カテゴリ:不思議の国フランス( 92 )

セクシーな見本市

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 秋到来でめっきり冷え込んだフランスで、唯一暖かく太陽いっぱいのコートダジュールに戻って来ました。お陰で蚊も元気なため、早速蚊よけの液体を購入。9月末ならもう蚊取り線香も液体ムヒもいらないだろうと高をくくっていたのが甘かったみたいです。
 フランクフルトで乗り換えたニース行きの便に、珍しく日本人の乗客がちらほら、というか結構目立ったので、今頃コートダジュールで何か催し物ものがあるんだっけ?と思いきや、ニースでエロティカ見本市が開かれたという情報をキャッチ。なるほど、だからドイツからの乗り継ぎ便に日本からの男性客が目立ったのか?!
 というのは冗談で、私が着いた日は今年のエロティカ見本市の最終日。なので、欧州内便で乗り合わせた皆さんは、純粋に観光か国際会議か何かのイベントにやって来たのでしょう。
 エロティカ・ドリーム見本市は、さまざまな大人のおもちゃの展示と説明、セクシーな下着の紹介、そしてポルノ女優達によるショーで構成され、入場に30ユーロもかかるのに、今年も盛況だったみたいです。
 女性やカップルでの来場も多くて、《もはやセクシートーイはタブーではなく、開けっぴろげに明るく語る時代》なのだそう。好きだねこの国は、と半ば呆れてしまいますが、このエキスポ、フランスだけでなく10月半ばにはオーストリアのシドニーで開催予定だし、既に世界あちこちで開かれていたのですね。もしかして、東京ビックサイトでも開催されていたりして? 
 見本市に出展したお店によるとオンラインショップが好調で、顧客の年齢層は25歳から80歳と幅広く、しかもお客の80%は女性なのだとか。別のお店もこの不況の中、昨年の売上高は前年より30%も高かったらしいです。
 地元紙が取材した去年のエロティカ・ドリーム見本市の様子は以下のリンクから。
 http://www.nicematin.com/video/salon%20erotica
 
 因みにこの見本市、次は12月にリール市で開かれます。
画像の絵画は、アンリ4世の公式寵妃ガブリエル・デストレとその妹
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by cheznono | 2010-09-29 20:24 | 不思議の国フランス

誤認逮捕の顛末

b0041912_17397.jpg バンジーが警察に捕まったらしい、と大家さんから聞いた時、「おお、ついに?」と思った私。なぜなら、彼は敷地内のガーデニング用品やガレージに置かれた資材などを無断拝借することで知られ、バンジーが通ると物が消えると囁かれていたのです。
 私の予約していたアパルトマンを昨年末に不法占拠した輩を手引きしたのも、実はバンジーではないかと疑われていました。
 ハンガリー人の平均月収は約500ユーロ(約62500円)と言われ、フランス人の平均の三分の一以下、加えて経済危機が追い打ちをかけているので、ニースにもハンガリーを初め東欧からの流入者が目立ちます。
 フランスに出稼ぎに来て2年余りになる23歳のバンジー君もその一人。ちょっとモラルには欠ける彼だけど、まさか他所で悪さするとは思えないのに、警察に捕まったとは!?
 そんなバンジー君ですが、飼い主に虐待されていた大型犬ロットワイラーを自分で引き取ったり、ネズミ獲り用に飼った子猫を溺愛するような優しい心の持ち主でもあるのです。

 しかし、よく聞いてみたら、バス停にいたバンジーの年格好が押し込み強盗未遂犯に似ていたというだけで、彼が警察にしょっぴかれたことが判明。まずいことにバンジー君はまだ仏語がイマイチのため、警察官とのやり取りもツーカーとは行かなかった模様です。
 しかも、警察に通報したヴィラのマダムにバンジーを見せたところ、「そう、この人だと思うわ!うちに押し入ろうとしたのは」と証言したため、ニース警察は気合を入れてバンジーを取り調べたのでした。バンジー、ピンチです。
 たまたま身分証明書を携帯していなかっただけで、なぜ自分が強盗未遂犯に仕立てられているのか、全く事情が飲み込めないまま、署で質問攻め合ったバンジー君、「殴られこそしなかったけど、警官の取り調べ方はものすごく乱暴だった!僕の携帯電話も床に叩きつけられたし」と後でぼやいていました。

 そして、家宅捜査状もないのに、警察官は彼の住まいを強制捜査。身分証明書は無事出て来たものの、身に覚えのない罪を被せられたバンジー君、強制捜査には内心ヒヤヒヤだったとか。  
 というのは、彼は夜勤が多くて不眠症ぎみのため、睡眠導入剤の代わりに寝る前にマリファナを吸う習慣があったというのです。フランスではマリファナは簡単に手が入るため、吸っている若者は多いようですが、非合法には違いありません。
 不幸中の幸いか、警察はベッド脇のマリファナには目もくれず、盗難品らしき物も発見できずに虚しく家宅捜査を終了。またバンジーを連れて署に戻った所に、くだんのマダムの夫から電話が入り、強盗未遂犯の仏語には訛りがなくて、バンジー君ではあり得ないことが判明しました。

 捕まってから半日後、晴れて無罪放免となったバンジー君。もちろん、ニース警察からは謝罪のひと言もありませんでした。やれやれ。
 それを聞いた大家さん、「なぜバンジーは弁護士を立てると言わなかったのかな?家宅捜査状もなしに自宅の強制捜査なんて、警察権力の横暴だよ。しかし、君も身分証明書は携帯してないとダメだよ、何があるかわからないからね」と私も釘を刺されました。

 何ともお粗末なニース警察の誤認逮捕劇。でも、現大統領になってからの外国人労働者の締め付けは厳しくなるばかり。日本人旅行者だから平気、と思っていても、日本人のフランス滞在は3ヶ月以内ならヴィザ不要であることを知っている警察官は稀というのが現状です。
 なので、フランス滞在中はやはりパスポートを常に身につけていた方が無難かも知れません。因みに隣のイタリアは、あまりにスリが多いので、パスポートのコピーがあればOKと聞いています。
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by cheznono | 2010-03-16 01:17 | 不思議の国フランス

ニースは安全か?

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  イタリア国境に近く、観光客も多いことから、決して治安が良いとは言えないニースやカンヌの犯罪率が、不況下にもかかわらず2009年はぐっと下がったとの警察発表がありました。フランスの大都市の中で、際立って犯罪が減ったのはニースだけ、とニース市は自らの治安対策と警察官の有能ぶりをアピール。でも果たして実態は、どんなものでしょうか?
 犯罪と言っても血生臭い事件は稀で、多いのはスリ、泥棒、空き巣、押し込み強盗の類。特に目立っていた路上に駐車中の二輪車や車の盗難がカンヌでかなり減少、ニースでも放火される車は大幅に減ったとか。
 車が放火?なんて恐ろしい街、という感じですが、さすがにニースの街中で車が燃えているというわけではなくて、被害は主にニース郊外の要注意地域に偏っています。
 路上の盗難が減った理由は、お巡りさんが増えたのとビデオカメラの設置が進んだから。とはいえ、ニースだけで一年間で2000台近いバイクと1000台余りの車が盗まれ、しかも空き巣と押し込み強盗は増加傾向で、昨年度ニースとカンヌで泥棒に《訪問》された世帯は4000件に上ります。

 そんな中、1月の末、ニースの我が滞在先から遠くない丘の上にあるヴィラに泥棒が入ったと警察に通報がありました。駆けつけたパトカーに、ヴィラのマダムが、「私たちが気づいたから何も盗られなかったけど、怖いわ。」と言うので、事情聴取をした警察官、犯人はどんな男でした?「そうね、白人の若い男で、身長が180cm位あったわ」そうですか、マダム、では犯人を探してみましょう。
 いくらラテン系で小柄な人が多い南仏と言っても、一応ヨーロッパなので、180cm位で若い白人なんてゴロゴロいるのに、警察はそれだけの情報を得て満足したのか、パトカーを転がしてヴィラ付近の探索を始めまたのです。

 その頃、いつもはスクーターで職場に向かう我らが隣人のハンガリー出身のバンジー君が、なぜかその日、一人ぽつんとバスを待っていました。そこへ通りかかったパトカー、バンジー君を見て、「おい、あいつの身長180cm位じゃないか?」と顔を見合わせたお巡りさん達、早速バンジーに近寄って、身分証明書の提示を要求したそうです。
 あいにく身分証明書を自宅に置いて外出したバンジー君、弁明しても警察官は有無を言わさず、署に来るようにとパトカーに誘導。バンジーは素直に警察署に連れて行かれたのでした。バンジーの運命はいかに? つづく
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by cheznono | 2010-03-13 01:15 | 不思議の国フランス

フランスと識字率

b0041912_1555949.jpg 「愛を読むひと」は欧州の識字率について考えさせられる映画でした。そして、昔むかし読んだ英国人作家ルース・レンデルの「ローフィールド館の悲劇」を思い出したりしました。
 この春、生地の買い出しに行ったニース郊外で、手の届かない高い位置にある生地のロールを見上げた私が、顔見知りのムッシュウに「あの生地はおいくら?素材はなんと書いてあるの?」と聞いた時、それまでニコニコしてた端正な顔のムッシュウが一瞬ぎょっとした様子でこちらを見たので、ぎくっとした私、「ひどい近視だもので、あんなに上の方のチケットは見えないのよ」と慌てて言い訳しましたが、ムッシュウは半信半疑だったような。。
 以前、トウールーズの生地屋さんで、ごく普通のフランス人マダムが手にした生地の素材を店員さんに尋ねていて、店員さんが「その生地のチケットにちゃんと書いてありますよ」と答えると、顔を赤くしたマダムが小声で「読めないのよ」と再度尋ねたのがとても印象に残っていますが、実は意外に高いフランスの非識字率。移民の多い国だから、という理由だけでは説明がつかないのが現状のようです。
 2005年にフランスの識字率向上機関が行った調査によると、18歳から65歳のフランス本土在住の成人で、国内で教育を受けた人のうち、読み書きに不自由している人は9%。なんと約310万人にあたります。内訳は6割弱が男性で、残りの4割が女性。そのうち、35歳上が75%を占め、45歳以上になると更にパーセンテージが上がります。
 読み書きが不自由だと最悪の場合、道路標識が読めない、案内の看板がわからない、切符販売機や現金支払機などの機械の操作ができない、小切手が書けないなど、かなり不便な日常生活を送ることになりかねません。そのため、教育省を初め、赤十字やNPO団体が読み書き力の向上を支援する機会を設けていますが、まだ目立った改善は見られないようです。
  読み書きが上手く身に付かなかった一番の理由は、学校で落ちこぼれてしまったとか、途中で行かなくなってしまったなどが挙げられるそうですが、調査機関も驚いたのが、310万のうち、57%は何らかの仕事についていること。失業中の人は11%だけ。フランスの失業率が9%近いから、非識字の人の11%は特に高い失業率とは言えないでしょう。残りは家庭の主婦や定年生活者のようです。
 約310万人の中に入院中の人やホームレス、受刑者たちは含まれていないし、18歳以下の若者の非識字率も4.8%。こういう数字を目にすると、外国人である我らの文法の誤用や多少のスペルの間違いは大目に見てねって、言いたくなってしまいます。
 因みに仏語のillettre=非識字の人を手元の仏和辞典で引いてみたら、「読み書きが完全には出来ない人」とありました。ありゃ、《完全》なんて日本語でも怪しい私です。
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by cheznono | 2009-08-01 01:56 | 不思議の国フランス

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  最近、海辺でトップレスになる女性が減ったのはなぜ?先週フランス2のニュースで思わず目が釘付けになった話題です。テレビの取材に答えていたのは、ニースの浜辺で日光浴をするビキニの女性たち。「トップレスになるのは恥ずかしい」と口を揃えていたので、さすがのフランス女性も結局そう言う結論にたどり着いたのねと苦笑してしまいました。

 初めてフランスに遊学した年の夏、ステイ先の大学生が、兄弟従姉妹たちとそれぞれのパートナーたち8人でヴァカンスを過ごしたカナリア諸島から戻った時、私の反応を伺いながら言いました。「浜辺に着くと、兄貴の彼女も従姉妹たちもみーんなトップレスになって、平気で日焼けしてたんだよ」
 恋人と二人きりならともかく、従兄弟たちのいる前でトップレスになるなんて、とてもついて行けない感覚じゃ、と思った私が、「恥ずかしがってなかったの?彼女たちの彼氏は何も言わなかったの?」と聞くと、「ぜーんぜん。なんで日本人は恥ずかしがるわけ?」と返されたので、「奥ゆかしいからよ」と言うと鼻で笑われたものでした。

 まだスペインが厳格なカトリック社会だった頃、女性の水着はワンピースと決まっていたのに、ビキニ姿でプールで泳ぐフランス娘二人を見つけた監視員が、「マドモワゼルたち、ここではビキニは禁止だよ。ワンピースで泳がなきゃ」と注意すると、きゃきゃっと笑った彼女たち、「いいわよ、ワンピースにするわ。で、どっちをはずしたらいいかしら?上の方?それとも下の方?」と聞き返したという小話は、実話だったりして?
 もっとも、毎年夏にセーヌ川沿いに設置される仮設ビーチ:パリ・プラージュでは、トップレスは禁止だそうですね。

 だんだん、庭でスッポンポンで日光浴をするマダムの存在にも驚かなった頃、コート・ダジュールに移ったら、案外海岸にトップレス女性が少ないのが意外でした。
 去年の夏、海水浴が苦手な私が珍しく友人につき合ってアンティーブの浜辺に出向いた所、「胸を焼いても気にしない?」って友達が遠慮がちに聞くので、きょとんとしたら、「胸を見せたら、日本人のあなたには不快かも知れないと思って」とのこと。「大丈夫、大丈夫」と言う私に、彼女は安心したようにビキニの上を外して転がっていました。「こんなに白いままヴァカンスを迎えるわけにはいかないわ」と言いながら。

 ともあれ、先週のニュースによると、今やフランス女性の8割が慎み深くなって、トップレスは恥ずかしいと感じているとか。ニースの海岸で取材されていた若い女性は、「トップレスなんて、ママたちかそれ以上の世代じゃない?」と笑っていたし、皮膚がんの危険も注目されている今、もはやトップレスは減少の一途にあるようです。「男性を魅了するのに何も全部見せる必要はありません」とアナウンサーは締めくくっていましたが、そもそもこんな話題が報道ニュースで取り上げられること自体、やっぱりフランスらしいのかも知れませんね。
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by cheznono | 2009-06-22 22:25 | 不思議の国フランス

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   「ベルサイユの子」が公開された時、「あの華麗なるベルサイユにもホームレスが住んでいることを知っていましたか?」がキャッチフレーズのように使われていましたが、フランス国内のホームレス人口は10万人弱、その1割近くがパリにいると言われています。パリ市民のスポーツやピクニックの場として人気の高いブローニュの森やヴァンセンヌの森にもたくさんのホームレスが住んでいるそうです。
 この10万近いホームレスの20%近くは未成年だし、「ベルサイユの子」のニーナのようにシングルマザーや別離の末に路上生活者となる若い女性も少なくありません。しかも、この春フランスの失業者は220万人を超えたため、家を追われる人の更なる増加が予想されますが、昨秋の金融危機後のアンケートで、フランス人の半数が「将来、自分もホームレスになる可能性が否めない」と答えたのにはさすがに驚きました。フランス人の二人に一人が、ホームレス問題は人ごとではないと意識しているわけですね。
 ただ、ホームレス=路上生活者というわけではなく、住宅補助を受けて安ホテルに長期滞在している人や簡易施設滞在者も含まれるので、実際に路上で生活する人は全体の1割程度にとどまります。
 その背景には、失業に加えて、パリ周辺や人気都市の慢性的な住宅不足と賃貸契約の条件の厳しさがあります。政府は断続的に低家賃住宅の建設に着手していますが、それでも全然足りなくて、住宅難は改善の兆しが見えません。
 何せ定収入があってもアパルトマンを見つけるのに何ヶ月もかかる人が多い程、住宅不足が深刻なパリで、いったん路上に出ることを余儀なくされた人たちが、新たにアパルトマンを借りるのは至難の業。パリを初め大都市にテントを設置して路上生活体験運動を展開した市民団体《ドンキホーテの子供たち》や空き家になっているアパルトマンの部屋などを占拠して住居のない人々を住まわせるという援助団体が、政府や市民にホームレス問題の深刻さを訴えていますが、経済危機が追い打ちをかけていることもあって、本格的に改善する日はまだ遠そうです。
 因みにニースのホームレス人口は約600人。パリやリヨンのホームレスは、一匹狼的に単独行動する人が殆どだそうですが、南仏はシェパードのような大きな犬を連れた人やグループで行動する人たちが目立ちます。
 欧州内からはもちろんのこと、アフリカやアジアなどから仕事を求めてフランスに渡る人が多い結果、路上生活者の約10%は外国人。ある時、日系の新聞に載った尋ね人広告に目が止まったことがあります。若い時に渡仏したまま、音信不通になってしまった中年の日本人男性を探す日本の家族が出した広告には、「最後の足取りは2年前で、リヨンのホームレスシェルターにしばらく滞在、その後、不明」とあって、とても切なくなったものでした。未だボヘミアンへの憧れが消えない私には身につまされた3行広告。この男性が今は無事に帰国して、ご家族と再会していることを祈るばかりです。
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by cheznono | 2009-05-29 23:47 | 不思議の国フランス

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  3月初旬にカンヌ行き長距離バスに乗って、ヴィルヌーブ・ルベまで買い出しに出かけた時のこと、満員のバスの後ろの席で、携帯電話で夢中でしゃべっている女性がいました。初めは何だかいやにうるさいなと思いつつもさして気にしなかった私ですが、大声の会話は長々と続きます。
「だからねムッシュウ、あなたもソーシャルワーカーに相談するか、自力で見つける努力をして下さい!私だって子供二人抱えて必死なの。とにかくあと1週間しかないんだから、何とか住む所を見つけなきゃ」と穏やかならぬ内容に思わず振り返ってみると、声の主は40代くらいの普通の身なりのマダムでした。
  フランスでは11月1日から3月15日までの4ヶ月半の寒い期間、たとえ家賃を滞納しても、借家人がアパルトマンを追い出されることはありません。寒空に住居を追われ、急遽派遣村で年越しを余儀なくされるということは、フランスでは起こらないように法律によって規制されています。
 毎年、このアパルトマン強制退去停止期間が終わる3月半ばを心待ちにする家主と、途方に暮れて迎える家賃未納の借家人はかなりの数に及びますが、今年は金融危機の真っただ中。失業などで1ヶ月以上の家賃未納の所帯はなんと180万、そのうち深刻なケースは約50万世帯と言われています。
 事態を憂慮した住宅担当大臣が「強制退去停止期間が過ぎても借家人をホームレスにしない」と幾つかの対策を示して家主に呼びかけましたが、家賃収入を当てにしている家主側が聞く耳を持たないのは明らかだと、住まい退去に該当する世帯を支援する30余りのNPO団体が、3月初めからあちこちでデモを打っています。
 こうした支援団体は、未納借家人を住居から追い出さないことや高過ぎる家賃の是正を要求。強制退去停止期間の終わった先週はパリで山のようにマットレスを積み上げて、政府や家主に抗議を訴えていました。

 私がバスの中で聞いた会話は、その借家人退去停止期間が切れる1週間前。くだんの女性も子供二人と一緒に住まい退去を迫られているらしく、やっと電話の相手を説得して大声の長電話がすむと、また携帯を手に今度はさすがに声を落として話し始めました。「うちのお隣のムッシュウも困っていて、今電話で話したんですけど、、私は500ユーロまでなら払えますから、ワンルームで良いのでなんとか見つからないでしょうか?」フランスも住まいを借りる時には通常2ヶ月分の敷金を払わないといけないし、何年にも渡る給与証明や保証人を求められたりと賃貸契約にこぎつけるにはかなりの労力と資金が求められます。なので、いったん住まいを追い出されると次を見つけるのは至難の業。誰かの支援か補助がないとまず難しいのが実情です。
 「それにしても、個人的な深刻な話を、なんでバスの中であんな大声で電話してたのかしら?」といぶかう私に、同行の友達は「子供を抱えて自分が住まい退去の瀬戸際にいるということを皆にわかってほしかったんじゃないかな?」なるほどね。このひと言で、自分なら恥ずかしいからこういう話を公共の場所で電話するなんて考えられないと思った私は、とても日本的だったんだと思い知りました。
 普段は皆バラバラ、自分勝手に行動している人間の多い国という印象のフランスですが、困窮している人を前に団結する姿勢にはいつも関心させられます。30を越す支援団体が、借家人退去を止めさせようと全国で運動していることは毎日報道されているので、バスの中の女性も自分の問題を知らない乗客たちと分かち合いたかったのですね。あれからちょうど2週間、くだんの女性が無事に子供たちと新しい住まいに落ち着いていると良いのですが。。
  *写真だけは明るくマントンレモン祭。
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by cheznono | 2009-03-23 01:42 | 不思議の国フランス

死刑執行人サンソン

b0041912_17232535.jpg フランス革命の際、38歳で処刑された国王ルイ16世が、最後まで冷静さを失わず、いかに毅然として断頭台に消えて行ったかを記した、国王の死刑執行人シャルル-アンリ・サンソンの手紙がロンドンでオークションにかけられたという記事を目にしたのは数年前。先日、近所の古本屋さんで、安達正勝著「死刑執行人サンソン〜国王ルイ16世の首を刎ねた男〜」を見つけ、その面白さに夢中になりました。
 浪費家の華やかな王妃マリー・アントワネットの陰で、あまり風采のあがらないお人好しの君主というイメージが強かったルイ16世ですが、近年、そのパーソナリティが見直され、この本でもフランス革命までは国民に絶大な人気を誇ったなかなかの名君だったという史実が浮き彫りにされています。
 一方、人から忌み嫌われる死刑執行人の家に生まれた4代目のシャルル-アンリは、世襲制のこの仕事を父親から引き継ぎ、裁判所の下した判決に基づいて、自分の意に反した拷問や処刑を行う傍ら、医者としても活躍します。代々、人の遺体を扱う仕事をして来た死刑執行人の一家は、かなりの水準の医学を身につけていて、貴族から平民まで多くの患者を看たようです。道で会っても顔を背けられるようなおぞましい職業とされた死刑執行人ですが、その反面、独自の診療法で病人から頼りにされ、医者として結構な収入を得ていたというのはとても興味深い事実だと思いました。
b0041912_1724291.jpg 太陽王ルイ14世やルイ15世が贅を尽くした生活の中、しこたまお金を使った後で、思慮深く善政を行ったと言えるルイ16世をとても尊敬していたシャルル-アンリ・サンソンは、フランス革命を機会にこれまでの絶対王政から立憲君主制を国王と共に目指すことを強く望みますが、幽閉されたルイ16世は、処刑の有無を問う国民議会に置いて、わずか1票差で死刑判決が確定してしまいます。
 何度か言葉を交わし、その人となりを心から尊敬していたルイ16世を自らの手で処刑しなければいけなくなったサンソンの苦悩は、想像を超えるものだったようです。
 若き日には伊達男だったというサンソンが、まだ貧しいお針子だった頃のデュ-バリー伯爵夫人(ルイ15世の公式寵妃)と火遊びをした過去があるにもかかわらず、その30年後、泣き叫んで取り乱す彼女を群衆の前で処刑しなければいけなくなったというから、運命とは皮肉なもの。時にデュ-バリー夫人50歳。
 ルイ16世の処刑後、いっきに恐怖政治へと突入する行き過ぎた革命のお陰で、ベテランのシャルル-アンリでも頭がおかしくなりそうなほど次から次に人々の首を刎ねなければいけなくなる顛末が淡々と綴られ、たまたま時代のドラスティックな変革期に居合わせた人たちの悲劇に身震いしてしまいます。そのサンソンの生涯をかけた願いが死刑反対で、死刑は廃止すべきというものでした。
 昨秋、同じ著者による「物語フランス革命」も出版されています。
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by cheznono | 2009-01-28 17:26 | 不思議の国フランス

去り行くイギリス人

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 ここ10年余り、好調な経済とポンド高を背景にフランスを初め、地中海沿岸の国に引っ越したり、別荘を買ったりしていたイギリス人たちが、金融危機のあおりを受けて、今やすっかりバブルがはじけた本国に続々引き上げているそうです。
 フランスで物件を探す英国人の姿が特に目立って来たのは、21世紀に入った頃から。もともと何度もフランス領になって来た大西洋側のペリゴール地方にはイギリス人社会があり、ボルドーからほど近い地の利や、独特の景観が人気で、この地方に家を買う英国人は多かったのですが、ここ10数年はトウールーズからモンペリエ、ピーター・メイルの影響を強く受けたプロヴァンス地方に別荘を求める人が倍増していました。ロンドンを初め本国の地価が日本のバブル期を越えて上昇したため、フランスやスペイン、イタリアなど温暖な国に住まいを求める人が増えた結果です。
 もしろん、19世紀からイギリス人の避寒地として注目されていたニースなど、気候の穏やかなコート・ダジュールで退職後の生活を送る人も多く、彼らの落とすお金で地元は潤ったのですが、お陰で地価はうなぎ上りに上昇。「2000万円で買った古家を更に2000万円かけてリフォームする英国人」が物件を買いまくったゆえ、南仏も住宅バブルに湧いて、気がつけばフランス庶民の手が出ない値段に跳ね上がったアパルトマンも多くなっていました。
 私も一昨年まではニースの町中で、不動産やさんに案内されてアパルトマンを探す熟年イギリス人カップルを何度も見かけたものです。そこへ金融危機が発生。250円近かったポンドは今やその半分に迫る急降下で、半年ちょっと前までの地下鉄初乗り1000円してたロンドンもぐっと暮らし易くなっているでしょう。
 しかし、年金で悠々自適のフランス生活を送っていたイギリス人には晴天に霹靂の経済変化に違いありません。1年前まで週に2回はレストランで外食し、お買い物に旅行にとフランス生活を謳歌していた彼らにとって、ポンドの急下落は超インフレと同じ。せっかく買った住宅のローンも重くのしかかっている場合はなおさらで、フランス暮らしに見切りをつけ、イギリスに戻る大脱出がちょっとした社会現象になっています。
 仏語を全然話そうとしない英国人たちが、せっせとお金を使ってくれるのはいいけれど、彼らが物件を買い占めたために地価が急上昇するのはありがた迷惑とぼやいていた地元の人は、去り行く彼らの後ろ姿を見ながら、今どんな気持ちでいるのしょう?
 ここ数年、耐え難きを耐えてポンド高やユーロ高を凌いで来た日本人滞在者は、去り行くイギリス人の気持ちがわかるような気がするのですが。
 写真はバレンタインデイの迫るロンドン。
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by cheznono | 2009-01-17 02:04 | 不思議の国フランス

フランス一住み易い街

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 今年、フランスで一番住み易い地方に選ばれたのは、バラ色の街と呼ばれるトウールーズを中心としたオートガロンヌ県。
 住み易さ=質の高い暮らしの基準は、気候、仕事、物価、健康、治安、文化、環境などで、どのポイントも高かったのが、気候が温暖で、エアバスを初め産業に恵まれ、家賃もそこそこ、物価が安定していて、長寿が多いというオートガロンヌ地方でした。ここは毎年上位にノミネートされているから、住み易さには定評がある地域と言えるでしょう。
 暮らし易い県2位はフレンチバスクやポーのあるスペイン国境のピレネー・アトランティック県。3位はぐっと北に上ってブルターニュ地方のレンヌやサンマロの辺り、4位がリヨンの東、グルノーブルのあるイゼール県。5位がボルドーを中心とした地域。6位がモンペリエのあるエロー県。
 比較的南が人気ですが、都会人が憧れる田舎暮らしの代表、プロヴァンス地方が上位にノミネートされないのは、人口10万人以上の都市が少なく、大都市マルセイユはパリと同じく、生活水準の差が大きいためとか。
 プロヴァンスで住み心地が良いのは、都市よりもリュベロンの山麓に数あるのどかな村々でしょうか?でも、村と村がかなり離れているし、車がないとにっちもさっちも行かないのはネックでしょう。
 1位のオートガロンヌ県のある南西フランスは、プロヴァンス地方と同様にローマ時代から南仏の豊かさを享受して来た地方で、その豊かさと独自の文化や宗教のために、ローマ法王に睨まれて、戦争の渦に巻き込まれたことでもプロヴァンスと共通する点があります。
 因みに本土96県のうち、ニースやカンヌの辺りは14位で、まずまず。マルセイユ、エクス・アン・プロヴァンスのあるブッシュ・ド・ローヌ県は22位。私の経験でも、1位のオートガロンヌ県は、コートダジュールに比べて遥かに暮らし易かったから、この人気投票は納得のいく結果です。
 写真は、オートガロンヌの主都トウールーズのサン・エチエンヌ教会。バラ色の街の由来であるガロンヌ河から採れた赤土で建設されています。
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by cheznono | 2008-12-13 17:57 | 不思議の国フランス