カテゴリ:不思議の国フランス( 92 )

南仏のゴヤ美術館

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 フランシスコ・デ・ゴヤは、スペイン王室の宮廷画家でありながら、フランス革命がもたらした自由主義的な思想に賛同していました。ナポレオンによって即位した新国王(ナポレオンの兄)は、まず異端審問を廃止し、スペインの近代化改革に意欲的でしたが、教会の反発を招き、やがてフランス軍の占領に対する国民の不満も噴出したため、スペイン独立戦争へと発展。
 動乱の末、ナポレオンによって追放されていたカルロス王一家がスペインに帰還して、自由主義者迫害が始まりました。
 大病の後遺症で聴力を失っていたゴヤは、療養を口実に78歳にしてフランスに亡命し、4年後、ボルドーで亡くなっています。

 ローマ時代からの古い歴史を誇り、スペインのサンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の道筋として発展した町、カストル。アルビとカルカッソンヌの中間に位置し、運河沿いの古い家並みがきれいなこじんまりとした町は、ヴェニスのように運河に浮かぶ船から直接家に入れるように、運河沿いの家の基礎に入り口が作られている設計が目を引きます。
 ベネディクト派の大聖堂を初め、見所が点在するカストルの町により魅力を添えているのが、古い司教館を利用したゴヤ美術館と言えるでしょう。ヴェルサイユ宮殿の建築家による建物の中は、ルーブル美術館に次ぐ、スペイン系の画家のコレクションを誇っています。所有しているゴヤの絵は3枚で、他に挿絵に使ったと思われるゴヤの版画シリーズも楽しめます。
 結構見所があるにも関わらず、あまりガイドブックには載っていないカストルですが、この夏、フランス中がこの町に注目する事件が起こりました。サルコジ大統領が夫人のカーラ・ブルー二と南仏でヴァカンスを楽しんでいた8月、平和維持軍としてアフガニスタンに駐留中の仏軍が待ち伏せ攻撃に合い、兵士10人が亡くなって、数十人が負傷したのです。
 犠牲になった兵士の大半が、カストルの海軍基地出身者だったため、パリでの国葬の後、カストルでも告別式を行って、町は悲しみに沈みました。小さい町だから、兵士達と顔見知りの住民も多かったようです。
 この事件はフランス中に衝撃を与え、仏軍をアフガニスタンに駐留させておくことへの反対意見が多く見られましたが、サルコジ大統領は迷わず駐屯の続行を決定、今もその是非が問われています。
 写真は、ルイ14世の庭師だったル・ノートルの設計によるゴヤ美術館の庭。ヴェルサイユ宮殿の庭と共通するスタイルで、南仏でこういう幾何学的に作り込んだ庭に出会うと、ものすごく新鮮に感じられます。
*ゴヤ美術館
Hôtel de Ville – B.P. 406 – F- 81108 Castres
+33 (0)5 63 71 59 30
goya@ville-castres.fr
月曜休館
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by cheznono | 2008-10-20 17:00 | 不思議の国フランス

日本人の評判

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 さて、ベスト・ツーリストで一等賞に輝いた日本人は、フランスでももちろん評判が良く、私も「(お客としての)日本人を紹介してほしい」と頼まれたり、郵便局で「こんなにきちんと税関用書類を書き込むのは、日本人しかいないよ」とおだてられたり、行きずりの人から「もの静かで真面目で、日本人、大好きよ」と言われたりすることがあります。
 日本人はおとなしくて、礼儀正しい。態度が穏やかで丁寧。お金払いが良い。しかもきれい好きで親切。というイメージが結構定着しているので、日本人はホテルやレストラン、お店のお客として歓迎されるだけでなく、アパルトマンやホームステイの滞在者としても好評なのは、嬉しいですね。
 とはいえ「おとなしくて控えめで、お金払いが良い」は、裏を返せば控えめな国民性の上にあまり外国語を話さないため、不満があっても苦情を言わない、お金も要求されるままに支払う、だから「良いお客さん」という面もあるので、その点は要注意かも。
 定期的に学生をホームステイさせているあるマダム。ある日、客間の古びたカーテンを強く引いたら、上部が少し裂けてしまったのですが、その部屋にステイしていた日本人の学生のせいにして、カーテン代を弁償させたとか。「《あなたのせいよ》って言うと、日本の子は素直に払うのよ」って、マダムは笑っていたそうです。
 「あなた達はとにかくおとなしくて金持ちと思われているんだから、利用されないように気をつけて」と、マダムから直接その話を聞いた友達は、忠告してくれました。
 私を初め、このユーロ高で毎回学生並みの節約生活を送らざろう得ない日本人は多いと思うのに、フランス人が持ちがちな「ルイ・ヴィトンをいくつも買い込むお金持ち日本人」や「羊のように自己主張をしない日本人」という偏った印象には、閉口させられます。
 かなり前ですが、パリのデパートでさしあたって必要な化粧品を1つだけ買ったら「日本人なのに、それだけしか買わないの?」って言われ、思わず「貧乏な日本人もいるのよ!」って言い返したことも。つづく
 *写真は、ニースのアジア美術館。白鳥をイメージしたという大理石の建物は、丹下健三氏による設計で、この夏からここも無料になりました。
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by cheznono | 2008-09-22 01:46 | 不思議の国フランス

ワースト3位のフランス

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 東京もさぞかし暑いだろうと覚悟して帰国したら、意外に涼しくて嬉しかったのもつかの間。蒸し暑さと激しい雨が交互に繰り返されるおかしな気候のせいで、夜中の虫の声も心なし弱々しく聴こえます。しかし、またも首相が突然辞めてしまうとは。。洞爺湖サミットで日仏交流150年記念をふまえた日本側のラブコールを無視して首相との会談を断り、フランスへとんぼ返りしたサルコジ大統領は、日本軽視とか苦手なシラク元大統領への当てつけとか噂されましたが、もしかして意外に洞察力があったのかも?

 ヴァカンス突入前にアメリカの最大手オンライン旅行予約会社が発表したベスト・ツーリスト2008で一位に輝いたのは日本人でした。世界31カ国のホテルに旅行者のマナーなどをメールでアンケート調査した結果、礼儀正しい日本人が最良のお客さんに選ばれた一方、フランス人はワースト3位に。
 さすがに恥ずかしかったみたいで、フランスの放送で「なぜ我々がワースト 入りしてしまったのでしょう?」というキャスターの疑問に、旅行ライターが「フランス人は仏語しか話そうとしないし、海外でも態度が横柄なんですよ」と分析していましたが、ホテルでのお行儀もあまり良くないようです。
 休みの度に海外へ旅行しているニースの友達にこの話をすると「確かにヴァカンス先でのフランス人のマナーはほめられたものじゃないけど、イタリア人はその上を行くわ」とのこと。例えば彼女がバリ島を旅した時、村をあげての告別式を見学していたイタリア人が、図に乗って棺の端に足をかけ、仲間とはしゃぎながら写真を撮っていたとかで、どうも目に余る態度を取る観光客はイタリア人に多いという感想でした。
 日本人に次いでベスト・ツーリストの二位に入ったのがドイツ人とイギリス人。ヨーロッパでは、きちんとしたマナーで時間厳守、約束もちゃんと守るという真面目な国民性として、よくドイツ人やスイス人があげられますが、フランス人に言わせると「彼らは自国で規律正しく生活している反動で、フランスに来るとたがが外れて、平気で道を汚したり、大騒ぎしてるのをよく見かける」のだとか。
 彼らがドイツやスイスから国境を越えてフランスに入ると急に羽目をはずしてしまうのは、旅の恥はかき捨てだから?いえ、きっと郷に入っては郷に従えで、普段はお行儀の良い彼らもフランス人のふるまいを見て、自分もやってみたくなってしまうのではないでしょうか?
 犬の落とし物だらけの歩道、バスの窓から平気でお菓子の秋袋をポイ捨てするマダムや、スーパーでお会計前のキャンディーの袋を開けてあめ玉をなめるマダム、走行中の窓から顔を出してののしるドライバー、平気で前後の車にバンパーをぶつけながら乱暴に車を発進させるドライバーなどなどを目にすると、たいていの日本人は目を丸くしてしまいますが、なーんだ、この国はそういうことをしていいのかってつい真似したくなってしまう外国人も多い気がします。
 エスプリの利いた会話や創造性、独特のセンスなどフランス人の長所は一朝一夕で模倣できるものではないけれど、悲しいかな、悪ふざけやいい加減さ、行儀の悪さなどは簡単に真似できちゃうから、つられてやってみたくなってしまう輩は後を絶たないわけで、こうした外国人の悪口で盛り上がるフランス人たちを見かけると「隗より始めよ」とか「人の振り見て我がふり直せ」ということわざを贈りたくなってしまう私です。
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by cheznono | 2008-09-02 01:18 | 不思議の国フランス

ヴァカンス大国の憂鬱

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 年間5週間の休暇が保証されているヴァカンス大国フランスも、インフレ、購買力の低下、ガソリン高などの経済不安に加え、天候不安な冷夏だったため、この夏のヴァカンスは出足が鈍り、旅行に出かけたのはフランス人の二人に一人だけ(子供は三人に二人)だそうです。
 普段なら人気のヴァカンス先である大西洋沿岸のノルマンディーやブルターニュ地方は、例年に比べてお客が激減。一番人気のモン・サン・ミッシェルでさえ今年は観光客が減ってしまい、稼ぎ時の夏の筈が思わぬ事態に、地元はがっかりでしょう。
 全国的に雨がちで涼しい夏なのを物ともせず、唯一コートダジュールだけは常に太陽ギラギラ、外国人旅行者が多いこともあって観光客は殆ど減っていません。
 とはいえ不況入り目前の今、誰しも財布の紐は固く、ヴァカンス旅行に出かけた人もレストランに行く回数を減らして、レジャー費用を節約、お陰でパン屋さんはほくほくとか。高い外食を避けて、パンやサンドウィッチを買うヴァカンス客が増えたためでしょう。
 なので、キッチン付きの短期貸しアパルトマンはこの夏も予約でいっぱいです。家族や数人の友達と滞在型の旅行を楽しむ場合、ホテルに比べて短期アパルトマンは経済的だし、お茶一つ湧かすのにも便利です。しかし、遠くからニースにやって来た外国人はともかく、フランス人は自分の普段の生活をヴァカンス先のアパルトマンにも期待する傾向があって、洗濯機がない、テレビのチャンネルが少ない、壁の絵が気に入らない
など文句も多いから、大家さんも大変ですね。
 イスタンブールから来た日本人の友達とグラースに行った時、お昼に9ユーロのパエリアを注文して、飲み物は頼まずに「お水を下さい」って言ったら、レストランのパトロンらしきムッシュウが「まったく財布の紐が固いねえ。皆んなの危機だよ、これは。」って呟いたので、思わず苦笑い。その後、お水はいっこうに出してもらえず、喉からからでイライラし始めた私たちが催促しても、パエリアが来てからも、お水がなかなか運ばれて来なかったのは、飲み物をまないお客へのリベンジだったのかも?
 写真はニースの北にある鷲ノ巣村ル・ブロックのレストラン。
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by cheznono | 2008-08-24 22:26 | 不思議の国フランス

フランスの現実

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 さて、パリに到着して、難なく入国審査は通過したものの、案の定、空港お迎えサービスはやって来ませんでした。
 そんなこんなで鉛のように疲れ、体調は良くなかったけど、何とか無事にパリを通り過ぎてニースに戻ってから早くも一週間。東京やパリと違って、とたんに時間の流れがゆっくりになった感じです。
 しかし、生地を買えばワインをこぼしたような大きなシミが見つかるし、名の知れたメーカーの豆乳を開けたら、口に黒いカビがついてるし、帰国便を予約しようとしたら8月は全部満席と言われるし、なかなかスムーズにことは運びません。幸い、生地と豆乳は返品交換して貰えたから良かったものの、帰国便が取れなければ、全日空に「だから言ったことじゃない」と言われそうです。
 長年、腰痛と足の痛みに苦しんでいた友達は、去年の暮れ、私の帰国直前にフランスでも指折りの外科で手術を受け、今も療養中。整体や指圧などいろいろ試した末に、彼女が思い切って手術に踏み切ったのは、担当医に「生まれつき骨が歪んでいるせい。この腰痛から解放されるには手術しかありません。いったん手術をすれば痛みから解放され、あなたには新しい人生が開けますよ」と説得されたから。
 職場を休む手配を整えて、ようやく手術に臨む決心をした友達を支えたのは、外科医から約束された「痛みのない新生活」だったのに、術後半年経った今、彼女は杖が離せず、腰と足が麻痺している上に、骨の痛みに悩まされています。週に3回、リハビリに通い、高価な検査を何度も受けても理由がはっきりせず、痛みは手術前よりひどくなっているとか。本来なら、とっくに職場復帰している筈だったのに、まだ休養中です。
 なまじ評判の高い病院で手術を受けたため、先生方は絶え間ない患者を次々看るのが精一杯で、一人にあまり時間をさけないらしく、この点は日本の現状と変わりませんね。
 担当医は「痛みも時間の問題、時が経てば解決する」と言うばかりだそうですが、痛み止めを飲みながら、腰痛や麻痺と戦う彼女は、あと半年経っても改善されない場合は、病院を告訴せざろう得ないわと言っています。
 加えてこの週末、久しぶりに晴れたので、隣の若いハンガリー人のカップルが、愛犬の小さいヨークシャテリアを連れて海岸に行き、波と遊んでいたら、ちょっと目を離したスキにヨーキーが消えていたとかで、泣いていました。混んだ浜辺で、リースなしでヨーキーを離していたのも問題だけど、ほんの5分か10分で消えてしまったそうで、いくら探してもいないため、誰かに盗まれた可能性が高そうです。動物保護団体に電話したり、必死で海岸やプロムナード・デザングレ辺りを探していますが、果たして無事に見つかるかどうか。。
 全く「これが、フランス。フランスの現実よ」と苦笑いする毎日です。
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by cheznono | 2008-06-09 20:54 | 不思議の国フランス

遠かったパリ

b0041912_22334741.jpg 大きなトランクと旅行バッグに登山用リュックサックという、国際バッグレディのようないでたちド・ゴール空港に降り立ってから、明日で一週間。パリではぐったりしていましたが、ニースに落ち着いたらだいぶ元気になりました。
 ニースに戻った夜に友達が用意してくれたのは、アスパラガスのオランダソース和え。マギーのオランダソースのもとを溶いただけらしいですが、もしかしたらこのアスパラのお陰で、元気が回復したのかも。
 なぜこんなにも体調が落ちてしまったかというと、まず出国が大変でした。本来予約してリコンファームもしていたスイス航空が、オーバーブッキングのため、たまたまパリまで飛ぶ予定の私を急遽全日空の直行便に振り替えたので、ある意味ではラッキーな出だしの筈。
 しかし、そうなると到着時間も到着ターミナルも変わってくるため、パリでお迎えサービスを予約していた私は、突然の変更でまたお迎えが来ないで、空港にほったらかされるのではと不安になりました。
 スイス航空は、連絡のための国際電話代も持ちますと言ってくれましたが、パリのオフイスが開く時間には、私は既にシベリア上空の筈。そのため、フランス時間で朝が来たら、お迎えサービスに私の到着時間などの変更を知らせてもらうようスイス航空にお願いして、それでも心配なので留守宅の家族にも先方にFAX を送ってもらうよう頼んで、やっと全日空のカウンターでチェックイン。
 ところが、日本への帰りの切符を持っていないという理由で、あやうく全日空から登場拒否をされそうになり、すっかり動揺してしまいました。いわく、「日本経由で欧州にもぐりこむ某国人と混同される可能性があるため、先方に入国できずそのまま帰国便に載せられてしまうこともあり得ます」とのこと。まさかそれって強制送還?!
「当方も航空会社としての責任がありますから」と言われましたが、これまで何年間も往復を繰り返して来て、一度も入国時に質問をされたことすらありません。第一、某国人はパスポートを偽造しない限り、やはり某国のパスポートで欧州に入るのではないでしょうか?それとも、日本経由だとパスポートもすり替わるとか?
 まあ、到着時にはまだパリの旅行代理店が営業している時間だから、万が一の時は入国審査官の前で帰国便を電話予約すれば良いし、と思った頃、私のパスポートにある成田出国と帰国の定期的なベタベタのスタンプを確認した担当の方が、やっと搭乗券を渡してくれたので、彼らの気が変わる前にと私はそそくさとゲートに急ぎました。
 後でパリ在住の人からも「日本入国時なんて、外国人は帰国便の切符がないと絶対に入国させてくれないから、全日空の心配は当たり前」と聞いたので、次回からはちゃんと帰国便の予約を入れてから、出国しなくてはいけませんね。
 とはいえ、私としては旅行者を相手国に入国させるかどうかの判断は、日本の航空会社ではなくて、やはりその国の入国審査官に下してもらいたいですが。
 それにしても、欧州系のエアーに比べて、全日空の機内サービスのきめ細かいこと。スチュワーデスをお嫁さんにしたいという男性の夢がよくわかる気がします。思えば、会社員時代はずいぶんお世話になった全日空の直行便。今はなかなか乗れませんが、今回は満席の中、他社からの招かざる客である私を乗せてくれて、本当にありがとうございました。
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by cheznono | 2008-06-03 22:48 | 不思議の国フランス

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 「地上5cmの恋」では、黒人ジャズシンガー、ジョセフィン・ベイカーの歌にのってヒロインが踊り出すシーンが随所に入って、映画をより魅力的に見せていますね。
 1920年代からパリで一世を風靡したジョセフィン・ベイカーについて私が知ったのは、ボルドーの東、ドルドーニュ地方の田園の丘に建つラ・ミランド城を訪ねた時でした。セントルイス出身のジョセフィンは、歌とダンスの卓越した才能がありながら、黒人であるがため差別された故国アメリカよりも、自分を大スターとして高く評価してくれたフランスを愛し、第2次大戦中はフランスのレジスタンス活動に協力します。
 戦後、風光明媚なドルドーニュの人里離れたラ・ミランド城を買い取り、莫大なお金をかけ城を自分の理想に合わせて改修。テニスコートやミニ・ゴルフ場も作り、城の農園には大量の鶏や牛、豚や孔雀を飼ったそうです。
 その頃、フランス人の指揮者ジョー・ブイヨンと5度の目の結婚をしたジョセフィンは、すっかりリフォームした城に養子を迎える計画を進め、1954年に来日して、まず2歳の孤児アキオと養子縁組。それから、北欧に飛んで白人の孤児を、南米に飛んでヒスパニックの子を、アフリカやインドに行ってまた孤児をと、地元フランスの孤児も含め、肌の色や宗教の違うあらゆる人種の子供たちを次々に養子に向かえ、ラ・ミランド城で養育します。《虹の大家族》と名づけた孤児の総勢12人。
  故郷セントルイスで、父親に見捨てられ、母親には虐待とネグレクトを受け、貧しさと人種差別の中で悲惨な幼児期を送ったジョセフィンは、その不幸な生い立ちのためか孤児たちにのめりこみ、贅沢なものを与えて、教育費も惜しげなく使いました。
 政治的活動や社会運動にも貢献したジョセフィンのコンセプトは素晴らしかったのに、パリの大スターだったゆえか、金銭感覚には欠けていたようです。
 夫ジョー・ブイヨンも父性愛が強かったため、初めの数人を養子にした頃は協力的でしたが、妻が世界中からどんどん孤児を集めて来ては湯水のようにお金を使うのに閉口して、パリへ別居。そのまま離婚に至ってしまいます。
 城の改修と12人の孤児たちの養育費、加えて、年間何十万人という訪問客をもてなす費用など、彼女の借金はうなぎ登り。やがて債権者が城に押しかけて来ます。ついに破産したジョセフィンに債権者が城の明け渡しを迫ると、彼女はなりふり構わず猛烈に抵抗。追い詰めらたジョセフィンは、群がる債権者や記者をシャットアウトして、ラ・ミランドに篭城を決め込みます。
 八方塞りのジョセフィンに救いの手を差し伸べたのは、モナコのグレース王妃でした。同じ米国出身で、友人でもあったグレース王妃は、モンテカルロの屋敷に彼女と孤児たちを引き取ります。その頃、アルゼンチンでフレンチ・レストランを始めていた前夫ブイヨンも、孤児の一人を引き取ったようです。
 68歳でパリで最後の公演中に亡くなったジョセフィンは、今もモナコの墓地に眠っています。
 15世紀に建てられたルネッサンス様式のラ・ミランド城は今、お城の多いドルドーニュ地方でも、一番人気を誇る観光名所。フランス革命でかなり破壊されたため、その後19世紀に再建され、現在はジョセフィン・ベイカー記念館をかねています。ステージ衣装を初め数々の記念品や、ジョセフィンがこの城に託した夢が再現されていて、訪れる人はその壮絶な人生をたどることができるでしょう。城の庭では、ふくろうやミミズク、鷹など猛禽類の小屋も楽しめます。
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by cheznono | 2008-03-30 01:46 | 不思議の国フランス

そして、恋の終わり

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 「イングリッシュ・ペイシャント」のアンソニー・ミンゲラ監督が54歳で亡くなったのですね。去年観た「こわれゆく世界の中で」の印象がまだ残っているのに、とても残念です。
 さて、ホワイトデイが過ぎてしまいましたが、バレンタインにシネマで出会ったベアと青年の話に戻りますね。ベアもその仲間も「つかみどころがなくて、なかなか心を開いてくれない」と感じた青年でしたが、それなりにかっこ良いし、ベアと会うのも嬉しそうです。
 「確かに彼は31歳のフランス人にしてはシャイで神経質そうだけど、年上の自分がリードして付き合えば、もっと打ち解けて親密になれるわ。」3回目のデートで、ベアは彼を自分の2Kのアパルトマンに招待しました。
 広くはないけれど居心地の良いリビングで、チーズをつまみながらワインを片手に語り合う二人。夜も更けて、いい雰囲気です。ジャン・ジャック・ゴールドマンのCDを聞きながら、楽しげに話すベアの横で、彼はひっきりなしに煙草を吸ってましたが、ムードは高まって来て、、、
 ここまで、にやにやしながらいきさつを聞いていた私たちに、急にベアが声を潜めて言いました。「でもね、彼は今まで一度も女性と付き合ったことがないって告白したのよ」ええっ、31のフランス人が!?
 どうも彼は神経過敏で、男女を問わず、誰かと深い関係になることが苦手なタイプのよう。親友には「少し頭を冷やして考えたら?」と言われても、そこは面倒見の良いベアのこと。前の彼と恋に落ちたのは、彼19歳、彼女31歳の時で、以来7年間、学生だった彼をずっと支えて来た経験もあるし、「自分の力で彼を一人前にしたいと思ったの」だそうです。
 しかし、アパルトマンで過ごした日から、彼の様子はますますおかしくなりました。よく聞いてみると、どうも彼の話はつじつまが合わず、言うことが支離滅裂な時もあるとか。友達には「アパルトマンに誘ったのが早過ぎたのでは?」と言われるし、そのうち、青年がベアに付きまとうようになったため、見かねた仲間が「あきらめたら?」とか「もうやめとけ」と真剣に忠告。さすがにベアも決心がついて、彼に別れを宣言したそうです。
 バレンタインの出会いから、約一ヶ月。はかない恋の結末を迎えましたが、ベアは「今回はついてなかったけど、シネマは出会いの宝庫よ」とさして懲りてはいないようでした。
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by cheznono | 2008-03-19 01:56 | 不思議の国フランス

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 シネマで見かけた青年から、早速「愛しています」のメールを貰ったベアは、さすがに戸惑いました。そりゃあ見知らぬ女性から置手紙を貰った青年は、悪い気はしなかったでしょうし、調子の良いフランス人のことですから、「僕に関心を持ってくれたなんて、そんなあなたが大好きですよ」くらいのことは言いかねませんが、「愛してる」はやっぱり特別な表現で、顔も知らない相手へ使うのはちょっと行き過ぎ。
 とはいえ、バレンタインの夜に出会ったことは何かの縁で、相手もそれを感じたに違いないのでしょう。ベアと青年は何度か携帯メールをやり取りした後、いよいよレストランで初デートすることになりました。
 さて、待ち合せに現れた彼は31歳。職業は技術系で、主にPCで仕事をする毎日だとか。ベアより7歳下だから、年下好みの彼女にはぴったりです。ただ、初メールに「愛しています」と書いて来た割に、その勢いは微塵もなく、ちょっと神経質そうで、落ち着きがありません。
 ベアが青年と打ち解けようとしても、初対面の女性を前にして緊張しているせいか、彼は次々に煙草を吸うばかりで、今ひとつ会話がはずみませんでした。
 一般に10代のうちに社交的なスキルを身につける若者が多いフランスでは、目の前に異性がいたら、自分についての情報公開をしたり、相手を褒めたり、くどいたりと、とりあえず関心を惹こうと努力をする筈ですから、この青年は結構珍しいタイプかも?
 「好青年なんだけど、何だかつかみどころがなくて、、」
そんな初デートの報告を聞いたベラの親友、
「じゃあ、今度のホームパーティに連れてらっしゃいよ。初対面で一対一のデートで緊張していた彼も、みんなに混じってわいわいやれば地を出せるし、打ち解けるでしょ。そうすれば、どういう人かがわかってくるわよ」と提案。
よって、2回目のデートは友達主催のホームパーティに決まり、ベアは彼を誘って友人宅に出向きました。
 やがて、楽しいパーティは無事に終了。しかし、やっぱり皆んなの印象も同じで、「うーむ、どうもつかみどころがない青年だね。もうちょっと様子を見たら?」という感想が多かったそうです。
 シャイな彼もいずれ心を開くに違いないわ。青年に惹かれていたベアは、既に二人の仲を深めて行く決心をしていました。 つづく
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by cheznono | 2008-03-07 22:58 | 不思議の国フランス

バレンタインの出会い

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 「ラスト、コーション」をバレンタインデイのデートで観に行かれた方も多かったのではないでしょうか?2月14日は、フランスでは年に一度、一番バラの花が売れる日で、この時期にフランスにいる時はお花屋さんの前を通るのが楽しみです。
 さて、もう時効になったと思うので、あるバレンタインデイから始まったフランス流恋の話をしてみましょう。知的でとても感じの良い30代後半の女性ベア(仮名)の体験した出会いは、カップルで賑わう映画館の中でした。当時彼女は、同棲していた一回り年下の恋人と別れた後で、寂しさを乗り越えるため、積極的に外出していました。
 バレンタインの夜を一人で過ごしたくなかったベアが親しい男友達と一緒にシネマに行くと、後ろの席に素敵な青年が一人で座っているのに気づいたそうです。
「見て見て、後ろの彼、バレンタインに一人で映画を観に来てるなんて、独身かしら?」ベアは隣の友達に囁きました。
「そうだね、でもああいうタイプは女性に興味があるとは限らないよ。」そうその夜、彼女をエスコートしていた男性はホモセクシャルで、たまたま彼もパートナーがいない時期でした。
「ちょっとスカートの裾を上げてみて。」と男友達に耳打ちされたベア。
「えっ、なんで?」
「スカートを上げてさ、見えた君の脚に、ヤツが反応したら女性に興味がある証拠だから」
なるほどと彼女は素直にスカートの裾を膝上までたくし上げて、二人で後ろをチラッとみると、くだんの青年の視線は彼女の脚に注がれていたそうです。
「おっ、君の脚を意識しているから、彼はホモセクシャルじゃないね」男友達はちょっぴり残念そうでしたが、映画が終わると、二人はその青年をつけてみることにしたのです。
 夜の街中を青年をつけて行くと、彼は古いアパルトマンに入って行きました。一般にフランスのアパルトマンは、入り口のドアの脇に並ぶブザーに各住人の名前が貼ってあり、ブザーを押して住人と話さないと建物のドアが開かないオートロック式が多いのですが、たまたま青年のアパルトマンはドアが開いていて、中に入った彼が自分の郵便箱を確かめるのが見えたから、ラッキーでした。
  「君ついてるよ、彼の郵便箱に名前が一人分しか書かれてない」フランスは同棲カップルが多く、誰かと二人で住んでいれば、たいてい郵便箱の名前は連名ですから、この様子では青年が一人暮らしの可能性は高いでしょう。
 これはチャンスとばかり、彼女は映画館で見かけて気になったことと自分の携帯の番号を書いたメモを青年の郵便箱に入れて、ようやく帰宅したのでした。
 そして翌日、何気に職場で携帯をチェックしたベアに早速、昨晩の青年からメールが届いていたそうです。それもいきなり《愛しています》と。早くも大恋愛の始まりの予感、、かも?つづく
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by cheznono | 2008-03-01 02:07 | 不思議の国フランス