーがアフリカに派遣されますが、現地を見たジョーは、ニジェールがイラクにウランの大量輸出をしている様子はないと政府に報告。
 妻のヴァレリーもイラク国内の化学者と接触し、パパブッシュが引き起こした湾岸戦争後は戦車の部品も不足しているイラクで、核兵器の開発などできる状況ではないと確信します。

 しかし、夫婦それぞれの報告は闇に葬られ、2003年アメリカはイラクに戦線を布告。ジョーは新聞への寄稿を通して、自分の調査結果にもかかわらず戦争に突入した政府に疑問を投げかけます。
 しかし、激しい攻撃の末、イラク国内に核兵器を初めとする大量破壊兵器が見つからないことに焦りを感じていたホワイトハウスは、ジョーの寄稿に大困惑。腹いせに妻ヴァレリーがCIAの諜報部員であることをメディアに漏らしてしまいます。
 その日を境にヴァレリーとジョーの生活は一変。ヴァレリーはCIAを追われ、一家は世間の白い目にさらされ、夫婦のストレスは最高潮に。
 ホワイトハウスの権力には抵抗できないと黙り込むヴァレリーに対して、政府の間違いを積極的にTVで告発するジョー。国を愛し、国に尽くしてきた二人の間にも溝が広がって行くのですが。。
 
 ジョーもヴァレリーもそれぞれがアメリカを愛し、強い愛国心と信頼の元に活動して来たのに、その国家がいとも簡単に自分達を裏切ったという事実が、妻を黙らせ、夫を言葉による抵抗に向かわせます。
 先進国でも政府は平気で国民に嘘をつくし、個人を見捨てるということを原発事故で身に沁みた後では、国家権力とその嘘がいかに怖いか、この映画で更に強く感じさせられました。しかし、こうした生々しい話題をすぐに映画化する(できる)点でもアメリカはすごい。
 国家が自分を見捨てた時、個人としていったい何ができるのか。。ラストに登場する実物のヴァレリー本人の映像に拍手を送りたくなる作品です。
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by cheznono | 2011-11-05 23:54 | 映画

さすらいの女神たち

b0041912_2352438.jpg 公開を楽しみにしていたマチュー・アマルリック監督主演作品「さすらいの女神(ディーバ)たち」。何せ私の好きなマチュー・アマルリックが去年のカンヌで最優秀監督賞を受賞した映画なので、気合いを入れて観に行きました。
 最近パリでも話題になっているニュー・バーレスクショーの華やかさと、好き勝手に生きてきた中年男の悲哀とのコントラストが際立つ作品です。

 かつては人気のTVプロデューサーだったジョアキム(マチュー・アマルリック)ですが、パリにいづらくなって渡米。数年後、アメリカからニュー・バーレスクのダンサー達を引き連れてフランスに戻って来ます。
 ニュー・バーレスクとは年齢も体型もさまざまなダンサーが、それぞれが自分で工夫した演出で歌って踊るストリップ系のエンターテイメントのこと。女性の身体は自分達のもの、自分自身がその身体を存分に楽しませなくてはというコンセプトのもと、ノルマンディーのナイトクラブを皮切りに、彼女達はフランス各地でのショーを大成功させます。

  しかし、ジョアキムの組んだ巡業ツアーはなぜか大都市をはずして中小の港町ばかり。アメリカ人ダンサー達はパリでの公演を楽しみにしますが、実現できるかどうかおぼつきません。
 ジョアキムは、自分を業界から追放した仲間に一矢を報いたく、パリへ凱旋することを必死で画策するのですが、何せ資金がない。加えてその自己中心的かつ嫌味な性格が災いして、かつての同僚や大先輩、元愛人から次々とそっぽを向かれてしまいます。
 ダンサー達には虚勢を張ってみせるジョアキムですが、八方塞りに焦るばかり。自主独立精神に富むダンサーたちともしっくり行かなくなるのですが。。  
 
 才能はあるけれど周りはかなり迷惑、それでもどこか憎めない自分勝手な男をマチュー・アマルリックが実に楽しそうに魅力的に演じています。
 ジョアキムの本質を見抜きながら、自信と包容力で受け止めるダンサーのミミと彼女がふっと見せる孤独な陰がジョアキムのそれと呼応するあたりが印象的です。

  この映画で観客の男も女も湧かせるダンサー達は、みな現役のニュー・バーレスクのダンサーで、普段は個人で活動しているのだとか。今は女性だけでなく、男性の活躍も目立つというだけあって、この映画でもルイ14世のストリップが大うけしていました。
 実際にフランス中を公演して回ったニュー・バーレスクのサイト。
http://www.cabaretsnewburlesque.com/
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by cheznono | 2011-10-15 00:01 | 映画

ゴーストライター

b0041912_0575783.jpg ロマン・ポランスキー監督が昨年のベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した話題のサスペンス、「ゴーストライター」。大西洋に浮かぶ寒々とした孤島で展開するストーリーは緊張感にあふれ、まるで自分も殺伐とした島内にいるかのような気持ちにさせられます。
 「戦場のピアニスト」とは全く違う手法ながら、これも一種の反戦映画スリラーと言えるかもと思いながら、最後まで食い入るようにスクリーンを見つめていました。

 いつか本物の作家になりたいと願いつつ、ゴーストライターに甘んじている青年(ユアン・マクレガー)が、元英国首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝を1ヶ月で書き上げるという仕事をゲットします。
 破格の報酬を約束されたゴーストライターは、アメリカの孤島にあるラング元首相の別荘に招かれ、ラング夫人ルース(オリヴィア・ウィリアムズ)と秘書のアメリア(キム・キャトラル)の半ば監視下で、ラングについて取材を開始。
 しかし、元首相の忠実な右腕とも言われた前任者マカラが不可解な状況で溺死したこと知ったゴーストライターは、滞在先兼職場である別荘の居心地の悪さに加え、ラング自身とのインタビューでも違和感を感じます。
 そのラングは、イラク戦争中にイスラム系テロ容疑者を拷問にかけるべくCIAに加担した疑いがあると告発されていました。
 ケンブリッジ大学時代、政治には無関心だったというラングの言葉に矛盾を見出したゴーストライターは、前任者の死に深い疑問を抱くようになり、事実を探ろうとします。
 そして、かつては熱心な学生党員だった筈が、今や政治への関心よりも夫と秘書アメリアの関係に神経を尖らせているルースと心ならずも接近して行くのですが。。
 
 共同脚本も手がけた原作者ロバート・ハリスは、BBCの政治記者を経てトニー・ブレア元首相の就任中、首相の近くにいたという人物。だからこそ、アメリカに追随してイギリスをイラク戦争に巻き込み、多くの英国兵を犠牲にしたかどで告発されたブレア元首相をモデルにした政治スリラーには信憑性が感じられるような。。
 フランスではまるでブッシュのプードルと揶揄されたブレア氏、果たしてこの映画を観たでしょうか?

 ルースから女性関係のことを聞かれたゴーストライターが、過去に恋人以上パートナー未満の女性がいたと答えますが,うーむ?と考え込んでしまいました。原作では恋人も登場するそうなので、手にする機会があったら読んでみるつもりです。
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by cheznono | 2011-10-05 01:10 | 映画