カテゴリ:不思議の国フランス( 92 )

美食の街リヨン

b0041912_1675259.jpg 旧市街全体が世界遺産に指定されているリヨンは、二つの大きな川がもたらした豊かな土壌と、イタリアのトリノやアルプスに近い地の利もあって、良質の食材に恵まれたため、古くから美食の街として知られています。
 パリに次ぐフランス第2の都市の座をマルセイユと争うリヨンは、ハイテク産業などのビジネスが盛んな新市街と、ルネッサンス商人の家並みが残る旧市街とが川でくっきりと別れていて、古代ローマ人が街を築いたというフルヴィエールの丘にフニクラで上ると、その様子が一目瞭然で見渡せます。
 街中には名の知れたシェフのお店もあり、郊外にはポール・ボキューズのホテル・レストランやシャトーを利用した辻料理学園のフランス校もあるため、料理やパティシエの修行にリヨンを訪れる人は後を絶ちません。
確かにレストラン街はいつも活気に満ちていて、星付きレストランでもパリの半額近くで楽しめるし、マルシェでは新鮮な食材が手ごろな値段で豊富に手に入ります。リヨン料理として全国的に有名なのは、クネル(魚のすり身をクリームなどで固めた、ソフトなかまぼこみたいなもの)やトリップ(牛や豚の内臓の煮込み)。クネルは南仏のスーパーのお惣菜売り場でも手に入り、家庭ではグラタンに入れたり、クリーム煮にしたりと重宝するみたいです。
 こうした地元の料理は、シックなレストランよりもブションと呼ばれるビストロで味わう方が楽しいかも知れません。ブションはたいてい、肝っ玉マダム(たまに肝っ玉ムッシュウ)が腕をふるう食堂風の庶民的な店で、リヨンならではのもの。量もたっぷり山のように運ばれて来るし、お値段も手ごろだから、評判の良いブションは遅くまで地元の人で賑わっています。
 では、果たしてリヨンは本当においしい街でしょうか?実はリヨン料理は、バターやクリームがふんだんに使われるため胃に重いのです。いかにもフランス料理らしく口当たりは良いけれど、リヨンの料理は重いとフランス人が口を揃えて言うほどだから、まして、和食大好きの私には全部平らげるのがしんどい。しかも、極力香辛料を使わないため、食べている間に少し飽きて来たりします。こういうこってりした料理を食べ続ければ、メタボリック症候群が増えるのもせん無いことでしょう。そのせいか、リヨンでも最近はアジア系の料理が好評で、中華や日本食に関心が高まっているようでした。 
 写真は16~17世紀の塔を使った人気のホテル・レストラン:ラ・トゥール・ローズ。お食事の予算は35ユーロ位から。数時間のお料理レッスンやテーマを設けたソワレもよく企画されています。 
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by cheznono | 2007-09-04 17:26 | 不思議の国フランス

高騰するホテル代

b0041912_1315688.jpg 久しぶりにパリに寄ろうと思って、10月に泊まる宿を探し始めましたが、おととしよりぐっと値上がっていてがっくり。ただでさえ、ユーロが不当に高いのにダブルパンチです。しかも、この秋はラグビーのW杯がフランスで開催されるため、特に週末は予約がいっぱいで、安い部屋を確保するのが難しくなっていますね。
 この夏のフランスはコート・ダジュールを除いて気温が低く、パリも雨模様が続いたらしいのに、全体に観光客は増え、日本人旅行者も去年より3%増加で、フランス観光局は喜んでいます。でも、2006度秋冬期のフランスのホテル代は、前年より27%上昇。この傾向は2007度も続いていて、更に値上がっているとか。それでも、フランスのホテル代の平均119ユーロ(約19000円)はEU加盟国の平均ホテル代よりまだわずかに安めです。 
 フランスの大都市の中で、最もホテル代が上ったのが、美食の町と云われるリヨン。昨年一年間でなんと38%も急上昇しています。次にバラ色の町トゥル-ズが22%、マルセイユが20%上昇。とはいえ、やっぱり一番ホテル代が高いのはパリで、次がカンヌ、3位がニースで、穴場はボルドーでした。ボルドー泊だとパリの平均ホテル代の半分以下で済むそうですが、ここの旧市街も今年世界遺産に指定されたから、今後は値上がりが避けられないでしょう。
 だから、ツアーの方がなんてたって割安という声が聞こえそうですが、それでも、丁寧に探せばパリで1泊50ユーロ余り、ニースなら駅近くで30ユーロ、中心地で45ユーロから見つかります。もっとも、私がヴェニスで最後に一泊した駅前のホテルは、ロマンティックな素敵な部屋でしたが、カーニバルの直後で59ユーロ、でもシーズン中は同じ部屋が280ユーロになるというから、びっくりでした。ニースもシーズンオフなら、値段交渉の余地がかなりあるので、試してみてください。
 写真は、世界遺産に登録されているリヨン旧市街。
フランスのリーズナブルな家具付き短期滞在用アパルトマンを探すなら、http://www.homelidays.com/
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by cheznono | 2007-08-29 13:51 | 不思議の国フランス

スリ天国

b0041912_0412214.jpg フランスは今週末から公式に夏のヴァカンスに入るため、恒例のコートダジュール方面へ車の大移動が始まるでしょう。春の復活祭から旅行客が増えてざわつくニースですが、特にこれからはレストランもホテルも稼ぎ時。浜辺や町の中心地はフランス語より英語やイタリア語の方が耳につくくらい、観光客があふれる季節の幕開けです。
 同時に、旅行者を狙うプロやアマも集まって来るから、夏に南仏旅行を計画されている方は用心してください。ヴァカンス・シーズンのコートダジュールは、海風と強い日差しの開放的な空気の中でナンパはし放題、スリも売春も盛んになります。警察の取り締まり強化とは言われても、被害が減る程の効果は出ていないようです。
 全国的なお祭りである夏至の日の音楽祭:フェト・ド・ラ・ミュジークを初め、夏の南仏は屋外でのイベントが多く、その度に会場になった地域はスリ天国と化します。犯人は一匹狼のスリはもちろん、10代の少年少女がいたずら半分(でも腕はプロ級)にバッグを狙ったり、東欧辺りから集団で送り込まれたスリ・グループだったりとさまざま。
 パリではメトロの中が危ないように、ニースもバスの中でよくバッグを開けられます。そして、特に狙われるのが、国鉄のニース駅付近から、マセナ広場に向かう目抜き通りのようです。
 去年の夏、友人が泊まっていた「地球の歩き方」にも紹介されているホテルに寄った時にオーナーから聞いた話によると、日本人の女性客が駅からホテルまで歩いて来たところ、チェックインの際に財布もパスポートも無くなっていることに気がつき、パニックになったとか。オーナーが日本に電話をして、ホテル代は日本にいる女性客のお母さんのクレジットカード番号で決済し、当面のお金を貸してあげたので、女性は何とかその場を凌いだそうです。駅からホテルまで、徒歩10分間の出来事でした。
 さて、いつも背中に小型デイパックを背負っている私も、バスの中や繁華街でしょっちゅう背中のバッグを大きく開けられます。これはニースに限らず、パリ、リヨン、アビニョン辺りでは本当に笑ってしまうくらいバッグのファスナーが開いてるのですが、貴重品は入れてないし、入ってたにしてもバッグの底に沈んでいるため、幸い中身が無くなったことは一度もありません。私のデイパックのふたは自分でも結構開けにくいのに、全くよくやってくれるよと思います。でも、めったに気がつかないほど開け方がうまいから、知らずにバッグのふたを大きく開けたまま人ごみを歩いていることもしばしば。なんて恥ずかしい。
 その点、東京は繁華街でも満員電車の中でも、背中のバッグのファスナーが開けられたことは皆無だから、安心してお財布を入れて歩けますね。いつまでもこういう状態が続いてくれることを祈るばかりです。
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by cheznono | 2007-06-29 02:04 | 不思議の国フランス

葬式泥棒

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 「こわれゆく世界の中で」の原題は《不法侵入》で、ロンドンの建築事務所へ繰り返し泥棒が入る事件が軸となっている作品でしたが、コートダジュールも泥棒や空き巣の被害が絶えません。観光客やお金持ちの退職者が多く、かつイタリア国境と接しているから、よそから泥棒集団が入り込み易いためでしょう。
 まず、不審者対策としてアパルトマンの出入り口は100年前の建物でもオートロック式。オフィスやお金持ちはセコムのようなセキュリティサービスと契約し、一戸建てや商店はお弁当箱のような警報機をつけ、庭があれば猛犬を飼って、不法侵入の泥棒を防ごうと努力しています。
 とはいえ、オートロック式は日本と同様、センサーつきの鍵を持つ住人の後に続いて、配達の人や作業服の見知らぬ人がにこやかにひょいっと入って来るのはしょっちゅうだし、警報機が突然ウーウー鳴り出して止まらなくなっても、隣人や道行く人は知らん顔。ニースのような都会だと、気づいた誰かが警察に通報してくれるなんてことは殆どないため、警報機はただ無意味に鳴り続けるだけ、ということもしばしばです。泥棒対策まで非効率だから、フランスの犯罪率は高いままなのでしょうか。
 一戸建ての場合、夜遅くまで外出する時には部屋のランプを一箇所つけ、TVかラジオをつけっぱなしで出かけたりする家庭も多いようです。留守だとわからないようにするのは一番手っ取り早い方法の一つですが、ヴァカンス旅行の時はそうも行きませんね。
 知り合いのマダムは、30代の娘さんをニース‐カンヌ間の自動車事故で亡くし、悲嘆に暮れてお葬式から帰って来ると、アパルトマンはしっちゃかめっちゃかで宝石類が全部消えていたそうです。プロの空き巣は、地元紙ニース・マタンに載る市民の訃報欄をチェックし、葬儀の日取りや時刻を確認して、その留守宅を狙うのが常套手段になっているのだとか。お葬式の際は、一家をあげて留守になるし、たいていは肉親を失った悲しみで泥棒の被害へのショックや怒りが普段より薄いから、だと言われています。人の弱みに付け込む葬式犯罪が横行する社会なんて、と暗澹たる思いがしましたが、悲しいかな、先進国はいずこも似たり寄ったりなのかも知れません。
警視庁の事件犯罪発生マップ:東京都の地域別に空き巣などの発生度がわかります。
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp
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by cheznono | 2007-05-26 23:12 | 不思議の国フランス

爪を研ぐ大統領候補

b0041912_04396.jpg ここ数年、フランスで空港や列車内での外国人の入国チェックがうるさくなったり、道路上での職務質問が増えたのはニコラ・サルコジのせいと言われています。内務大臣時代、フランス一のトップ警官と呼ばれたサルコが、何かにつけ移民取締りに活を入れた結果、警察が「我々はちゃんと仕事をしています!」と国民とサルコにアピールするため、移民や外国人チェックが厳しくなったのだとか。
 自身もハンガリー移民2世のサルコですが、農民活動家ジョゼ・ボベに「サルコはルペンの私生児だよ」と批判されたほど、フランスの治安を乱しているのは移民たちという視点では極右のルペンと共通しています。「小児愛者は生まれたときから小児愛嗜好を持って誕生する」などと遺伝子学者が真っ青になるような暴言も目立つし、マスコミ操作もしばしば噂される策士で野心満々のサルコですが、女性議員を殴ったり、サッカーのフランス代表チームに対して「選手は移民ばかりで、フランス代表とは言えない」なんて豪語するルペンに比べれば、まともな指導者と言えるのかも知れません。
 ちなみにルペンはイギリス軍からフランスを救ったジャンヌ・ダルクを党のシンボルに掲げ、前回の大統領選では《移民を制限している良い例》として、「日本を見習え」と言ってました。一方、サルコは移民全否定ではなくて、「今後はフランスがほしい移民だけ選んで滞在させたい。」と提案。つまり、研究者が足りなくなれば研究職の移民を、医者が足りなくなれば医療関係者を受け入れる、と主張して、有益な移民は歓迎するけれど、一般の移民は遠慮してもらいたいという意図が見えます。
 フランスには政情不安などの理由で避難民として逃げ込んで来た外国人や何年も滞在している留学生も多くて、今までは比較的楽に滞在許可証を更新し、国からの補助も受けられたけれど、排他的な大統領が当選すれば、この先も問題なくフランスに滞在できるかどうかを心配する人は少なくありません。
 でも、「じゃあなぜフランスには移民が多いわけ?自分達のして来たことや歴史は忘れてしまったの?」と私達も耳が痛くなるような声が聞こえます。自らの植民地政策のつけと、安い労働力を求めた結果、次々と流入した移民たちですから、まるで抵抗勢力のように扱うのはおかしいのですが、マスコミも当選後に仕事がやり難くなるのが目に見えているため、有力候補者への批判はとても弱腰です。
 アメリカ嫌いのド・ゴール派であるシラク大統領やヴィルパン首相とは違って、サルコはがぜん米国寄り。サルコが当選したら、中国とアメリカ重視の経済政策が取られるのは必須でしょう。うなぎ登りのユーロがこのまま上がり続けたら、どうしよう?と私はハラハラしながら6日の決戦を待っている所です。 
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by cheznono | 2007-05-04 01:11 | 不思議の国フランス

いよいよ仏大統領選

b0041912_1301526.jpg 今日はついにフランス大統領選挙の当日。投票会場になっている近所の学校前には朝から車が連なって、一時的な渋滞を引き起こしていました。実際に5年前の大統領選に比べて、遥かに投票率が上がっているから、みんなの選挙への関心の高さがうかがわれますね。今夜の結果が楽しみです。
 主な候補は現政権で保守のニコラ・サルコジと社会党の美人候補セゴレーン・ロワイヤル、中道派のフランソワ・バイロー、そして極右で過激なジャンー‐マリ‐・ルペン。サルコとマダム・ロワイヤルの一騎打ちかと見えた選挙戦も、予想アンケートの度に数字は上がり下がりしたし、ぎりぎりまで誰に投票するか決めかねている人が今までになく多かったため、結果が読みにくい選挙となっています。
 ニースを初めコートダジュールは、非常に右寄りの地域なため、サルコやルペンが来るたびに、街には警察官があふれ、歓迎の市民が押しかけるという図式が繰り返されていました。サルコもルペンも移民大嫌いの右派。もし下馬評どおりサルコが大統領に当選したら、国外追放になるかも?と心配する外国人も少なくありません。
 投票は今夜8時に終了し、80%以上のフランス人が8時以降テレビの前に張り付いて、開票結果を見守ると言われています。既に投票率が83%を超えているから、視聴率はめちゃ高いでしょうね。
 パリでは今夜8時以降に寿司の注文が激増する予想なのだとか。寿司をつまみながら選挙結果を見守るなんて、パリジャンも変わったものです。今頃、お寿司屋さんはてんてこ舞いでしょう。ニースではさしづめピザやさんが気合を入れて、ピザを焼きまくっているに違いありません。私も今朝のマルシェで買い込んだ野菜を煮込みながら、開票速報を追うつもりです。
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by cheznono | 2007-04-23 02:38 | 不思議の国フランス

フランスで人気の職業

b0041912_22504826.jpg 天井から水が漏り出して1週間、家主は配管工を呼んで上階のバスルームを点検してもらうよう依頼しました。珍しくほぼ約束の時間にやって来たムッシュウは、きちんとした格好で脇にファイルケースを抱え、職人さん風ではなかったけれど、「配管が老朽化していますね、とりあえず水を止めましたからもう漏らないでしょう。」と言って帰って行きました。先日越していった未払い家族が、風呂場の壁からシャワー器を引き抜こうと試みた向きもあるため、完全に修理するにはまた出直しになるようです。
 しかし、配管工が帰った夜から私のアパルトマンの水漏れは、ポツポツからポチャッポチャになり、天井の照明の周りにも水が回っているので気が気ではないのですが、今週中にまた来る筈だった配管工は戻って来ません。家主は、「ポーランド人の配管工や電気やにはもううんざりだ!」とうめいています。
 ニース港近くに住むイギリス人の友達も、配管に問題が起きてアパルトマンに暖房が入らなくなった時、顔見知りの配管工に来てくれるようランデブーを取って、約束の朝9時に待っていましたが、一日中待っても配管工は来ませんでした。あきれた彼女はすぐに別の配管工を見つけて、また朝の9時に来て貰うよう約束しましたが、当日やっぱりいくら待っても配管工はやって来ません。頭に来た彼女は、町に出て3人目の配管工を見つけ、翌朝見に来て貰うよう頼んだ所、3度目の正直で今度はちゃんと9時にやって来て、暖房の配管を直してくれたそうです。
 全くいい加減な国だと思った友人が、この話をロンドンの仲間達にこぼしたら、ロンドンでも同じ状況で、来てくれる約束をした配管工のすっぽかしは日常茶飯事とか。イギリスもフランスも100年以上経つ古いアパルトマンが多いため、水周りの問題は頻繁に発生しますから、配管の仕事は引っ張りだこ。恒常的に売り手市場のため、配管工の家族は大きな家で贅沢に暮らしている場合が珍しくないみたいです。
  失業率の高いフランスでは、ポーランドやハンガリーなど東欧諸国がEUに参加する際、配管工や左官などの職業が東欧からの安い労働者に奪われる!と抗議の声が高かったのに、実際には今一番不足している職業のトップが大工、左官、電気や、配管工などの現業です。問題は、東欧からの労働者がしばしば大して知識がないのに仕事があると出向いてはテキトーな配管工事を施したり、腕がないのに大工として働いてしまうことでしょう。
 古くからの建物を大切にするヨーロッパでは、常に家の老朽化に悩まされるわけで、こうした職人さんたちは不可欠な存在です。6年も7年も大学に通って学位や資格を取っても尚、就職が厳しい現状に対して、手に職をつけることの強みを目の当たりにするわと、文系の博士号を取ったばかりの友達はため息をついていました。
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by cheznono | 2007-04-01 00:14 | 不思議の国フランス

フランスの家賃滞納

b0041912_141669.jpg 日曜から夏時間となったため、陽がだいぶ長くなりました。先日、アパルトマンの天井の一部が突然落ちて、床に漆喰が散乱。びっくりして天井を見上げたら、ポカって空いた穴からポツって冷たい水が落ちてきます。幸い普段利用しない部屋の隅のため、生活には支障ありませんが、上からの漏水となると建物が傷むのは時間の問題です。すぐに家主に報告すると、案の定、落下した天井部分の真上は上の住人のバスルームとのこと。その上の住人家族が引っ越したとたんに起こった天井落下と水漏れは何か関連があるのかも知れません。
 中年のカップルと息子と小さい孫という4人家族の上の住人は、去年の夏以来8ヶ月余り、家賃を滞納していて、いくら頼んでも家賃を入れませんでした。堪忍袋の切れた家主は告訴に踏み切り、[未払い住人は未払い分の半分を支払い3月中旬までに出てゆくこと]という司法判断が下ったため、彼らは2週間以上大きな音を立てて引越しの準備をした挙句にようやく近所に越して行ったのですが、ここに到るまで家主にとっては結構苦い道のりだったようです。
 パリはもちろんのことニースでも住居を借りたい人に対して賃貸物件が足りないフランス。でもいったん賃貸契約を交わすと、借家人は法律によってかなり厚く守られることになります。家主は賃貸人が半年間以上家賃を滞納しないと追い出せないし、冬はどういう理由であっても借家人を住居から追い出してはいけないという規則もあります。その上で家主が裁判に訴え、未払い人に出て行くよう審判が下っても、なお居座る人も多く、数ヵ月後に警察によって無理やり追い出された賃貸人が去年だけで10万人。それだけ未払い問題の多い賃貸契約なのに、日本と違って不動産業者を通さず、個人同士で賃貸契約を交わす家主が多いのも不思議です。個人で貸している物件の多くは古い家やアパルトマンのため、老朽化の早い水周りの問題や電気関係の故障など頻繁に起きる修理関係でも、問題が起きる度に家主自身が出向いてなるべく自力で直そうとするのも日本とはちょっと違う光景ですね。
 さて、上の住人は8ヶ月間未払いだっただけでなく、家主へいろいろと嫌がらせを試みました。自分たちも利用する門の脇のインターフォンを箱ごと引き抜いて不通にしてしまったり、住居の脇の壁に大きないたずら書きをスペルが間違っているのにもかかわらずスプレイで吹き付けたり、人気のない空き部屋の明かりを夜中につけっぱなしにしたり、と大人気ない行為を重ねた上に住居引渡しの審判が下ったため、今回の水漏れもどうも彼らが引越し前にバスルームのシャワー器を壁から引き抜こうとした報復行為によって始まったと見られています。
 家主にとっては自分の住居内に何ヶ月も未払いの家族が生活し、すれ違ってもボンジュールも言わない状況にはとてもストレスがたまったらしく、水漏れという置き土産が起こっても、引っ越してくれて助かったとほっとしてました。未納のままの引越しだったのに、受け渡しの日に敷金(2か月分)を返してって言われたとか。「そりゃあ、未払い分を払ってくれれば敷金はお返ししますよ」と答えたら、さすがに黙ったそうですが、やっぱり最後までたくましい借家人だったみたいです。   
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by cheznono | 2007-03-27 02:06 | 不思議の国フランス

息子にヌードを、の母心

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 ヘンダーソン夫人の贈り物は、第二次大戦に出征して行く若者たちへヌード・レビューを見せてあげようというものでしたが、そうした母心も巷に裸が氾濫している現代ではどう変化してるでしょう?フランスはTVのCMはもちろん、街中の大パネルのあちこちにヌードが使われています。若い女性の裸の上半身、青年の引き締まった身体、カップルのヌードなど。なぜこの商品やテーマにヌードが必要なのか、よくわからないものも多いけど、共通するのは写真のモデルは若者で、スリムで美しいスタイルの持ち主であるということ。
 かつて、南仏のアリアンス・フランセーズで週2回出席していた時事会話のクラスの教師は、40代後半くらいのきれいでシャープな、感じの良いマダムで、なかなか人気のある先生でした。その先生にはローティーンの男の子が二人いたのですが、息子たちが時々ヌード写真雑誌を見てたりすると、必ず取り上げてると言うのです。へえ、フランス人でも子供が女性のヌード写真を楽しんだりするのは教育上よくないと思うのかしら?第一これだけ氾濫してたら、隠しようがないだろうにと不思議に思ったら、その理由がふるってました。「だって、女性の身体って現実にはあんなろくに食べてるかどうかもわからないモデルさんのように完璧なわけないじゃない?だから、息子たちが女性の裸を妙に理想化したらまずいと思って。」なるほど、それは一理あるかも。
 で、彼女が講じているヌード対策は、「だから、私のお風呂上りの裸を息子たちに見せてるのよ。」えっ、なんで?!「これが本物の女の身体だって。雑誌のモデルのような人工的なヌードじゃなくて、本当の肉体はでこぼこしてたり、お腹が出てたり胸がたれてたりするわけじゃない。」はあ、そういう母心もあるのねとびっくりしている生徒たちに、「TVや写真のヌードで息子たちが女性の身体に対して幻想を持ってもらいたくないのよ。母親の私の裸をいつも見ていれば、実際に彼女ができた時もヌード雑誌と違うなって慌てないと思うし。」そういう先生は生き生きとしたスリムな女性でしたから、果たしてこれが現実よ、というくらい若いモデルとのギャップがあったかどうかわかりませんが、こういう発想ってやっぱりフランス的ですよね、きっと。と思い、日本から来た子供のいる女性に聞いてみたところ、「うーん、うちは娘だから自分の裸も平気で見せてるけど、これが息子だったらそうはいかないよね。何だかびっくり。」と言ってました。
 その話を聞いた後しばらくは、先生が真面目は社会問題を解説してくれている最中でも、このマダムがシャワーの後、中学生の息子たちの前を真っ裸でウロウロしてるいる姿をふっと想像しちゃうことがあって、ちょっと困ったものでした。とはいえ、フランスに慣れてみれば、幾つになろうと誰がいようと家の中をすっぽんぽんで動き回るマダムたちの多いことにも驚かなくなったので、今から思えばあの先生もごく一般的に自然体で子育てしてただけだったのかも知れません。
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by cheznono | 2007-01-19 00:25 | 不思議の国フランス

カンヌ行きバスの顛末

b0041912_23104385.jpg そろそろ年賀状の準備をと春以来全く触っていなかったPCに電源を入れたら、画面は真っ黒のまま、うんともすんとも言わないので青くなり、買った某量販店に持ち込みました。なんてたってそのPCは丸2年使用した後、起動がおかしくなったため、春先にハードディスクを取り替えてもらったばかりなんです。既に年末の今、修理した「ばかり」ではないだろうと量販店の担当者には変な顔をされたけど、春先に新品同様になって戻って来た(と信じていた)時から、起動させてみたのは数回だけ。渡仏前だったので、修理に出したPCを抱えて滞在に入るのは不安だったこともあって、泣く泣く新品を買って持って行き、以来ずっと新PCを使っていました。よって、夏にフランスから戻った後も修理済みのPCはお蔵入り状態だったのです。
 今週立ち上げてみたのはかれこれ8ヶ月ぶりだったとはいえ、全く起動しなくなっていたのでもうがっかり。今度こそ根本的に直してよね、という気持ちで量販店の修理カウンターに行ったら、隣にDVDプレイヤーを持ち込んだマダムが、「買って1年未満なのに全く映らなくなっちゃったのよ。この店で買った品物はなぜか全部すぐに壊れたわ。ドライヤーもスーツケースも、このプレイヤーも。」とこぼしていたので、思わず耳をそばだててしまいました。フランスでももちろん技術力のジャポンはお墨付き、私も自分の持っている電化製品を褒められると、「日本製だから(当然よ)。」なーんて、自分で作った製品でもないのに誇りがましく感じていたのに、安全神話と同様に今や日本のテクノロジーは欧州並みのもろさに後退しつつあるのでしょうか?
 さて、前回のつづきです。降りたいのにどうしようもできない私を乗せたカンヌ行きバスは、プロムナード・ザングレの先で渋滞に引っかかり、のろのろ運転になりました。それでもドライバーは意地の悪い表情のまま、下車できずに困っている私など存在しないかのように無視しています。こうなったら、相手が根負けするまで粘るしかないと運転席の真後ろに立つ私はまたもや「降ろしてください!降ろして、家に帰らせて。夜のこんな時間にニースから出るわけにはいかないんです。」とオウムのように同じことを繰り返しました。
 こんな時フランス人だったら、くるっと振り返って満席の乗客に向かい、「ちょっと皆さん、聞いて下さい!この運転手さんはこんな時間に私をバスから降ろさずにカンヌに向かおうとしているんです。私はニースに住んでいるのに。」と叫んで、援護射撃を求めるだろうに、いくらなんでもそんな勇気はないしなあ、と途方に暮れた頃、赤信号で停車したバスの乗車用ドアが突然開いて、ドライバーがぶすっと「降りたいんなら、今降りな。」ってつぶやくではありませんか。ヤッタ!うるさくなってついに根負けしたんだわ、と転げるようにバスを降りた私、目の前の高々と揺れる椰子の木と車の列を見て、いったいここはどの辺だろうときょろきょろしながら、やっとこさで路上に降りた安堵感にひたったのでした。
 カンヌ行きのバスはニース市内で乗客を降ろせない規則だなんて言いながら、こんな所で客をほおり出せるんなら、さっさと降ろしてくれれば良いのに。そうぶつぶつ考えながら、反対車線のバス停を見つけ、ニース行きのバスを待って今来た道を戻り、その後さらに終バスに乗り換えて、なんとか帰宅したのでした。規則を振りかざした割りに赤信号で中央分離帯に降ろすなんて、とんでもないって周りの友人も怒ってくれましたが、元はといえば、市内に帰宅するのになぜカンヌ行きなんかに乗ったの?という疑問がみんなの目に見て取れます。普段はカンヌやマントン行きのバスでもニース市内で乗り降りしている乗客がいるから、市内で下車しても問題ないと思っていた私、この辺の「規則」については本当にあの時のドライバーの主張が正しかったのか、未だに定かではありません。
 観光シーズンのコート・ダジュールで、知らないで間違える旅行客はたくさんいるに違いないのに、明らかに外国人とわかる人間に「規則」を振りかざしてバスを走らせ続けたドライバーには今でも腹が立ちますが、押し寄せるヴァカンス客を尻目に黙々と勤務しなくてはいけない彼らが、うんざりしている気持ちも何となく想像できるような気もします。観光収入があるからこそ潤っているとはいえ、リゾート客なんていい気な奴らだという地元民の思いが、意地悪に繋がるのでしょう。うっぷん晴らしに使われた私はいい迷惑ですが、苦い勉強にもなった体験でした。
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by cheznono | 2006-12-22 00:39 | 不思議の国フランス